2016年9月8日、ソニー <6758> が金メッキを施した「黄金のウォークマン」NW-WM1Zを発表しました。発売は10月29日で、実売価格はなんと約30万円と超高額です。果たして、ハイエンドな超高級ウォークマンは売れるでしょうか? そもそも、ソニーはどこへ向かっているのでしょうか?

30万円のウォークマンはハイレゾ対応

「黄金のウォークマン」は「ハイレゾ」対応です。ハイレゾとは「ハイレゾリューション(高解像度)」の略。容量に制限のあるCDに音源を収録するには、音源の情報量を抑える必要があります。

対して、ハイレゾ音源の情報量はCDの約6.5倍。CDでは入りきらない膨大な音情報をたくさん持っているため、音の太さ、繊細さ、奥行き、圧力、表現力が段違いなのです。原音に近い音質であり、アーティストの息づかいやライブの空気感など、CDでは聴こえなかったディテールやニュアンスを感じ取ることもできます。

当然、ハイレゾ音源を聞くための機器も高額にならざるを得ないのですが、原音や臨場感にこだわるオーディオマニアからは熱い視線を送られています。

5万円モデルがエントリー!?好調な高級携帯音楽プレーヤー市場

ソニーはすでに5万円を超えるハイレゾ対応機種をいくつか出しています。5万円以上という価格帯に驚く方もいるかもしれませんが、高級携帯音楽プレーヤーの市場においては決して高くはありません。ソニーによれば、実売価格が5万円以上の携帯音楽プレーヤー市場は前年比120%で拡大しているとのこと。マーケットとしては好調のようです。

ハイレゾ対応の携帯音楽プレーヤーを、販売店舗での実売価格帯で見ると、5万円以下モデル、5万~10万円モデル、10万円以上の高級モデルに分かれています。充実した機能性を備え、ハイレゾ音源を十分に楽しめるとして納得できるのは5万~10万円のもので、ハイレゾ初心者にもおすすめのエントリーモデルといっていいでしょう。

ただし、これは国内市場の話であり、いち早く高級機をラインナップしてきた海外メーカー製においては、その限りではありません。

例えば、オーディオマニアから評価の高い韓国のアイリバー(iRiver)社が出した「Astell&Kern(アステル&ケルン)」のエントリーモデルは10万円台前半。ミドルレンジで20万円台という感覚です。この分野のトップランナーであるソニー・ウォークマンが満を持して発表した「黄金のウォークマン」が30万円というのも、決して“高すぎる”わけではないのです。

実際、先ほども挙げた韓国ブランドAstell&Kernが2016年2月に出したフラッグシップモデルは、直販価格がなんと約55万円。これが売れているというから驚きです。

ヒットなるか?最高の技術を駆使したハイエンドウォークマン

「黄金のウォークマン」に「金(ゴールド)」が使われているのは、決して成金趣味ではありません。「無酸素銅金メッキシャーシ」を採用したからです。銅はノイズを防ぐ効果の高い素材で、高級オーディオ製品の一部で使われています。その銅のなかでも切削困難な無酸素銅を削り出し、さらに金メッキで表面加工したのが「無酸素銅金」です。この加工が銅素材を酸化から守り、電気の接触抵抗を下げることで高音質化が実現しているのです。

もちろん、筐体以外にも、アンプなどのメインパーツから素材や部品まで、音質のために惜しみなく最高の技術が投入されています。オーディオマニアをターゲットに、ある程度の確実なヒットが見込める新商品なのでしょう。

高級オーディオ機器シリーズも投入

ソニーは、「Signature Series(シグネチャーシリーズ)」として「黄金のウォークマン」ともに、ハイレゾ対応の高級オーディオ製品群もラインナップしました。オーディオ界の大きな話題になることは間違いなさそうです。

そのうち、ハイレゾ対応ヘッドフォンのフラッグシップモデル「MDR-Z1R」は、実売価格が約20万円です。ヘッドフォンで20万円と聞けば、かなり高価に感じますが、ハイエンドヘッドフォンの世界では、20万円どころか30万円級の製品もあるのです。もはや、ヘッドフォンでなく、据え置き型の高級スピーカーで聴いているような広がりを感じるとか。

ヘッドフォン用の据え置き型アンプ「TA-ZH1ES」は、希望小売価格が約28万円となっています。ポータブルではない据え置き型ヘッドフォンアンプは、ソニーでは初の商品化です。このウォークマンとアンプとヘッドフォンを合わせて使うと、コンポーネントの総額は80万円! まさに贅(ぜい)を極めていますね。

本業のエレクトロニクスで黒字化

今さら語るまでもありませんが、ソニーは「技術のソニー」と言われ、ソニーが開発した「ウォークマン」は世界中に普及しました。また、エッジの効いたデザインとコンセプトで、それまでのPCと一線を画した「VAIO」の登場もあり、世界中からあこがれをもって見られるブランドでした。

リーマンショック後の景気低迷で、日本の多くの電機メーカーが、テレビやスマホ、PCといった不採算分野から撤退していくなか、技術力に自信を持っていたソニーは、スマホでアップルやサムソン電子 <896360> と真っ向から渡り合いました。しかし、世界的な「量」の競争にこだわり続けた結果、力を落とすことになったのです。

ソニーはリーマンショック以降、6期が最終赤字となりました。2012年3月期には4567億円の過去最高の赤字を計上し、2015年3月期には、ついにスマホで1800億円を特別損質として計上、1260億円の最終赤字となりました。これで、ソニーは史上初めて配当を見送り、無配転落しています。もう、まったなしのリストラに着手するしか道はありませんでした。

ソニーの株価は、リーマンショック前の2007年に7190円の高値を付けていましたが、業績の衰退とともに大きく下げ始め、2012年には772円まで下げています。その後、赤字を計上しながらも強烈な構造改革を進めたことで、2016年3月期には不振続きだったエレクトロニクス事業5分野が黒字化しました。株価も772円で底打ち後は、リストラの進展とともに2015年に3970円まで戻しています。

「量」から「質」に転換したソニー 復活に期待

ソニーは社長の平井一夫氏のもと、規模を追わない「量」から「質」へと転換し、奇跡の復活を果たしました。映画事業のソニーピクチャーズや、ソニー生命、ソニー銀行などの金融部門は好調でしたが、やはりソニーは本業であるエレクトロニクス分野あっての企業なのでしょう。エレクトロニクス事業が復活し始めることで、先行きへの期待とともに株価も上がります。

おそらく、「黄金のウォークマン」もこの流れを引き継いだ製品なのではないでしょうか?アップルを創業した故スティーブ・ジョブス氏はソニー製品の大ファンで、ソニーや創業者の盛田昭夫氏を尊敬していたといいます。そのソニーのDNAはまだ生きているはずです。

筆者も、またソニーから世界を変える新商品が登場するのを楽しみにしています 。

平田 和生
慶応大卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダー。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして活躍。現在は主に個人向けに資産運用を助言。

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