いま、農業を取り巻く環境は厳しい。後継者不足による高齢化。廃業する農家も多く、耕作放棄地も増え続けている。さらに、TPP問題。

だが、明るいニュースも入ってくる。企業参入の緩和や農業技術の進歩である。

企業が農業を始めることで、耕作放棄地が減り、地方に雇用も生まれる。これにより、地域の活性化が期待できるようになる。

また、農業技術の進歩は、キツい作業の多い農業を楽にしてくれ、若い層の就農を後押しする。田畑を耕し、種を蒔き、水をやり、雑草を除去し、収穫する。

これらのすべてを機械でできるようになっている。腰を曲げた姿勢での作業や、重いものを手で運ぶことが少なくなりつつある。

技術の進歩はそれだけではない。水のやり方、温度調整、肥料の与え方などは、熟練の技術と長年の勘が頼りだったが、いまやコンピュータやセンサの活用により、経験の浅い人間でも、それなりにできるようになっている。極端なことを言えば、コンピュータの指示に従えば良いのである。

最近では、土が乾いたことをスマホで知らせるアプリまで開発されているので、絶えず見まわる必要もなくなっている。こうしたシステムを活用すれば、美味しい野菜・果物が作りやすくなるのである。

いまは、作物の良し悪しも、センサで判別できるようになっている。特に糖度が価格を左右する果物は、光センサを使うことで、個体ごとに仕分けることができる。

従来なら、切った果物の汁を糖度計で計測していたが、これではサンプルの糖度しかわからない。同じ木に成った果物すべてが同じ糖度ではないので、不確実な仕分けとなっていた。

センサで確実に甘いことのわかった果物は、当然高いランクとされ、取り引き価格も高くなる。

さらに、「低温貯蔵」の技術も確立されている。これは、糖度・栄養の低い作物でも、低温で貯蔵することで熟成され、美味しくなる方法である。

ここまでできるようになると、作物づくりで失敗することは少なくなる。すなわち、農家の収入アップに繋がるのである。

このように、農業技術が進歩すれば、農業はキツい仕事ではなくなり、若い層も増え、収入も安定するようになる。高く売れることがわかれば、やりがいも生まれる。良いことだらけではないか。

……が、ここで疑問が。

美味しい野菜・果物が確実に判別できるようになる。それはイコール、高付加価値商品の誕生である。これを逆に捉えれば、野菜・果物が高くなるのではないか、という不安が出てくる。

いまの野菜・果物は、安く売られていても、中には美味しいものに当たることがある。それが、これまでの農業技術の限界だったから。

だが、美味しい野菜・果物が確実に選別されてしまうと、安く売られるものは、あまり美味しくないものとなってしまう。つまり、庶民が買うことのできるものは、美味しいとは言えないものになるのではないか。あるいは、TPPで安く入ってくる、安全面に不安の残る海外産となる。

農業の発展は喜ぶべきことだが、庶民の食生活は淋しいものとなりはしないのか。これは、考え過ぎだろうか。

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佐藤きよあき このユーザーの他の記事を見る

1961年兵庫県生まれ。神戸学院大学法学部中退。1981年、広告デザイン会社にコピーライターとして勤務。93年、プランナー・コピーライターとして、フリーランスに。仕事を継続したまま、96年、木のおもちゃ制作を開始。ネット販売に着手。その後、「販売の現場」を知るために、5年間スーパーに勤務。これにより、「メーカー」「販売現場」「広告・販促」のすべてを経験。この経験を生かし、2003年より、中小企業・個人商店向けメールマガジン「繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座」を発行。関連する情報販売、コンサルティングを開始。メールマガジン他、ブログ9本「Marketing Eye」「ビジネス界隈・気づきの視線」「企画する脳細胞・ビジネスの視点」「まちづくり・村おこしの教科書」「行列のできる『MENU』の創り方」「中高年のための新規開業サポート」「独立・起業の成功法則」「販促の知恵袋」「スキルアップでビジネスぶっちぎり!」を執筆中。現在、繁盛戦略コンサルタントおよび中小企業経営研究会のビジネス・カウンセラーとして活動。著書に「0円からできる売れるお店の作り方(彩図社)」がある。

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