2016年7月26日未明に起こった相模原の障害者施設での事件から1か月が経とうとしています。

2015年夏に投稿した「障害児が生まれたら殺してしまおう。そう思っていた男の子が障害児の父となって」という文章がとても多くの方に読まれ、シェアされました。

出典photo;牧師の妻

この文章を書いた大学時代の先輩が、障害者施設の事件について投稿していた文章があります。先輩(現在は牧師)に許可をいただき、紹介させていただきます。

人は何かができないと「価値がない」のか?

違和感を覚えた。

重複障害者は何もできないから生きていても仕方ないという植松容疑者の主張に対し「障害者もいろんなことができますよ」とテレビのコメンテーターが話した。

言わんとしていることは分かる。

しかし実際は身動きも難しい方々がおられるのも事実だ。

ではそういう方に生きている価値はないのか。

私たちは知らず知らずのうちに何かができるから価値があって何かができないと価値がないという価値観に囚われてはいないだろうか。

「わたしの目には、あなたは高価で尊い」という聖書の言葉がある。

神が人に対して言われている言葉で、そこには何かができるできないなどの前提は全くない。

ただただその存在が尊いと言われている。神は人をそのように見てくださっているのだ。

日本の障害者福祉を切り開いた糸賀一雄もこの聖書の言葉に多大な影響を受け、存在そのものが世の光だと訴えた。

「あなたがいる」そこに互いの価値を見いだしていきたい。

出典Facebook

うつになり、「できない」自分はダメな人間だと思っていた

子供がまだ小さかった時、引っ越しをして環境ががらりと変わった時、私は「うつ」になりました。

よっぽど病院へ行こうかと考えましたが、時間の経過とともに症状はなくなっていきました。

「なぜ、うつになったのか?」と考えてみると、「しなければならないことがあるのに、できない」「思い通りにうまくいっていない」「こんなにも、できていない」という思いが襲ってきたからかな、と自分なりに分析しました。


心が「うつ状態」だと、普段は何でもないことに対してすごく時間がかかったり、何より困ったのが「やる気が起きない」ということで、通常の生活レベルのやる気や意欲が全くなくなってしまったために、「通常のこともできない自分」への評価は下がる一方でした。

体が病気というわけでもなかったので、怠けているようで、また人にそう思われていそうな気がして、何とかしようともがく日々でした。


ふと私自身も、この時に「私の価値」というものを自分自身で「何かができる、できない」ということで考えていたのではないか?ということに気づかされました。


本当に「知らず知らずに」囚われていたと思います。


自分自身に対してそう思っているなら、じゃあ「他の人に対してそう思ってはいないだろうか?」と、すごく考えさせられました。


自分がいくら頑張っても「できない」状況を経験した時、私は体に障害はないけれども日常生活に不自由を感じている方の気持ちを考えるきっかけとなりました。


私が病院へ行かずに、自然にうつ状態から快方へ向かったのは、家族の変わらない態度が大きかったと思います。


「お前はできない、ダメなやつだ」と1番思っていたのは自分自身で、家族は何ができても、できなくても、そのまま受け止めてくれたことに、ただただ有り難いと思いました。

「ただ生きてさえいてくれたらいい」

相模原の障害者施設での事件の際、植松容疑者の思想や言葉に絶句するとともに、そのような考えにどう答えたらよいのかと考えさせられました。

「社会の役に立たない人はいなくてもよい。いらない」という植松容疑者の考えに同調するコメントも見られ、今まで隠れていた優生思想の影響を受けている日本の根底にあるものが浮かび上がってきた事件だと感じました。

ふと思い出したことは、東日本大震災の時、ニュースで行方不明の方のご家族が必死にコメントをしていた姿で、「ただ生きてさえいてくれたらいい」と絞り出すように言った言葉です。

普段はいろいろなことに忙しく、いろんなことを気にして煩わされ、大切なことを見失ってしまうほどの生活でも、極限の状態に置かれた時に言われたこのご家族の言葉は心から真実だと思いました。

