2016年4月14日21時26分以降に熊本県と大分県で相次いで起こった地震を『熊本地震』と言います。震度7が2回、震度6強が2回、震度6弱が3回発生しました。(wikipediaより)

震災から5ヶ月経った今も、避難生活を余儀なくされる方たちがみえ、トイレも使用できないままの住宅もあるそう。そんな中、2016年9月17日岐阜大学サテライトキャンパス(岐阜県岐阜市)において、『土木計画学ワンデイセミナー 災害時対応~復興支援と災害調査 -熊本地震の経験を踏まえてー』が開催されました。

認定NPO法人 レスキューストックヤード 代表理事 栗田暢之さん
自身も被災者である熊本大学 准教授 田中尚人さん
防災科学技術研究所 臼田裕一郎さん
株式会社ピーアイ物流企画 ロジスティクス研究所・レスキューストックヤード 理事 伊藤秀行さん
京都大学防災研究所 教授 畑山満則さん
5名の専門家がそれぞれ講演。
【主催】(公社)土木学会 土木計画学研究委員会 減災計画研究小委員会、京都大学防災研究所、国際総合防災学会。
【協力】清流の国ぎふ 防災・減災センター

それぞれの分野の方々が、支援活動や調査・研究を行った中で見えた課題や改善点などについて発表されました。

ラストワンマイルで右往左往 …被災者の手に物資届かず

トップバッターは認定NPO法人 レスキューストックヤード 代表理事の栗田暢之さん。ボランティア団体として現地に入り、炊き出しや各種トラブルの解消のために奔走されたそうです。

栗田暢之さん

出典月下香

熊本地震では、政府は威信をかけて配送業者に委託し多量の物資を現地に送りました。これらは市町村の集積所に集められるのですが、配送業者はその集積所に荷卸しをしたら帰ってしまいます。この大量の箱詰めされた多種多様な物資を、選別して分類し、整理保管、必要な避難所を特定して発送する、という仕事が現地の被災している役所に丸投げされるそう… どこも対応しきれず、結局肝心の被災者の手にはなかなか届かない事態に。役所はボランティア団体に委託したそうですが、物流を専門とする団体はほとんどなく、緊迫した状況の中、スムーズには進まないそうです。結局、大部分は自衛隊が行ったとのこと。

せっかくの早急な対応も、最終地点の寸前でストップしてしまっては意味がありません。この『ラストワンマイル』での問題は、このあと登壇される伊藤さんも詳しくお話されていましたが、栗田さんがおっしゃるには、とにかく個人で3日分の備えは必ずしておくことが大切だとのこと。3日経てば、物資の供給が全体に行き渡り始めるそうです。また、隣近所で足りないものを補い合えるような、日頃からのお付き合いも大事とのこと。非常事態にもコミュ力が試されるんですね…

介護の必要な人やペットも同伴できる避難所を

栗田さんのボランティア団体の女性スタッフが、ある寝たきりの女の子のお母さんに困ったことはないかと話しかけました。すると、そのお母さんは泣き崩れたそうです。年頃の娘を着替えさせるのにも、排泄などの介助をしなければならないときも、仕切りひとつなく、周囲を走り回る子供たちに心ない言葉を浴びせかけられていると。なんとかお父さんが毛布で隠しながら介護しているそうですが、こんな状況の方が、健康な人たちと同じ扱いになっているとは…

通常、介護の必要な方は、「福祉避難所」といって指定された福祉施設の空きベッドに収容されるそうです。ところが、空きのある福祉施設は少なく、行き場がないため通常と同様に学校の体育館などに避難せざるを得ない場合があるとのこと。ですが、自由に動き回れるわけではないので、様々な困難に見舞われます。

栗田さんは、学校であれば教室がたくさんあるのだから、個別に介護の必要な人とその介護者に使用できるようにすればよいとおっしゃられます。行政はとにかく平等であることにこだわりますが、当人の希望を聞きつつ、できることはやっていくしかないと。また、足腰の弱った高齢者には、段ボールベッドもあるので、希望者には利用できるよう対応すべきだとのことでした。それぞれ別々の事情があるのですから、すべて平等に同じでなければならないというのは道理に反しますよね…

また、ペットを家族のように思う人が増えている現在、動物だから外に置いておけばいいというわけにもいきません。動物嫌いの人に迷惑をかけなくても済むスペースの確保も必要とのこと。何事も緊急時には対応しきれないことも多いですから、平時からの準備と心構えが大事ですね。

不活発病を防ごう!

