「大学全入時代の到来」が叫ばれてから久しいですが、今、大学選びは確実に変わってきています。その象徴ともいえる大学が「近畿大学」。関西はともかく、全国的にはあまり知られていなかったローカル大学であった近畿大学は、2014年に初の志願者数日本一を達成し、2015年、2016年と三連覇を成し遂げました。偏差値でいえば、東大や京大、慶応や早稲田といった名だたる難関校には及ばないものの、日本中の多くの受験生は「近大に夢を見た」のです。

大きな話題となった「近大マグロ」をはじめ、ユニークな取り組みと巧みな情報発信は受験生たちの心を鷲掴みにしました。これらの施策はすべて、近大の「建学の理念」に基づいています。近大の建学の理念――。それは「実学教育と人格の陶治」。そう、近大が志願者数日本一を達成した背景には「実学」があったのです。

一方、企業が求める人材の傾向も変化してきています。今では、たいていのことはインターネットで誰でも簡単に調べられるため、“豊富な知識量”よりも“適応力”や“課題解決力”などが重要視されるようになってきました。偏差値では計ることができない力を企業は求めているのです。“適応力”や“課題解決力”は、いわゆる「座学」では習得することが難しい力。そこで、多くの大学では、近大の建学の理念にもある「実学」に重きを置くようになりました。そんな中、「実学」の舞台として注目を集めているのが「産学連携イベント」です。

プロから直接指導を受けられる産学連携イベントは、学生たちの“適応力”や“課題解決力”といったスキルとモチベーションが飛躍的にアップする貴重な機会と考えられています。そのため、この産学連携イベントが大学選びの決め手につながることも少なくありません。

今回は、そんな産学連携イベントをいくつかご紹介します。

日本初の新学科が協賛。「光と音を楽しむ体験型音楽フェスティバル」

出典大阪芸術大学

2016年12月24日から2017年1月9日にかけて開催された「ミュージックフェスティバル チームラボ ジャングル」。このイベントは、ウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」が制作する「光と音を楽しむ体験型音楽フェスティバル」で、大阪芸術大学が協賛しました。大阪芸術大学の在学生およそ70名が演出サポートや運営スタッフとして参加。演出・照明・音響のアシスタント、出演者としてイベントを盛り上げました。

大阪芸術大学は、2017年4月に日本初となる「アートサイエンス学科」を新設。テクノロジーとアートの両輪で多彩な表現ができる人材を育成することを目指し、その姿勢を具現化する場所として「ミュージックフェスティバル チームラボ ジャングル」への協賛を決定したそうです。大阪芸術大学は、かねてより「実学」をモットーとしている大学。新たに開設される「アートサイエンス学科」でも、プロの世界に飛び込みプロと一緒に創る「実学」をベースに、21世紀の社会で活躍できる人材を輩出する意向が示されています。

なお、この「アートサイエンス学科」には、「ミュージックフェスティバル チームラボ ジャングル」を手がけた「チームラボ」の代表・猪子寿之さん(写真右)が客員教授として参加。

出典大阪芸術大学

猪子さんは「今後、学生たちとは、音楽・テクノロジー・アート・サイエンスの境界を取っ払って、大きな作品を一緒に創り上げていきたい。現場で体験する経験を通して、自身が描く表現をカタチにするための“学びのきっかけ”をつかんでほしい」と話しました。

売れるエンターテイメント性の高さを競う「ゲームキャンパスフェス」

2016年2月に最終審査会および表彰式が行われた「ゲームキャンパスフェス2015」。

「ゲームキャンパスフェス」は日本クリエイター育成協会による産学連携組織によって運営され、当協会のゲーム企業のサポートのもと専門学校の優秀な学生を発掘・育成する目的で開催されます。

出典 http://gcf.growing-creators.jp

参加する専門学校は、早稲田文理専門学校や九州大学大学院など、他数校。学生たちがゲームの企画から制作・販売までを体験し、「売れるエンターテイメント性の高さ」を競うコンテストです。

見事、大賞に輝いたのは、太田情報商科専門学校の「TAKT-RHYTHM‐タクティズム‐」。キーボードやコントローラーを使わない、フリーハンドで遊べる気持ち良さがアピールポイントでした。好きを仕事にするなら、市場に受け入れられるかどうかを無視することはできません。そういった視点でプロに審査してもらえるのは、学生たちにとって身のある学びとなったことでしょう。

地域の魅力をアピール。「FAMILY FESTIVAL~大学生が描く未来予想図~」

2016年12月にイオンモール長久手で開催された「FAMILY FESTIVAL~大学生が描く未来予想図~」。このイベントは、名古屋商科大学とイオンモール長久手との産学連携協定に基づき、「NUCBフロンティア力育成講座」の受講生が企画・運営した地域活性化イベントです。

当日のイベントでは、地域の行政や団体、個人などとも連携し、20年、30年後の地域発展の理想像を大学生の目線から、イオンモール長久手にご来店の皆さまに楽しみながら地域の魅力について触れて頂ける企画を運営しました。

出典 http://www.nucba.ac.jp

長久手を含む近隣地域の魅力を最大限にアピールするブースやステージを展開。当日は長久手市長も来場し、大変にぎわったそうです。

「地方創生」は、これからの日本において欠かせない重要なテーマ。地域が抱える課題に向き合うことは、そのまま日本の課題に向き合うことにもなりえます。そのアプローチを考え実践することで、学生たちはたくさんの気づきを得られたのではないでしょうか。

「実学重視」の流れは加速?既存の価値観にとらわれない大学選びを

このように、産学連携イベントには全国の大学・専門学校が力を注いでいます。また、第一線で活躍するビジネスパーソンを客員教授として招く学校も増えています。「実学重視」の流れは、今後ますます加速していきそうです。

大学時代は「人生のモラトリアム期間」と揶揄されることもありますが、その期間に何をし、どのようなことを学ぶのかが、その後の人生を左右します。「大学の名前で大手企業に就職できれば、定年まで安泰」。そのような時代は、もはや過ぎ去りました。これまでの大学の存在意義が失われつつある今、大学側は生き残りをかけて変貌しようとしています。そのひとつが「実学」へのシフトであり、その姿勢の一端が産学連携イベントに垣間見えることは間違いないでしょう。既存の価値観にとらわれない大学選びが、人生を切り拓くカギとなるかもしれません。

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