◆ 世界中で愛されているジブリ映画

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誰でも一度は、ジブリ映画を見た事があるのではないでしょうか?公開すれば映画ランキング上位には必ず入り、海外でも数々の賞を受賞している日本が誇るアニメ映画です。ジブリ映画と言えばご存知、宮崎駿監督のお名前がすぐに挙がりますが、その裏で長年ジブリ映画の人気を「色彩」という側面から支えていた1人の女性をご存知ですか?
彼女の名前は保田道世さんと言います。
風の谷のナウシカ、崖の上のポニョなど、あなたも見た事があるあの映画の色彩を1人で決めていた、ジブリの重要なスタッフだったんです。

◆ 保田道世さん

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保田道世(やすだみちよ)
スタジオジブリで色彩設計の責任者を務めていましたが、2016年10月5日に77歳でこの世を去りました。長年に渡り、ジブリ作品を支えてきた人物です。
宮崎作品では「未来少年コナン」に色指定で参加し、その後「風の谷のナウシカ」からスタジオジブリ設立後は、全ての宮崎作品で色指定等を務めていました。

組合活動を通じて高畑勲と宮崎駿の2人と知り合い、『太陽の王子 ホルスの大冒険』にトレースで参加、以後Aプロダクション(現・シンエイ動画)、日本アニメーション等で『母をたずねて三千里』『未来少年コナン』など、多くの作品で仕上チーフ・色指定をつとめる。

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実は宮崎監督よりも保田さんのほうが先輩だった?
保田道世さんが東映動画に入社した1年後に高畑勲、その4年後に宮崎駿が入社。1968年に高畑(監督)・宮崎(原画)の「太陽の王子 ホルスの大冒険」に保田さんも参加し、その後3人は東映を退社します。

アニメーション制作会社を渡り歩き、様々なTVアニメを手がけた後、1984年に公開された宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」が大ヒット!1985年にスタジオジブリが設立され、保田さんもジブリの社員となって宮崎監督らが生み出す独創的な世界に優しい色を添えていきました。

◆ 色彩設計ってどんな仕事?

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たまにアニメーション系の雑誌や、インターネットでこんな画像を見た事はないでしょうか?私達が普段なにげなく見ているアニメは、パラパラ漫画のようなもの。1枚でも違う色が使われると違和感を覚えてしまいます。
キャラクター、そのキャラが着用している衣装、小道具、背景にいたるまで、すべてこのように細かく「色の指定」が行われているんです。その色を決めるのが、色彩設定という肩書を持った役職のひとつ、という訳なんですね。

色彩設定(しきさいせってい)とは、アニメーションにおいて重要な役職の一つで、着色の際にどの色を使うかに関しての決定権を持つ色の総合責任者。関係する仕事は「色彩設計」「色指定」「仕上」の3つのセクションに分かれる。近年では「色彩設計」と呼ばれている。

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◆ 保田さんが作り出した「ジブリ色」

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一般的なアニメーションとは違い、ジブリ映画で使われている色は独特だとよく表現されます。それもそのはず、保田さんは一般的なアニメーションで使用されるよりもはるかに多くの色を使い、しかもその大半はわざわざ新しく作り出した色だったんだとか。
他のアニメーションでは真似できないはずですね。
保田さんがジブリ映画にて使用してきたこれらの色は、「ジブリ色」と言われています。

保田さんが使った色は「ナウシカ」で252色、「ラピュタ」は301色、「となりのトトロ」303色、「もののけ姫」ではなんと546色です。しかも半分くらいは絵の具メーカーと共同開発した新色だそうです。

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色指定には「リアル」と「こう感じた」との2つの考え方があると話す保田道世さんは、自然条件に合わせ色指定をするのが「リアル」で、「見た人が感じた」気持ちを色で表現するのが「こう感じた」で、「見られた側の感じた」も色で表現しているという。

出典笑コラ×ジブリ3時間SP(2013年7月10日)

「ジブリ色」と評されるジブリ作品の”色”は、常にやわらかく、やさしい。その色彩に与える作品の影響力はとても大きいと思われます。その色彩の世界の生みの親であるのが、安田道世さんです。

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◆ 保田さんの代表作は、ジブリの代表作でもある

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スタジオジブリが設立されてからは、保田さんは全ての作品に「色」で参加していますので、保田さんの代表作=ジブリの代表作ともいえます。
キャラクターの表情や服の色を決定するという重要な色彩設計を担当するかたわら、責任者として、1984年に公開された「風の谷のナウシカ」以降、「火垂るの墓」や「となりのトトロ」「もののけ姫」などの歴代のジブリ作品の色を全て1人で決めてきました。

