牛丼戦争、ハンバーガー戦争をはじめ、ドーナツやピザ、セルフうどんでも、数多くのライバルがしのぎを削っている。

飲食業界は、まさに戦国時代。熾烈な戦いは、永遠に続くがごとくである。

そんな中、涼しい顔で、周囲の争いを静観している巨大チェーン店がある。

「ケンタッキーフライドチキン(KFC)」である。

価格が高いにも関わらず、熱狂的なファンを獲得し、高度安定飛行を続けている。

価格が高い故に、無理して集客する必要もない。すなわち、「高収益体質」を確立しているのである。薄利多売で集客しなければならない「マクドナルド」とは、大きく違う点である。

では、なぜKFCはこうした安定経営ができるのか。

答えはひとつ。“ライバルがいない”。

ライバルの存在を見聞きしたことがあるだろうか。フライドチキン=KFCではないか。

そこで私は、なぜ市場を独占し続けることができるのかを考察してみた。

・KFCの味を超えることができないのか。
・KFCほどの儲かるシステムが構築できないのか。
・太刀打ちできないほど巨大な存在に、尻込みしているのか。

どうやら、セオリー通りの理由ではなさそうだ。

そこで、仮説を立ててみる。

「鶏唐揚げの存在が、フライドチキン市場の規模を固定化しているのではないか」

“揚げた鶏”を人びとは好むので、食べたい時は、フライドチキンもしくは唐揚げを買う。KFCの店が近くになければ、当然唐揚げを日常的に消費するようになる。

KFCの店があったとしても高いので、特別な日にしか利用せず、普段は唐揚げを食べている。唐揚げなら、スーパーやコンビニなど、どこででも手に入る。価格も安い。最近は、唐揚げ専門店も増えている。

となると、買いやすい唐揚げの方が身近な存在となり、日常的に食べるようになる。日頃から食べていれば、それが好みの味となり、「揚げた鶏=唐揚げ」となってしまう。

フライドチキンは、あくまで“たまに食べるもの”という存在となる。つまり、“慣れ親しんだ味”が、その土地の人にとっては大きな存在となるのである。

もちろん、KFCファンによって、フライドチキンは生き残るだろうが、市場規模としては固定されてしまう。

それだけ、唐揚げ市場が大きく、強力なのである。市場規模が固定されていては、KFCのライバルが進出する余地はない。

私が出したこの結論を検証できる事例がある。

グアテマラ共和国に、KFCが進出した時の話。

この国には、元々フライドチキンを食べる習慣があり、屋台やレストランのメニューにもなっている。地元発祥のチェーン店もあり、国民食となっていた。

そんな市場を見て、KFCはチャンスありと判断したのだが、なぜか早々に撤退することとなる。

その理由は、味である。独特の味つけがあり、その味でなければ、地元民は食べなかったのである。

つまりは、慣れ親しんだ味を提供する、地元のフライドチキン市場が強過ぎ、KFCの入る余地はなかったのである。

食べ慣れた味から脱するのは、勇気のいることである。また、その味を手放したいとも思っていない。だから、KFCは勝てなかったのである。

この例と同じように、日本人は唐揚げが好きで、それを手放してまで、フライドチキンを食べたいとは思わないのである。

グアテマラと少しだけ違うのは、唐揚げとフライドチキンの味の方向性である。方向性が違うので、たまにはフライドチキンを食べたい、となる。

だが、グアテマラでは方向性が同じだったので、KFCが消え去ることとなったのである。

日本では固定された市場規模で生き残り、グアテマラでは敗北したが、どちらも慣れ親しんだ味には勝てなかった、ということである。

こうした理由で、日本のKFCにはライバルが存在しないのではないかと推察している。

……ところが。

2014年7月、渋谷に韓国のフライドチキンチェーン店「BBQ」の直営店がオープンした。世界57ヵ国・地域に約3750店を展開している。

このニュースに驚きはしたが、定着するかどうかは疑問に思っていた。私の仮説が正しければ、定着することはないだろうと踏んでいた。

また、いまの社会情勢から考えると、中国や韓国の店を日本人が積極的に利用するとは思えない。あれほどブームだった、東京・新大久保の韓国レストラン街は、いまや閑古鳥が鳴いているのである。

このタイミングで日本に進出するのは、無謀ではないのか。KFCのライバルにはなれないだろう。

……と、進出当時は予想していたが、その通りとなり、日本法人は本年破産手続きを取り、事業停止となった。

日本のフライドチキン市場は、たった1社である「ケンタッキー」の独占状態。市場規模が拡大しない限り、ライバルの入り込む余地はない。

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1961年兵庫県生まれ。神戸学院大学法学部中退。1981年、広告デザイン会社にコピーライターとして勤務。93年、プランナー・コピーライターとして、フリーランスに。仕事を継続したまま、96年、木のおもちゃ制作を開始。ネット販売に着手。その後、「販売の現場」を知るために、5年間スーパーに勤務。これにより、「メーカー」「販売現場」「広告・販促」のすべてを経験。この経験を生かし、2003年より、中小企業・個人商店向けメールマガジン「繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座」を発行。関連する情報販売、コンサルティングを開始。メールマガジン他、ブログ9本「Marketing Eye」「ビジネス界隈・気づきの視線」「企画する脳細胞・ビジネスの視点」「まちづくり・村おこしの教科書」「行列のできる『MENU』の創り方」「中高年のための新規開業サポート」「独立・起業の成功法則」「販促の知恵袋」「スキルアップでビジネスぶっちぎり!」を執筆中。現在、繁盛戦略コンサルタントおよび中小企業経営研究会のビジネス・カウンセラーとして活動。著書に「0円からできる売れるお店の作り方(彩図社)」がある。

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