映像のクオリティはエミー賞のお墨付き、豪華ベテラン俳優陣と今をときめく若手俳優たちが王座をめぐって魔法ありドラゴンありロマンスあり、もうなんでもありで争う話題のドラマ・ゲームオブスローンズ。今回はそのゲームオブスローンズがフェミニズムを体現している理由を3つ紹介します。

ゲームオブスローンズとは?

架空の大陸ウェスタロスの王座をめぐる諸侯の戦いと北から迫りくる不死身の”ホワイトウォーカー”と人間との戦いをめぐって繰り広げられる魔法ありドラゴンあり人間ドラマありの群像劇です。
1996年発売のジョージ・R・R・マーティン著『氷と炎の歌』を原作とし、米ケーブルテレビHBOが2011年からテレビシリーズ化、これまでに第6シーズンまで放送されています。(2016年10月現在)

登場人物が多すぎる(がすぐ死ぬ)ことや、多くのプロットがあるため全体として物語のスピードがかなり遅いなどの批判はありますが、原作からの根強いファンや多くのファンタジーファン、ドラマファンから支持されています。
ストーリーもさることながら、ロケ地、時期にもこだわったリアリティある映像に見事に調和する最新のVFX技術を駆使した映像効果や、細部にまでこだわった衣装や小道具など技術・美術部門での評価も高く、本年度のエミー賞では最多入賞、シリーズとしての受賞数は歴代最多となっています。

たくさんの美しい女性が登場する本作ですが、原作者自身が自分はフェミニストであると公言しており、その思想はドラマにも引き継がれているといいます。今までに放送された6つのシーズンから物語のどこにフェミニズムに垣間見えるのか、調べてみました。

恋愛?なにそれ美味しいの?

真実の愛のキス?はたまた「政略結婚なんていや!私は愛する人と結婚したい!」なんて中世の価値観に反するありがちなお姫様設定はゲームオブスローンズにはありません。第1シーズンのサンサにはその傾向があったかもしれませんが、どう考えても彼女が憧れていた「王子様」は世紀の悪童で正義感の強い白馬の王子様タイプではありませんでした。

権力を得るためなら政略結婚もいとわないサーセイやマージェリー、あるいは嫌だけど逆らわない初期のデナーリスのように、恋愛中心というよりも時代背景に即した価値観を持った女性が多く登場します。 

夢見る夢子ちゃんだったサンサも父を殺され、仇との結婚を強要され、王都を脱出したと思ったら助けてくれたおじ様に迫られ、挙句の果てにサイコパスのもとに預けられる…など辛酸をなめすぎて今や同作品の中で1、2を争う「感情が読めない人」に成長しましたね。

恋愛に関しては男性陣のほうが本能的で奔放にアプローチしています。野人の野性的な魅力に抗えなかったジョン・スノウや戦場の天使に魅了されて大事な政略結婚を反故にしたロブ・スタークなどが例に挙げられます。男性のほうが色恋沙汰に忙しいのは、逆に男尊女卑の世相だからこそかもしれませんね。


出典 YouTube

サンサを演じるソフィー・ターナーは、「最近本当に恋愛モノがあふれていると思うから、女の子が恋愛ばっかりしているわけではないこの作品に関わることができて本当にうれしい。」と答えています。

男女が平等であるためには男勝りの女性でもいいし、女性らしい女性でもいい

重要な役職についている女性はどこか男性的で気が強い、という認識もあるかもしれません。それはゲームオブスローンズでも同じで、男とも対等に戦える女戦士・ブライエニー(グェンドリン・クリスティー)は金色の甲冑を身にまとうれっきとしたナイトですし、もともとお転婆だったアリア・スターク(メイジー・ウィリアムズ)は立派なアサシン(暗殺者)として成長しました。

腕っぷしの強さだけでなく、指導者的地位につき、男性的な強さを示しているのはデナーリス(エミリア・クラーク)ヤーラ(ジェマ・ウィーラン)。特に第6シーズン9話で七王国侵略に向けて手を組んだ2人は印象的でした。

愛人のダーリオ・ナハリスを置いて戦にでる決意をした直後に謁見したヤーラと手を組むデナーリス。このシーンについてエミリアクラークは「あらまぁ、ここにもわるいこちゃんがいたのねーーーえw(中略)ダリオの枠を埋めるのは女の人…悪くないwって感じだったわ」と好意的に話しています。

また第6シーズンで登場した弱冠10歳のベアアイランド領主リアナ・モーモント(ベラ・ラムジー)も容姿からは想像もつかない芯の強さを示し、多くのゲームオブスローンズファンを圧倒しました。

しかし、力をもっているのは彼女たちだけではありません。今や七王国の女王となったサーセイ(レナ・ヒ―ディ)は昔から陰で(?)王を動かしてきましたし、王に取り入って影響力を得ようと考えているのはマージェリー・タィレル(ナタリー・ドーマー)も同じです。彼女の祖母で茨の女王と呼ばれているオレナ・レッドワイン(ダイアナ・リグ)も女性ならではの処世術で巧みにキングズランディングでの権力争いに参加していました。

これらの女性像からいえるのは、力の定義、権力の得方、使い方は人それぞれであるということです。女性らしくありながら権力を得ることもできるし、男性のようにふるまうこともできます。形はどうあれ女性だから男性だからという幻想に取りつかれる必要はないのです。

商品として、ではない女性の性

ゲームオブスローンズは良くも悪くも性描写が多く、俳優の裸で視聴率を取っているという批判もあります。しかし、これはリアリティを追求した結果なのだと作者のジョージ・R・R・マーティンは話しています。 

劇中のドスラキ族は必要なものは生産するのではなく奪うというジャイアニズムを実践する種族であり、襲った先の集落ではもれなくレイプが横行しますが、実はこれは海を渡ったウェスタロスの騎士たちにとっても同じことなのです。

勝てば奪うし、負ければ奪われる。つまり戦争の際は負ければ自分だけでなく、自分の家族や子供たちまで危険にさらすことになるのですね。そうして支配し、支配されていく。

これは彼らが中世の野蛮人だからではないし、まして虚構だからでもないのです。現実の世界で昔から繰り返され、そして今なお起こっていることなのです。それは『性器の傷を見ればどの集団が襲ったのかわかる』と語るコンゴ人医師のスピーチが証明しています。紛争地域では、略奪地域を支配するために恐怖を使い、その恐怖は殺戮だけでなくレイプからも生み出されるのだそうです。

意識的か無意識的かはわかりませんが、ジャンルの性質上「子供向け」「性描写やレイプ表現はふさわしくない」という考えが働いていることもしばしばあるファンタジーにおいて、さすがジョージ・R・R・マーティン、ここでもリアリズムに徹し、性が如何にして闘争に利用されるのかを描いています。

かといって性が利用されていいとは言ってません。デナーリスは奴隷制度に反対しています。このような世界をデナーリスがどのように治めていくのか、ということは作者のこの世がどうあるべきかという意識を反映しているといえます。





鉄の王座が最終的に誰の手に渡るのかはわかりませんが、最終的な統治者がどのような世界を目指し、その世界で女性がどのように生きてゆくのか、という観点で視聴するとより物語を深く楽しむことができるのではないでしょうか。

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イギリス留学中のアマチュアライターです。中国人だらけの修士課程を修了後、ヨーロピアンだらけのインターン先で絶賛奮闘中。英語の勉強と称してテレビを見るのが日課です。

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