さんまの表記が秋刀魚になったのは、佐藤春夫の詩がきっかけ

秋の旬の魚。さんま。漢字で書けばその通り、秋と名の付く「秋刀魚」ですが、
実はこの表記で描かれ出したのは、比較的最近のことなのです。

みなさんは佐藤春夫という詩人をご存知ですか?
実は1964年東京五輪の「オリンピック東京大會賛歌」の作詞者の方でもある、
日本で有数の素晴らしい詩人の方です。
その方の有名な作品に「秋刀魚の歌」というものがあります。
とても繊細でセンチメンタルな描写で歌われたその詩は大ブームとなりました。
今でもその詩は人気が高く、読まれ続けています。

しかし、その詩の中ですら、秋刀魚は題名での表記だけ。
詩、本文では、

ーー男ありて
今日の夕餉に ひとり
さんまを食ひて
涙をながす と。

さんま、さんま
さんま苦いか塩つぱいか。

と、繰り返される「さんま」もすべて平仮名での表記なのはなぜでしょう?

昔から、詩には言葉の響きを持たせるため、漢字をあまり使うな、という考えもあったと言われていますが、実はそれ以外の理由もあるように思われるのです。

当時、佐藤春夫が「秋刀魚」と表記した時、「秋刀魚」はまだ当て字の一種だったのです。
佐藤春夫も「秋」+「刀」+「魚」という風情ある文字の並びに、その表記を選んだのではないでしょうか。


実は、そんなに風情ある表記でなかった「さんま」

昔、さんまは「三馬」もしくはただ単に「馬」とすら表記されていたのです。
実際に夏目漱石も作品において「三馬」と書いています。

何故、馬?と不思議に思いませんか?

少し調べてみると、漁場で競りの際に「さんま!」「さんま!!」と大勢の方が叫んでも、
さ、の響きが弱すぎて「んま!」「んま!!」としか聞こえず、もう「うま!」と言った方が伝わりやすかったせいとも言われているそうです。
また、一尾食べただけでも、三馬力の力が出るから、などという理由もあるとか。

さて、そんな「さんま」は昔は「さんま」とすら呼ばれていなかったのです。

元は「さいら」「さまな」「さわんま」などと呼ばれていたそう。
そして、実はその呼び名のひとつ、「さいら」は
現在のさんまの学名と同じなのです。

さんまの学名は[saira]

学名でもある[saira]と同じよう、ロシア語や英語でも全く同じ読みや似た響きで呼ばれる
国際的な単語である「さいら」

紀伊半島の方言であったとされる「さいら」(佐伊羅魚)から学名は取られたのですね。

これは元は関西の言葉だったと言われています。
京ことばでも「さより」(細魚)などと風情ある優しい響きで呼ばれていました。

さて、では先ほど「さいら」と同じく古くから呼ばれていた「さまな」「さわんま」はどのような由来で呼ばれていたのでしょうか?

「さんま」が「さんま」と呼ばれるまで

「さまな」は挟真魚と書かれ、文字通り狭い=細い=細長い魚という外見的な呼び名であったと推測されています。

「さわんま」の方は大きな群れの意味をもつ「さわ」から来たとの説も有力だそうですが、
私は実は「沢」
昔の水質の良い川を示した言葉から来ているのではないか、と勝手な推測をしています。
国木田独歩の「武蔵野」などでも、ごく普通に「美しい河原」や「水質の良い小さな川」
また「海に注ぐ大きめの川」すらも表した「沢」という言葉。
その言葉に、「おまんま」「ねこまんま」などと使われるやまとことばのひとつである、
「ごはん」「食べ物」を意味する、んま、がついたのではないか、と考えてしまうわけです。
今のところ、私が読んだ様々な資料には「さわんま」の「さわ」を「沢」として水辺関係のものとして捉えていたものはありませんが、
そのような単語があることは見過ごせない事実であると考えます。

「水辺」の代表的な「食べ物」の意味での「さわんま」もあながちあり得るのでは・・なんて。

しかし、「さんま」で落ち着いたのは、やはり呼びやすさが勝ったからではないでしょうか。
バンジョウとも地域によっては呼ばれますが、わからない人にはわからない呼び名です。

覚えやすく、言いやすく、なおかつ勘違いしにくい言葉であったのかもしれません。
実は現在でも、どの方言が本当の由来なのかはハッキリしないモヤモヤしたものなのです。
実は日本語の様々な単語がそうなのですが、最初にそう呼び出したのが誰か、なんて誰にもわかりやしないのですね。
様々な地域で似たように呼ばれ出し、それが広まってあるひとつの呼び方に終着した。
追っても追っても、どこまでも続いてしまうのが言語の由来のようーー。

落語「目黒のさんま」の通りーー殿様も認めた「美味なさんま」

そして最後に、さんまは昔は「魚中の下品(げぼん)なり」とも言われた程、
武士階級など、上流階級の者には嫌われものでした。

しかし、そんな「さんま」も江戸時代中期には庶民の当たり前の食べ物となっていきました。
落語「目黒のさんま」は、ある殿様が鷹狩の際、偶然さんまを口にして、その美味しさを忘れられなくなってしまう、というさんまの美味しさを殿様までも認めたことを、
滑稽な笑い噺としている、愉快な物語です。

そんなさんまは、これから秋が旬。
栄養価もバッチリなさんまを日本人らしく、しっかりと摂って晩夏の暑さも乗り切りましょう!

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