ルーヴル美術館に展示されている“サモトラケのニケ”

『“ナイキ”命名ゆかりのサモトラケのニケ』Victoire de Samothrace

この像は「ミロのヴィーナス」同様にルーヴルの重要な所蔵品であり、至宝とまでいわれる古代ギリシャ時代の作品「サモトラケのニケ」Victoire de Samothraceです。もちろん、世界の誰もが知る作品であり、紀元前2世紀に完成したのではないかと憶測される古代ギリシャの重要な遺物として注目される作品でもあります。

大理石製で高さは328cmという巨大さもさることながら、ミロのヴィーナス同様に優美なその姿に誰もが魅了されたこと、そして、ギリシャ神話に出てくる勝利の女神ニケを題材にした数少ないものとして大きな関心を呼びました。

像が発見されたのは、1863年、エーゲ海東北のサモトラケ島でフランス領事、シャルル・シャンポワーゾが、パロス島の大理石で作られた女性像の同体の一部を見つけたことに端を発し、彼はそれ以後、周辺を隈なく点検し、この像の主要な部分となっている翼を形成していた断片118点を見つけたのです。

これらのすべてをジグソウパズルよろしく、時間を掛けて復元したところ(ミロのヴィーナスも同じく破片を集めて組み立てられたものですね)、有翼の勝利の女神「ニケの像」であることが判明したのです。そして、1884年にフランスに送られ、ルーヴル美術館に保存されたのですが、1950年には右腕も発見されているのです。でも、美術館側は右腕のないニケ像として現在、多くのファンを持つことから、補修しないまま、腕は現在もルーヴル美術館の地下に保管したままとなっています。

ルーヴル美術館に展示されている“ミロのヴィーナス”

《ナイキ社の社員の一人により命名されたナイキ社。以来世界トップの企業の仲間入り》

ニケ像は、作者は不明、なぜに造られたのかも確かではないのですが、ロドス島のリンドスで発見された船を象った浮き彫りの形態の台座から、彫像はロドス島のものであることが判明しています。そして、その判明からニケ像はコス島など周辺の島と戦った折りの勝利を祝して創られたものであるという説がもっとも強力になりました。その場合、船首に飾るための勝利像として制作したものであり、年代は紀元前200~190年頃ではないかと推測され、今に至っています。ちなみに勝利の女神をギリシャ神話では「ニケ」、ローマ神話では「ヴィクトーリア」と呼ばれ、一般にはこの写真のように有翼の女性の姿で表されます。

この「ニケ」は英語ではナイキ (Nike) と発音されますが、世界でもその名を知られるスポーツ用品メーカーナイキ社の社名はこの女神に由来していることをご存知の方も多いと思います。でも、ナイキ社の流れるような線で描いたロゴマークもこの女神の翼をイメージしてデザインされたことはあまりご存知ないかもしれませんね。

アスリートたちはどのようなレースや大会でも“勝利”するために過酷な戦いを行うわけですから「ナイキ=勝利の女神」を意味するロゴを付けたナイキ社のウエアは心強い味方になり得るのです。会社としてはこれ以上の素晴らしいネーミングは考えられなかったのだと思いますが。実はこの名前を思いついた人はプロではなく、ナイキ社の社員の一人ジェフ・ジョンソンという一介の社員だったのです。彼が夢で見たギリシャ神話の勝利の女神「ニーケー(Nike)」をイメージして、ネーミングしたのです。

そして、神のお告げのごとく彼の夢枕に出てきた“勝利の女神ニケ”は、正に会社にとっては勝利の女神となり、1968年に設立した会社をあっという間に世界のナイキにしたのです。ジェフ・ジョンソン氏が願いを込めて命名したナイキ社は、古代ギリシャの美しき女神“ニケ”に常に見守られ、励まされ、今もアスリートたちと共に気高く生きています。素敵ですね。

《註:文中の歴史や年代などは各街の観光局サイト、取材時に入手したその他の資料、ウィキペディアなど参考にさせて頂いています》

(旅行ジャーナリスト・作家 市川昭子著)

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★旅行ジャーナリストとして長い間、公私共に海外の国々を訪れ取材し滞在。美術館巡りが好きで「ヨーロッパの美術館」など著書も出版。海外ガイドブック30冊以上(フランス、イタリア、イギリス、ベルギー、オランダ、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、ハワイ、アメリカ、香港、韓国、グアム、サイパンなどなど十数カ国のガイドブック)を取材し出版。★小説【あなたが生きた街】を出版。

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