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子供の頃に見たなあ…という人も多い、となりのトトロ。今でもテレビでOAされますよね。子供の頃には気づかなかった繊細な色使い、大人になった今、再びチェックしてみてください。

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1997年に公開された、もののけ姫。宮崎駿監督の構想16年、製作に3年という長い時間をかけて作り出された長編アニメ作品です。…が、長い付き合いの保田さんは「言わなくても駿の考えている事はわかる」と、1人で色を決めてしまったそう。

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ジブリ映画では異色の作品とも言われた、崖の上のポニョの色も保田さんが決めました。こちらは海や川、雨などの水に関する色使いが絶賛されています。

◆ 最後の仕事となった、風立ちぬ

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崖の上のポニョで一度は引退したものの、風立ちぬを作ると決めた宮崎監督が「彼女(保田さん)しかいない!」と説得をし、再び呼び戻した事で参加が決まった作品です。惜しくもこちらが保田さんの最後の作品となってしまいましたが、ジブリ色は健在。

体力的な問題から「崖の上のポニョ」で一度はアニメ界を退いたものの、宮崎の熱烈なオファーを受け、2013年に公開された「風立ちぬ」で特別に復帰した。

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公開直前にテレビなどで特集が組まれ、保田さん本人も作品について語っていました。
「明暗などだけではなく、作品の人物の心境を反映し色彩を変化させる事で、心境を表現できる」との事。例えば、同じ人物の同じ服装であっても、色彩はそれぞれのシーンで違うんです。この作品では大正時代~昭和という設定である為、その時代背景も踏まえた上で色彩を設計していったそう。

風立ちぬ 菜穂子の花嫁衣裳
「結婚式夜 廊下を歩く」:自然な配色
「初めて新郎である堀越二郎の前に立つ」:同じ夜なのに鮮やかな配色

時代背景などとは別に、登場人物視点でみたときにどう感じるかで配色を変える
なので、風立ちぬのポスターとなったシーンも本当はこうもり傘の黒がいいと思ったが、全体のバランスを考えさわやかな白としている。

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◆ 映画から見て取れる保田さんのこだわり

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風の谷のナウシカでは、大自然がよく背景に登場します。そして、人物以外の動物や昆虫、植物などの描かれ方や色使いは主要キャラクターとは異なったものになっています。

また、王蟲の描かれ方に注目して下さい。他のキャラクターや景色などと比べ、線が細いというか、タッチが違うというか、、非常にリアルに、グロテスクな感じに描かれている事が分かります。
この王蟲は、人間の犯した愚かな行いの象徴となる存在なので、そういった意味も含め、このような描き方を選んだのかなと推測しています。

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子供の頃の記憶というか、まるで夢の中のようなシーンでは、キャラクターの線も色使いも変わります。全体的に少しトーンが暗く、落ち着いた雰囲気です。

タッチが明らかに不自然です、不安感をそそるような、線の強い画です
過去の記憶をなぞると同時に、これからナウシカにとって嫌な事がおこる前兆と、死の世界を暗喩しているのだと思われます

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ナウシカが着用している赤い服ですが、夜のシーンなので少しくすんでいます。そして、血に染まる事で青色へと変化するのです。王蟲の目玉(?)の部分だけが鮮やかに発色しているのもバランスが見事です。

酸の湖に入ろうとする王蟲をナウシカが止めます
この時、王蟲の体液によって、ナウシカの服が青く染まります

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となりのトトロに出てくる、引っ越してきたばかりの家。宮崎監督がインタビューで答えている通り、病気療養をする人のために建てられた家という設定なので、日当たりがよく全体的に淡く、だけど明るい色使いです。家の周りには自然もたくさん描かれています。

ぼくは、基本的にあの家は、病人を療養させるために建てた離れのある別荘だと思ってるんです。結核患者の人のために建てた離れなんですね。で、その人が死んでしまったので、そのまま用なしになって空いてた家なんです。
そう考えていた家なんです。離れが妙に日あたりがよさそうなのもこの設定のためですね。(宮崎)

