最近も「別冊歴史REAL」で新選組特集が出たようだ。友人が購入してコキおろしていたので、試しに書店でざっと立ち読みしてきた。

簡単に言うと、有名著者のほとんどは真新しい文章は存在しない。そりゃそうだ。これはたぶん「名義貸し」ではないかと感じました。つまり新規で書き下ろしてない、という意味です。

実は既刊本の編集が主流

実はこうした名義貸し、あるいは編集部執筆、というムックが最近は多いのが現状なんです。なぜか?そりゃあ、新規で書かせると原稿料が高くなる。高くなれば人件費が嵩む。人件費が嵩めば販売価格に反映させねばならない。こういう意味です。


たとえばすでに多くの新選組本を刊行している作家がいたとする。新規で執筆していただく場合、原稿用紙1枚あたり4,000~5,000円くらいの計算となる(雑誌の場合)。こういうシステムの場合は印税がないので普通です。

これを単純に30枚書いていただいたとします。4,000×30で、単純計算で120,000円かかるんです。ああした雑誌の場合、少なくとも原稿用紙200枚はかかるでしょうから、そう考えると800,000円かかることになります。

それに、原稿のやり取りも必要で、原稿をいただいたあと、校正原稿を著者にチェックしていただき、それを少なくとも2回は行います。時間がかかりますね。

これが名義料だけで済めばどうでしょう。10,000~30,000円くらいで了承を取れば、ひとり頭100,000円くらいが浮きます。著者さんには最終チェックをお願いするところもあれば、すでに出ていた、という名義貸しした作家さん(本人は名義貸しした認識はなかったけど、執筆を依頼され、詳細を待ってたら刊行されて知った、という塩梅でしたが)もおられました。


そして究極は編集部発行というものです。なにせ割り付けたページに文章を嵌めていくだけでよいのです。言い方は悪いのですが、著者に連絡がないことが普通です。編集部の方も編集部で集めた書籍で文章を填めるだけで良いので楽には違いありません。

史料写真にお金がかかる

ああいったムック本の特徴はビジュアルですね。新選組に関する現物は博物館等が所有することも往々にありますが、多くは私設資料館が多く持っております。私設なので、当然掲載使用料がかかります。昭和のおおらかな時代には一度写真を提供すると使い回される、という被害もあったので、一度の使用に対し、使用料がかかります。

これでわかる通り、すでにこうした使用料がかかることから、いちいち作家さんに書き下ろして人件費をかけられない、という訳です。

CGも人それぞれ

最近のムックではCG(コンピューター・グラフィック)を用いた画像解説が多く占めております。言い方を換えれば、デザイナーさんに頼むだけで済むので使用料がかかりません。なおかつ、使用に関するやり取りも要りません。楽ですね。もちろんデザイナーさんに支払う金額は…というと、人それぞれですが、私の近くにいる方でたくさん貰ったという話は聞いておりません。

今後起きるムック本の功罪

このように編集部による刊行物には実際に恐ろしいことが起きております。それは10年くらい前に新発見の史料により新説が出てるのに、平気で旧説で掲載されることです。たとえば、近藤勇が新選組に入る前、経営していた試衛館について、所在地が市谷甲良町にされているからです。

「試衛館」跡の歴史標柱と、稲荷

出典筆写撮影

平成24年(2012)撮影

この試衛館の場所について、『牛込区史』等で、各町の成立が書かれており、武家地であった現市谷甲良町に試衛館があることはおかしい、と筆者がかねて述べていたところ、平成16年(2004)に新宿区によって市谷柳町にあったことが認められ、歴史標柱が建立されました。

当然、以前から本で掲載され、述べられていた場所(市谷甲良町)には田安徳川家医師、吉野元順が医塾を文政年間から明治になるまであったことも確認されたからです。

ところが、ムック本を製作するに当たり、その編集部が入手した本が古いモノであったとしたらどうでしょう。編集部の方もいちいち確認せずに製作しますので、そういう意味で、新たに刊行されたムックに「試衛館は市谷甲良町」と載ってしまう訳です。

学者たちは相手にしない

こうして危険なことが起きる訳ですが、こうしたレベルに学術関係者は批判しないのか、と思うでしょう。実は彼らはこういう本を読みません。あくまでも学説として述べる場合は学術研究誌で発表されたものであり、史料批判されていない書物は参考にすることはあっても引用はしません。ですので、読まないから批判しないのです。

これから読者として知っておくこと

こうした先祖返りしたような文章が掲載されるムックですが、読者として気を付ける点はいくつかあります。それは、

○その論に出典はあるか
○どの本から引用、参考にされているか

これを注意しておくと、参考文献に使用された書籍がいつごろ刊行したのかが、国立国会図書館の蔵書検索で調べることができます。

このように、読者として学ぶなら、こうした細かい注意点を踏まえつつ、購入されてはいかがでしょうか?

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在野の歴史研究家です。主に幕末維新の人物史を中心に研究活動を行っております。

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