聖書の中の「どうしても必要なことはわずかです。いや、一つだけです。」というキリストの言葉も思い起こされました。

そして、思わされました。

普段、私たちは「もっと何かをしよう」とか、「もっと、もっと・・・。」と、いつの間にか欲張りになっていなかったか、と。

子供に対してもその通りです。「社会の役に立つ人になってほしい」「頑張ってほしい」「活躍してほしい」など、いろんな思いや願いがあります。

けれど、いろんなものが取り払われた時、やっぱり最後に思うことは「ただ生きてさえいてくれたらいい」ということではないかと思うのです。


「いらない人」という漫画

〝30秒で泣ける漫画〟の作者・吉谷光平の世界という漫画の中に、今回の事件を題材とした「いらない人」という漫画がありました。

「自分」がそこにいないことによる発言

「いらない人が減ってよかったんじゃない?」という発言に対して、短い言葉で「それが君でもいいのか?」「それが家族でもいいのか?」と問いかける作品です。

今回の事件に関して、「植松容疑者の発言には一理ある」「国民としての役割を果たし終えて、若者の迷惑にしかならない老人は安楽死するのが一番いい。」など、障害者についてのみならず、「社会の役に立たない人(と思われるような人)全般」にまで及び、この日本は一体どうなっているんだ?と凍りつく思いがしました。

なぜそのように考え、発言できるのかと考えてみましたが、「もし自分がそういう状況になったら、潔く死にます。」という宣言であるか、「自分は障害者、社会の役に立たない人、社会の役に立たない老人ではない」と思っているか、どちらかかなと思います。

そして、前者はほとんどいないだろうと思っています。もし自分や家族が同じ状況になったとしたら、お金がかかっても、何としてでも「助けてほしい」「生かしてほしい」と願うのではないでしょうか?


多くは「自分は障害者、社会の役に立たない人、社会の役に立たない老人ではない」という考えからくる発言で、そこに「自分」はいません。


植松容疑者にしても、「自分は障害者ではない」という大前提のもと、「本当は自分も事故や怪我などでいつ障害者になるかもわからない」というようなことは微塵も頭になかったような言動です。


「自分」を除外し、そこに「自分はいない」「含まれていない」時の発言がいかに冷淡で残酷なものであるか、人はなかなか気づけないものなのかもしれません。


聖書が教える「人の価値」

聖書では、「神が私たちをオンリーワンの存在として創られ、かけがえのない存在としてみなし、神が愛しておられるから、だから一人一人に価値がある」と教えています。

「優劣」や「何ができるか、できないか」ではなく。

私は自分を育ててくれた両親が、たとえ国民としての役割を果たし終えて、若者の手を借りなければ生活できない老人になっても、「安楽死するのが一番良い」とは思いません。

もちろん介護の大変さ、経済的な負担は起こってくるでしょうけれど、両親は私にとって「かけがえのない存在」だからです。


「かけがえのない存在」とは?

「かけがえのない」とは、無くなったら他に代わりとなるものがない、この上なく大切な、かけがえない、という意味です。

子供のころ、トラの絵のかわいらしいプリントがされたバスタオルをボロボロになるまで肌身離さず持っていました。

母に「そろそろ替えたら?」と言われましたが、私はそのバスタオルをなぜか気に入り、自分のそばにいつも置いていました。どんなにきれいな柄のバスタオルも、新品のバスタオルも、私の「トラのバスタオル」の代わりにはならなかったのです。

肌触りやにおいが、他にはない感じがしたのです。寝る時だけでなく、悲しい時などは、このバスタオルが慰めてくれたように感じたのでした。

見栄えの良さや材質の良さではなく、「私の目に」かけがえのないバスタオルでした。

小さな子供が、お気に入りのぬいぐるみをボロボロになるまで肌身離さず持っていることがありますが、いくら「新しいもの」や他の人から見て「もっと良い物」を提示されても、「私はこれじゃなきゃ、嫌なんだ。」と言います。

冒頭の文章で紹介された聖書の言葉、「わたし(神)の目には、あなたは高価で尊い。」とは、こういう特別な愛情や思い入れを持って私たちを見ていて下さるということです。

それは必ずしも「優秀な人間だから」ということを意味していません。むしろ、どんなにボロボロでも、「キミじゃなきゃダメなんだ」という特別な価値を私たちに見出している、という言葉です。

たしかに、家族でもなければ「いるだけでよい」と思ってくれる人は少ないかもしれません。

けれども誰が否定しようとも、「あなたは高価で尊い」という聖書の言葉に、どれだけの人が救われてきたかわかりません。

「人の価値」を他者との比較や関係性によって相対的に考えていくと、今回の事件のように人の価値をどう考えたらよいかわからなくなり、揺らぎます。

しかし、聖書が教える価値観で考える時、他者との比較や関係性、その人の能力や実績、外見、その他は問われず、揺るがない絶対的な「存在の尊さ」を覚えることができるのです。


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東京基督教大学神学部神学科卒、webライター1級

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