「漢字が書けない=悪」ではない。

日本人に生まれたからには避けては通れない、漢字。何かと小学生の頃から書き取りが多く、「覚えるのが大変」「書くのが面倒くさい」と、ネガティブな印象を持っている人も多いのではないでしょうか。そうです、学校の先生や親など、大人は自身がそうやって育ってきたせいか、「漢字は書けなければダメ」「綺麗に書きなさい」「たくさん書いて覚えなさい」と言ってしまいがちなのです。

果たしてそれは正しいのでしょうか?

私が見てきた生徒には「漢字は書きなぐりだけど、暗記力は抜群」「汚いけどとにかく速い、自分では読み違えない」「書いてもまるで覚えられないけど、耳から入るとすぐに頭に入る」など、漢字なんて出来なくても持ち前の能力を発揮する子がたくさんいました。

おそらくそういった生徒に漢字を押し付けたとしても、持ち前の能力は発揮できなかったと思います。なぜなら「気をつけて何とかなる」という範疇を超えているケースが多いからです。

「アスペルガー症候群」や「ディスレクシア」を知っていますか?

最近はこの名前自体も一般的に使われるようになってきて、自閉症や発達障害がどういったものか、認知されてきたように思います。アインシュタインなど、有名人の中にもアスペルガー症候群の方は多くいらっしゃるようです。

アスペルガー症候群は自閉症の一つのタイプです。アスペルガー症候群の子どもや大人は、(1) 他の人との社会的関係をもつこと、(2) コミュニケーションをすること、(3) 想像力と創造性の3分野に障害を持つことで診断されます。典型的な自閉症も同じように3分野の障害(以下「3つ組の障害」と呼びます)を持っています。自閉症とアスペルガー症候群はひとつながりのものです。

出典 http://www.autism.jp

簡単に言うと、知識の発達が正常である自閉症、ということのようです。また今回のテーマである字を書くことについても、特徴の一つとして以下のように述べられています。

字を書く問題
 不器用さの項でも説明しましたが、字を書くのが苦手な子どもが多いようです。まず字の書き方が乱雑で「みみずのはったような」字をかくことがあります。全体的な成績は悪くないのに中学生になっても「わ」と「ね」、「シ」と「ツ」などの区別で混乱したり、簡単な漢字を覚えられないことがあります。「偏」と「旁」の位置が逆転したり、いわゆる鏡文字を書く子もいます。文末の「は」と「わ」の混同なども時にみられます。

出典 http://www.autism.jp

理解しておいてほしいのが、この字を書く問題というのが”障害”の特徴の一つだということです。ですから、無理に矯正しようと思っても出来るものではなく、特徴にあわせて勉強の仕方を工夫しなければ、望む結果はでないのです。

また「ディスレクシア」という読み書きの障害の場合もあるようです。

ディスレクシアとは
ディスレクシアとは、知的に問題はないものの読み書きの能力に著しい困難を持つ症状を言います。充分な教育の機会があり、視覚・聴覚の器官の異常が無いにも関わらず症状が現れた場合に称します。

出典 http://www.npo-edge.jp

俳優のトム・クルーズが台本を読めないというのは有名な話しですが、作家の村上春樹もそうだったと知った時は、驚きました。

昔から続いてきた「書いて覚える」という方法は、こうした障害がはっきりとわかっていなかった時代の産物です。ただ「不勉強だからできない」というのとは、別次元のこと。「なぜ書かないの」「覚えられないならもっと書きなさい」と言い続けるのは、言う方も、言われる方も苦しくなるだけです。

テストの答案で先生に伝われば、それで良い。

こういった特徴もあることを知ってほしくてアスペルガー症候群の例を出しましたが、正直なところ、はっきりと診断がついている方が対処がしやすいです。なぜかというと、親も子も、自分の特徴を理解して勉強に臨めるので、気分良く、自分に合ったスタイルで漢字と向き合えるからです。

逆に対処しにくいのが、診断がついていない場合、もしくは診断までつかないが漢字に対して似たような特徴を持っている場合です。このような場合、親の理解が得られずに「努力が足りない」と突き放されたり、本人が「何で自分は出来が悪いんだろう…」と不必要に自分を責めることがあります。

そのような子には「テストで先生に伝われば、それでいいんだよ。」「自分で見間違えないようにだけ気をつけようね。」「できる勉強の方法でやってみよう!」と悲観的にならないように方向性を変え、親子ともに特徴を理解して向き合えるように工夫しなければなりません。

何のための漢字なのか。目的を忘れないこと。

一方で、漢字を使いこなすことは勉強において非常に有用です。漢字には意味が隠れていますから、例えば社会や理科において、漢字の意味から語句を理解することで、覚えやすく、忘れにくくなります。

しかし今の時代は、PC・スマホ・タブレットが普及し、何かと文字を書く機会が減っているのが現実です。わからない漢字は、変換すればすぐに出てきます。そのせいか、すぐひらがなに逃げてしまい、漢字を覚えることに消極的な子も増えてきたように感じます。そのような子には、あえて漢字を書かせる勉強も大事だと思います。

ただこれに関しては、裏を返せばPCなどを駆使すれば、漢字にこだわらなくても日常生活において困る機会が減ったとも言えます。アスペルガー症候群の子などは例え漢字が苦手であったとしても、見ただけで覚えられるほどの暗記力を持っているなど、他を凌駕する得意な領域を持っているケースが多くあります。それであれば、漢字など気にせずに、能力を活かす方法を考えた方がずっと将来の可能性が広がります。(障害を公表されている有名人が多いのは、得意なことを突き詰めた結果かもしれませんね。)

一番不幸なのが、無知な故に「出来ない子」と決めつけて、子どもの将来の可能性の芽を摘んでしまうことです。何のために漢字を書かせるのか、あるいはなぜ漢字が書けないのか、「あれ?」と思ったら主観を捨てて考えてみる事です。

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mats. このユーザーの他の記事を見る

札幌で教育関連業に携わり15年。子育て・勉強・受験に役立つ記事を、現場目線で更新します。2歳の娘が可愛くて仕方ない、自称イクメン。

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