人形を巧みに操り、まるで人間のような芝居を見せてくれる「文楽」。私も一度だけ見たことがあるが、人間以上に情感が伝わってきて、鳥肌が立つほど、引き込まれた。

だが、ほんの一瞬、現実に引き戻される時がある。人形の動きや表情に見入っていると、目の端に人形遣いの顔が入ってくる。これは、まさしく現実。芝居への感情移入が冷めてしまう。

ファンの方なら、その人形遣いの動きや表情なども楽しむのだろうが、馴染みのない人間にとっては、正直に言って興ざめする部分である。せっかく人形の世界に浸っているのに、現実の人間の顔が現れるのだから。

それが伝統なのかもしれないが、一般大衆にもっと見てもらうためには、人形遣いの顔は隠した方が良いように思う。

「嫌なら見なければよい」「伝統は変えられない」という、冷めた正論を振りかざしていては、「文楽」が廃れる一方である。

伝統を守ることばかりに気を取られていては、大阪で起きた「国立文楽劇場・補助金削減問題」へと発展し、消滅の危機ともなる。

伝統あるものは、みんなで守らなければならない。よって、補助金は不可欠である。そんな意見もあるのだが、大衆にまったく馴染みのない伝統では、もはや伝統である意義さえ失ってしまうのではないか。

もっと大衆に知ってもらい、1年に1度でも観る機会があるような“身近な存在”となるべきである。

この問題を機に、文楽協会も積極的に動き出し、やや改善の兆しはあるが、まだまだ先は長い。“身近な存在”となるためには、「文楽」の魅力をさらに磨き上げる必要がある。

私が素朴に感じた「人形遣いの顔を隠す」もそのひとつだが、伝統であっても改革した方が良いのであれば、実践すべきである。

伝統を守るためには、伝統を打ち破る決断も必要なのではないか。

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1961年兵庫県生まれ。神戸学院大学法学部中退。1981年、広告デザイン会社にコピーライターとして勤務。93年、プランナー・コピーライターとして、フリーランスに。仕事を継続したまま、96年、木のおもちゃ制作を開始。ネット販売に着手。その後、「販売の現場」を知るために、5年間スーパーに勤務。これにより、「メーカー」「販売現場」「広告・販促」のすべてを経験。この経験を生かし、2003年より、中小企業・個人商店向けメールマガジン「繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座」を発行。関連する情報販売、コンサルティングを開始。メールマガジン他、ブログ9本「Marketing Eye」「ビジネス界隈・気づきの視線」「企画する脳細胞・ビジネスの視点」「まちづくり・村おこしの教科書」「行列のできる『MENU』の創り方」「中高年のための新規開業サポート」「独立・起業の成功法則」「販促の知恵袋」「スキルアップでビジネスぶっちぎり!」を執筆中。現在、繁盛戦略コンサルタントおよび中小企業経営研究会のビジネス・カウンセラーとして活動。著書に「0円からできる売れるお店の作り方(彩図社)」がある。

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