私がスーパーの店員として勤めていた時、売り場で衝撃的な会話を耳にした。

「ブルボンが一番美味しいわ!」。

二人連れのおばあちゃんの一人が発した言葉だった。

私は多少なりとも味覚に自信を持っていたので、非常に驚いた。あのブルボンが一番? 失礼ながら、田舎の人たちだから味音痴なのか、と思ってしまった。

私も小さい頃からブルボンは家にあったので、よく食べてはいた。しかし、それは母親が買ってきているからであって、自分から欲しいと思ったわけではない。

特に美味しいと思ったこともない。あるから食べる。ただ、それだけ。

なぜ、母親がブルボンをよく買っていたのかも考えたことは無い。

私にとってはその程度の存在でしかなかったブルボンが、なぜ長年に渡って売れ続けているのか。

「一番美味しい!」という言葉を聞いて以来、気になって仕方がなかったので、ブルボンの売り場およびお客さまを観察するようになった。

中高年以上のお客さまのカゴには、「シルベーヌ」や「ルマンド」「ホワイトロリータ」など、昔からの定番品が入っていることが多い。

女子高生から20代の女性は、比較的新しい「プチシリーズ」をよく買っている。

幅広い年齢層の人がブルボンを買っている。私の思っていた以上に売れている。これは、どういうことなのか。

パッケージのデザインやネーミング、価格を他メーカーと比較してみても、優れた点は見つからない。

申し訳ないが、“ダサい”し、“B級”に見える。洗練されているとも言い難い。

そこで、これは食べるしかない、と考えた。

全部というわけにはいかないが、定番品や新しいものも含めて、かなりの種類を食べてみた。

1口食べて、「うわっ、これ美味しい!」とは、残念ながらならない。3口食べて、「まぁ、結構美味しいかな?」。6口7口食べて、「これ美味しいなぁ〜」と、変わっていった。

これは、何を表しているのだろうか。

どれを食べても、新しい感覚の味ではない。どこかで食べたことがあるような味。

つまり、遠い記憶に残っている味なので、食べていて飽きないのである。“安心する味”とでも言うのか。

どうやら、これがブルボンの秘密のようだ。

私は売り場にいたのでわかるのだが、ブルボンの新商品に斬新さは無い。ハッキリ言うと、どれも他メーカーのパクリではないのか、とも思える。実際、良く似た商品は多い。

しかし、流行のものをパクっているのではなく、世の中にある程度定着している商品である。

馴染みのあるお菓子をブルボン風に作った、というだけ。

例えて言うなら、「おふくろの味」のようなものか。

誰もが知っていて、味の予想もつくから、安心して買え、安心して食べられる。そして、食べ続けても飽きない。

それが、ブルボンという存在ではないか。

私は、ブルボンを批判しているのではない。むしろ感心している。

決して一流の会社が取る戦略ではないが、石橋を叩いて、叩いて、叩いて渡る、確かな戦略だと言える。

ここまで徹底すれば、戦略は二流でも、企業としては一流である。

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佐藤きよあき このユーザーの他の記事を見る

1961年兵庫県生まれ。神戸学院大学法学部中退。1981年、広告デザイン会社にコピーライターとして勤務。93年、プランナー・コピーライターとして、フリーランスに。仕事を継続したまま、96年、木のおもちゃ制作を開始。ネット販売に着手。その後、「販売の現場」を知るために、5年間スーパーに勤務。これにより、「メーカー」「販売現場」「広告・販促」のすべてを経験。この経験を生かし、2003年より、中小企業・個人商店向けメールマガジン「繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座」を発行。関連する情報販売、コンサルティングを開始。メールマガジン他、ブログ9本「Marketing Eye」「ビジネス界隈・気づきの視線」「企画する脳細胞・ビジネスの視点」「まちづくり・村おこしの教科書」「行列のできる『MENU』の創り方」「中高年のための新規開業サポート」「独立・起業の成功法則」「販促の知恵袋」「スキルアップでビジネスぶっちぎり!」を執筆中。現在、繁盛戦略コンサルタントおよび中小企業経営研究会のビジネス・カウンセラーとして活動。著書に「0円からできる売れるお店の作り方(彩図社)」がある。

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