世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」が日本にやってきました。アメリカズカップがアジアで開催されるのは、今回が初めてのことです。日本セーリング連盟(JSAF)、福岡市、ソフトバンクグループが連携し、「第35回アメリカズカップ」の予選(ルイ・ヴィトン・アメリカズカップ・ワールドシリーズ)第9戦目として、11月19~20日に福岡市の地行浜沖で開催されました。

「第35回アメリカズカップ」では、ディフェンダー(前回チャンピオンチーム)の「オラクルチームUSA」への挑戦権をかけ、日本、イギリス、フランス、スウェーデン、ニュージーランドの5チームが、2年間にわたる予選を通じて戦いを繰り広げています(本戦は2017年6月17日からバミューダ諸島で開催)。

ちなみに、日本は「ソフトバンク・チームジャパン」として15年ぶりの参戦。これまで1992年、1995年、2000年大会に「ニッポンチャレンジ」として挑戦しましたが、いずれもセミファイナルで敗退しています。

そもそも「アメリカズカップ」とは?

「アメリカズカップ」という言葉は、もしかしたら日本では馴染みの薄いものかもしれません。しかし、このアメリカズカップ、実は近代オリンピックやサッカーのFIFAワールドカップと並ぶ「世界3⼤スポーツ競技」なのです。

その歴史は古く、近代オリンピックが始まる45年も前、1851年(嘉永4年)にイギリスのロンドンで開催された「第1回万国博覧会」の記念のヨットレースを発端としています。このとき、アメリカチームが優勝しトロフィーを持ち帰ったことから、そのトロフィーは「アメリカズカップ」と呼ばれるようになりました。

その後、1870年(明治3年)に開催された第1回大会がアメリカズカップの始まりとされ、優勝トロフィー「アメリカズカップ」は継続して使用されているスポーツトロフィーとして世界最古といわれています。

ヨットが飛ぶ?!まさに“洋上のF1”

アメリカズカップは、人工的な動力を使わず、帆(セイル)で風を受けて海上を滑走するセーリング競技です。「人工的な動力を使わない」といっても侮ることなかれ。最高速度は、時速約80キロメートルにも上ります。

そして、最大の見所が「フォイリング」。フォイリングとは、極限まで軽量化されたヨットが高速で海上を走る際、「ダガー」と呼ばれる水中翼により揚力を得て海面を飛ぶように進む現象のこと。大型の艇体が浮き上がり、そのまま帆走するシーンはまさに圧巻の一言です。目撃すれば“洋上のF1”との異名を取るのも納得できるはず。

また、最近ではクルー技術の向上により、フォイリングしたままヨットを自在に操作できるようになっているため、これまで以上にスリリングでダイナミックなレースが展開されています。

史上最強のチャンピオンの“女房役”に注目してみると……

ますます進化を遂げるアメリカズカップで、現在ディフェンダーの地位にいるのが「オラクルチームUSA」。2010年の第33回大会で15年ぶりにカップを奪還し、2013年の第34回大会では奇跡の8連勝で防衛に成功しました。先端技術を投入した超高速ヨットを駆使し「史上最強」と評する声が多くあります。

そんなオラクルチームUSAを、ある日本企業が陰で支えているのをご存知でしょうか?

アメリカズカップに参加するヨットは「チェイスボート」とともにレースに挑みます。チェイスボートは、風力以外に動力を持たないヨットをレース海面まで曳航したり、風向や風速といった気象情報やヨットの状況などを瞬時に解析してクルーに提供したりする、いわば“女房役”。なお、アメリカズカップの醍醐味であるフォイリングは、チェイスボートから提供される解析情報が欠かせないとか。

この“女房役”であるチェイスボートのエンジンを手がけているのが、我が国・日本の企業「ヤンマー」なのです。オラクルチームUSAが全幅の信頼を寄せるチェイスボートの名は「YANMAR1」。ディーゼル・テクノロジーを動力とし、一気に加速できるのが強みです。

今回、このYANMAR1に試乗させてもらうことができました。

出典筆者撮影

これがYANMAR1の原動力であるディーゼルエンジン。

出典筆者撮影

エンジンが2基あることで(2基がけ)で異次元のハイスピードを安定的に実現しています。

運転席はこんな感じ。

出典筆者撮影

技術の進歩がめまぐるしい今、“テクノロジーの勝負”ともいわれるアメリカズカップにふさわしい、洗練されたデザインがクールです。ここで気象情報やヨットの状況などを収集・分析しています。

試乗会では、オラクルチームUSAで活躍する本物のレーサーが運転してくれました(なんて贅沢)。それでは、いざ、出航です。

出典筆者撮影

出航後、YANMAR1は約20ノット(およそ時速37キロメートル)で走行。間近で見ることができたレース艇は迫力がありました。

出典筆者撮影

以前、この巨大なレース艇(全長約22メートル、重さ約6トン)が転覆した際、通常なら2~3艇の力が必要なところ、YANMAR1はたった1艇でレース艇を立て直したそうです。

このようなエピソードを聞かせてもらいながら“航海”を楽しんでいると、ドライバーから「速度を上げるよ」といったサインが。「実際のレースの速度を体感してほしい」とのことでYANMAR1は急加速!モニターが示す数値は、すぐさま45ノット(およそ時速83キロメートル)を超えました。

出典筆者撮影

波や向かい風をもろともせず、しぶきを上げながら爆走するYANMAR1。凄まじい体感速度と風圧に、絶叫マシンが苦手な筆者は座席の手すりを思いっきり握っていました(笑)

ただ、荒れた海を40ノット以上も出して走行しているのにもかかわらず、とても静かで、揺れや衝撃は少なかったです。スムーズな爆発的加速力に驚きました。

「YANMAR1が伴走してくれることで、我々はレースに集中できる」

出典ヤンマー

オラクルチームUSAのスキッパー(船長)で、アメリカズカップ最年少優勝記録保持者のJ・スピットヒルさんも、YANMAR1を高く評価しています。

「チェイスボートが果たす役割はとても大きい。レース艇に遅れを取らない40ノット以上のスピードで走行しながらデータの収集・分析することが求められるため、ハイクオリティのボートでなければ不可能。加えて、チェイスボートには転覆やクラッシュ、クルーの落水の際、救助活動を実施してもらわなければならない。1分1秒を争い、クルーの命に関わる場面なので、やはりスピードと加速力は不可欠だ。YANMAR1が伴走してくれることで、我々はレースに集中できる。YANMAR1のおかげで、我々は必ず優勝できると確信している」

YANMAR1は、過酷な条件下でも確実な役割を果たしてくれるパワー・信頼性 耐久性に優れているとコメントしました。

オラクルチームUSAは栄冠を掴むことができるのか

今回の福岡大会では、イギリスのランドローバーBARが優勝。チームオラクルUSAは3位、ソフトバンク・チームジャパンは5位に終わりました。これで予選シリーズ1位の座にはランドローバーBARが就きましたが、さらに複数のステージを経てチームオラクルUSAへの挑戦艇が決定します。

さて、日本の高い技術力を象徴するYANMAR1が伴走するオラクルチームUSAは、2017年6月、またしても栄冠を掴むことができるのでしょうか。

福岡での開催を機に、ぜひ“洋上のF1”アメリカズカップを観戦してみてください。

この記事を書いたユーザー

marlgoro このユーザーの他の記事を見る

公式プラチナライター。ライター歴、約10年。現在、関西を拠点に活動中。大のテレビっ子です。たまに、ちゃんと取材した記事も寄稿しています。

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス