黄昏の国と思わず人々は沈みゆく日を日の出と見んや    湖衣



働いても働いても豊かになれない、さらに日々の生活が不安定な「低賃金労働者」を一般的に働く貧困、「ワーキングプア」という。

低賃金労働者のほとんどが契約社員、派遣社員などと呼ばれる<非正規雇用労働者>である。なぜワーキングプアは大量発生したのだろうか。

その大きな要因のひとつは、企業の人件費削減だと一部の専門家たちは指摘している。

企業の人件費削減の方法は、まずより安価な労働力を確保するために国外へ進出ことである。安価で豊富な労働力の市場を持つ国であれば人はいくらでもいるので、雇用する労働者を取っ替え引っ替えしても労働力と賃金のコストは安定している。

そのため、雇用待遇の質を落としても人手不足にはなりにくい。次に日本国内での人件費削減です。ひとつは管理職の早期退職や降格、正社員のリストラである。

そしてもうひとつが正社員よりも問題なく雇用の調整弁にできる契約社員や派遣社員である。その中で特に社会的問題になっているのが、派遣社員である。

派遣社員の多くは有期契約であり、半年に一度など契約を更新をする。

しかし、ある日突然派遣元より「次の更新はありません。○○までに退寮してください」と告げられ、一度に職と住むところを失ってしまう。それは寮住まいしていない派遣社員も同じである。収入がなければ当然家賃は支払えないからである。

それが「派遣切り」という現象である。

その発端はご周知の通り、2008年9月15日、アメリカ合衆国の投資銀行であるリーマン・ブラザーズの破綻である。

それが引き金となり世界的金融危機(世界同時不況)に陥った。いわゆる「リーマン・ショック」あるいは「リーマン・クライシス」といわれる。

その金融危機は日本に直接的な影響はなかったのだが、その影響は日本にも及んだ。リーマン・ショックは世界の経済を冷え込ませ、消費を落ち込ませていった。金融の方でも急速なドル安が進んでいった。

アメリカ合衆国の市場に依存が強い輸出産業は大きなダメージを受けることとなった。その輸出産業とは自動車産業や家電メーカーなどを中心とする製造業である。

製造業には大量の労働力が集められていた。その多くが雇用の調整弁になる派遣労働者だった。製造業の各企業は、大規模な労働者派遣契約の打ち切りした。それに伴い派遣業者による労働者解雇・雇い止めが発生し、大量の労働者が失業した。

「派遣切り」により、日本経済はそこからまた大幅な景気後退をしていくことになった。

2012年10月1日、派遣労働者の保護と雇用の安定を図るための法が改正施行された。

しかし、本当に派遣労働者に有利になったのだろうか。雇用の調整弁とはいえ、企業にとってデメリットになるならまず雇うことはないだろう。

実は派遣社員に対して社会保障費の負担がないし、非金銭報酬になる福利厚生費も必要ない。派遣労働者は雇用が保障されていないばかりか、正社員と比べて給与も安い。

そういう意味で生涯賃金は低くなる。払う厚生年金保険料は給与によって決まるので、生涯賃金が低い派遣労働者は当然年金受給額も低くなる。

そう遠くない将来、派遣という不安定で低賃金な働き方は例外ではなく、「普通の働き方」になるかもしれない。そうしたら、『1%の正社員と99%の派遣・非正規労働者』という社会に本当になりかねない。

まずは雇用の安定が必要である。そうでなければ、今よりももっと出生率が下がってしまうことだろう。経済力という足かせは、健康へのリスクにもつながっている。病院にいく費用、治療代が高いので行かないという理由である。

また、各企業が国外に出て行ってしまったら雇用もなくなる。極論になるが、労働者は生活のために国外で出稼ぎをするか、或いは飢え死にするかになってしまう。そうなると、日本という国が空洞化しかねない。

国民の減少と国民の流出、果たしてこれで国が成り立つのだろうか。さらに派遣労働者には所有財産になる土地を管理するお金もない。それらの土地を外国籍の方々に売ることにもなるかもしれない。

その結果、日本という国の土地の所有者は外国籍の方ばかりなる。事実上日本国はただの形だけになってしまい、極端な話だが日本という国が地図上から消えてしまう可能性もある。

日本の雇用問題は、とても根深いと思う。製造業では嫌なもの、大変なもの、やりたくないものは派遣労働者にさせるというところもある。

今回は派遣労働者にスポットを当てたが、正社員であっても過労死など問題が多い。サービス残業やサービス休日出勤も横行している。

需要と供給のアンバランス、すでに供給多寡に陥っている産業も見受けられる。さらにこれからAI、ロボットたちの労働参入も増加してくることだろう。本当に労働問題、雇用問題は難しい。日本という国の船は、これからどうなるのだろうかと思われて仕方がない。

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横尾湖衣(koi) このユーザーの他の記事を見る

短歌などを入れた記事を書いています♪日本短歌協会会員。専門分野は和歌文学。研究書『式子内親王研究』(万葉書房)。詩誌「玉鬘」、短歌誌「ひとひらの雲」発行。ブログ→http://ameblo.jp/koi-haru/

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