いま、神社仏閣の“御朱印集め”が静かなブームらしい。

「御朱印」とは、神社仏閣を参拝した証として頂くもので、「御朱印帳」という帳面に、「御宝印」という判子を押し、本尊の名前や日付などを墨で書き記している。参拝の記念としてだけではなく、神や仏の分身と言われ、有り難いものとされている。

本来は、寺への参拝者が写経を納めた際に頂く印だったが、いつの頃からか、納経をしなくても頂けるようになり、その後、神社にも広がった。神職や僧侶にお願いすれば、書いてもらえるが、「初穂料」や「御布施」として、500~1000円程度が必要となる。

この「御朱印」が、なぜか若い女性に注目され、“御朱印ガール”と呼ばれている。「御朱印」の魅力に気づき始めたのである。

墨文字と印の朱色のコントラストの美しさ。個性ある筆づかいと印影のデザイン性。どこか厳かな佇まいがあり、見る者を静寂の世界へと誘う。

私も以前から“カッコいい”とは思っており、収集したい気持ちもあったが、まさかブームになるとは……。

元々、神社仏閣を訪れる女性は増えていた。その目的は、「さまざまな願いごと」や「特別な場所での癒し」だった。そしていま、“御朱印集め”が加わったのである。

そんな“御朱印ガール”向けに、お洒落で可愛い「御朱印帳」もたくさん販売されている。ブームを見越し、ブームを盛り上げる商売が、すでに登場しているのである。

そこで、注目したい神社がある。

栃木県鹿沼市の「古峯(ふるみね)神社」。「御朱印」マニアの間では有名な神社で、この神社の「神使(しんし)」、すなわち神の使いである、天狗の絵付き「御朱印」を頂ける。

絵付きの「御朱印」は少ないので、人気が高い。神職8人が、それぞれオリジナルの天狗イラストを描き、全部で16種類もある。

しかも、参拝する日によって神職は違い、必ずしも欲しい「御朱印」が頂けるわけではない。欲しい「御朱印」があるなら、作者である神職がいる日に訪れる必要がある。神職のいる日は教えてもらえるが、最低2度は足を運ばなければならない。

また、コレクターとしては16種類すべてを集めたいもの。当然、1度や2度では集まらない。つまり、リピートしなければならないのである。初穂料も500円×16種類となる。

16種類もあるのは、神社のサービス精神だろうが、ビジネスモデルとしてもお手本となる。

「願いごとができる」+「癒しの時間を得られる」+「コレクター心をくすぐられる」。そして、行くまでは「旅行気分」を味わえる。“客”が十二分に満たされる要素が詰まっている。それが、この「古峯神社」なのである。

“戦略”なのかどうかはわからないが、“マーケティングの基本”を押さえたビジネスモデルだと言える。

「天狗の絵付き」で注目させ、「16種類の品揃え」で、選ぶ楽しさ、集める楽しさを提供する。「提供できない日」で付加価値が高まる。見事なマーケティング戦略である。

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1961年兵庫県生まれ。神戸学院大学法学部中退。1981年、広告デザイン会社にコピーライターとして勤務。93年、プランナー・コピーライターとして、フリーランスに。仕事を継続したまま、96年、木のおもちゃ制作を開始。ネット販売に着手。その後、「販売の現場」を知るために、5年間スーパーに勤務。これにより、「メーカー」「販売現場」「広告・販促」のすべてを経験。この経験を生かし、2003年より、中小企業・個人商店向けメールマガジン「繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座」を発行。関連する情報販売、コンサルティングを開始。メールマガジン他、ブログ9本「Marketing Eye」「ビジネス界隈・気づきの視線」「企画する脳細胞・ビジネスの視点」「まちづくり・村おこしの教科書」「行列のできる『MENU』の創り方」「中高年のための新規開業サポート」「独立・起業の成功法則」「販促の知恵袋」「スキルアップでビジネスぶっちぎり!」を執筆中。現在、繁盛戦略コンサルタントおよび中小企業経営研究会のビジネス・カウンセラーとして活動。著書に「0円からできる売れるお店の作り方(彩図社)」がある。

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