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メイちゃんのワンピースは、お天気が良い日は鮮やかなピンク色で元気いっぱいな様子を表現し、雨の日や森の中などでは少しにごったような落ち着いたピンク色を使ってメイちゃんの不安な気持ちを表現しています。

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人気の高いキャラクター、ねこバスですが毛並みのフカフカ感、大自然の中を疾走していくシーンでの背景の躍動感溢れる色使いは必見です。
暖色系を使う事で、温かみのある感じがしますよね。

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何色ものベージュ系の色を使って、毛並みのフカフカ感、柔らかさ、温かみを表現。

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もののけ姫ではその当時や場所の歴史をまず調べるところがスタートし、色を組み立てていったとの事です。血の赤、森の緑、その他、白・紺・鼠色がベースとなっており、日本の四季を連想させる「和」の色使いです。

当時は、絣はないけど藍染めはあったとか、庶民は赤、紺、白、鼠色を好んで使ったらしいとかの情報からイメージをふくらませたといいます。とにかく色についてのキャパシティを広げるには観察しかないそうです。川や海、空の雲、動植物、絵画、周辺のあらゆるものを見て記録していくことが大事だと。

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森の中のシーンでは、キャラクターのセルだけではなく、なんと背景も何重にもして奥行感を出しているんだとか…。よく見ると、草花がキャラクターの手前と奥に分かれているのがわかりますでしょうか?また、色も濃淡を変えており、奥行きを演出しています。

そして宮崎アニメといえば水と空と木々の緑の表現力が圧倒的です。その配色にも保田さんが色の職人として存在感を発揮しています。というよりあの背景のリアルな表現は保田さんが作り上げたものと言っていいのかもしれません。

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崖の上のポニョでは、とにかく水の表現が絶賛されました。宮崎監督自身、インタビューで「水の表現は難しい」と仰っていましたが、保田さんは見事にジブリ色で表現。
ポニョが着用しているワンピースの明るさと、水面にうつりこんだワンピースの明るさは全く違います。

NHKのプロフェッショナル仕事の流儀で監督が出演した際に「水の表現は難しい」というようなことを言っていましたが、だからこそここまで動きにこだわるのだなということがよくわかります

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水中の様子。ものすごい種類の色を使っているはずなのに、ちっともゴチャゴチャしておらず、むしろまとまりがある。

◆ 保田さんを惜しむ声は世界中から届きました

ジブリ映画のファンはもちろんですが、アニメーションではなくとも色に関する仕事に携わる方や、日本だけではなく海外からも保田さんを惜しむ声がネット上に挙がりました。

「この方がいなくなったらジブリ作品の色彩はガラッと変わってしまうんじゃないかな。でも長い間お疲れ様でした」

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「いきなりのニュースにまだショックが…。この方の色彩で彩られた作品で多くの感動を頂きました」

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◆ 保田さんの仕事術をもっと知りたいなら…

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保田さんの訃報をうけて、1997年に徳間書店より発刊された「アニメーションの色職人」という保田さんの著書が今再び注目を浴びています。この本には、彼女の35年にわたる職人人生が綴られており、色の決め方や他スタッフへの指定など、制作現場から見たもう1つのアニメ史とも言える本なんだそう。
保田さんの色に対するこだわりをもっと知りたい!という方は、ぜひ一度読んでみてくださいね。

写真の本の表紙は「もののけ姫」のサンの顔の色指定ですが、保田さんは「もののけ姫」の舞台となった室町時代の東北地方の山里をイメージし、当時の衣装についての研究をした上で登場人物の色彩を決めていったといいます。主人公のアシタカは頭の先から足まで40色もの色を使っているそうです。

出典 http://www.senken.co.jp

◆ 本のレビューはこちら

端くれながら同じ「色」を仕事とする者として、仕事に対するプロ意識に共感と尊敬と憧れの気持ちを抱き、最後まで一気に読みました。

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ジブリ作品の色彩設計を担当してる保田道世さんの話。
なにげないシーン1つにも愛情をそそぐこだわりがジブリ作品に深みを与えている。

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本書に書かれている保田道世さんは、ジブリのほぼ全ての作品の色を決めてきた人です。
これだけを聞くと絵を描いているアニメーター達に比べて楽な仕事なのかと思いきや・・・とんでもない!
キャラクターその他の色を決めるだけでなく、各絵の1枚ごとに色を指定し、出来上がってきた絵に問題が無いかをチェックする、という実に膨大な作業をこなさねばならない過酷な仕事であるようです。

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