避難所生活が長くなると、問題になるのが『生活不活発病』とのこと。じっと同じ場所にいて、たまにテレビを観に起きてくるくらいで、ほとんど何もしないという生活を続ける方が多いそうです。やることも特になく、外は危険で外出もできないとなれば、そうなるのも頷けます。配布された毛布も、洗濯されることもないまま避難生活のあいだずっと使われます。そういえば、ニュースでも避難所での高齢者の肺炎が問題になっていましたね。清潔に対する意識も低下せざるを得ない状況なのでしょう。

そこで栗田さんたちの団体では、子供たちに「ワクワクワーク隊」というグループを作り、朝の挨拶運動や掃除などの仕事を作りました。子供たちが元気に挨拶をしてくれたら、避難所の空気も和みますよね。高齢者も楽しい時間が持てるようお茶会を開いたりしたそうです。また足湯をしながら、つらい気持ちなどを聞いたりする時間も設けたり、みんなで一斉に毛布を天日干ししたりしたそう。日常に変化があることが心を癒しますね。

最後に、地域にはその地域特有の考え方などがあるため、外から支援に入るボランティア団体は、価値観を押し付けず、住民の希望を大切にしなければならないともおっしゃっていました。ボランティア活動を希望される意識の高い人たちが増えていますが、ボランティアをする側の課題もありそうです。

SNSも使いよう

次に登壇されたのは、ご自身も熊本市民として被災された熊本大学の田中尚人准教授。田中さんは「上げ膳据え膳があたりまえではなく、避難所も避難者自ら運営していく気持ちが大切」とおっしゃいます。

田中尚人さん

出典月下香

インターネットでの情報の拡散は、デマやタイムラグなどもあり、一概に良いとも悪いとも言えませんが、今回の地震では、SNSを使って避難所間の連絡を上手に行っていたと話されていました。

メールや電話が使えなくなる中、SNSで連絡をとりあうことができたという話も聞きます。どんなツールも使い方次第なのかなと感じます。インターネットツールを利用することに長けた若者に動いてもらうことも大事ですね。また、学生さんたちの中にも「ボランティアをしたい!」という意欲のある方が多く、足湯やお茶会などのイベント運営に関わっていただいたそうです。

また、避難所でボランティアスタッフに炊き出しをしてもらうのではなく、被災者たちがみんなでごはんを作り、一緒に食べる、という機会を作ることにより、主体的に自身の生活を再建していく雰囲気づくりもされていたとのこと。

出典月下香

「避難所自治五訓」

田中さんは、避難所が避難者自ら運営していくための約束事をこのようにまとめられている、福島大学天野和彦特任准教授の『避難所自治五訓』を紹介されていました。

1)避難者の実態や課題を適正に把握する
2)避難者の声を集約し、生活環境改善の努力をする
3)避難者が交流できる場を確保する
4)自治的な組織を確立し、避難者の参画によって運営する
5)課題解決や情報共有のために、地域における専門家や組織とネットワークを構築する

ニーズを把握し、お互いにいたわり合って、常に前進する気持ちがあることが大切ですね。

マスコミにどう報じてもらうか

一方で、マスコミの報道もなかなか悩ましい存在だったようです。偏った地域の状況を報じていたため、物資の供給にも偏りが生じたり、大きな被害を受けているのに関心を持ってもらえないと心を痛めていた地域もあるそう。田中さんはマスコミに情報を提供する側として、必要な情報を理解しやすく分類して、報道する側にも提供し、たくさんの方に伝えることも重要であると痛感されたとのこと。

被災された方、被災地に入られた方、それぞれの視点での課題が見えてきました。後編に続きます!

この記事を書いたユーザー

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大手企業、都内の総合病院や美容皮膚科などに看護師として勤務後、女性の心を軽くするヒーリングサロンを開業。女性が輝くための塾「大和撫子塾」設立。小笠原流礼法・茶道・書・禅など修行中。NPO法人岐阜立志教育支援プロジェクト認定講師。地域福祉の広場GIFU世話人。選挙出馬経験あり。

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