新国立劇場で4年振りに上演され大好評を博しております『ローエングリン』。リヒャルト・ワーグナーのロマン的オペラとして知られた名作を観て参りました。それぞれ40分ずつの休憩を2回はさむ、合計おそよ4時間55分にわたる長時間の上演のためか、ロビーで販売されている軽食類も豊富だったように思います。

語り尽くすことのできない物語

 もしかしたらご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんから、早速あらすじをご紹介したいところではあるのですが、休憩を抜きにしても第1幕:65分・第2幕:85分・第3幕:65分の長丁場。ストーリーもそれだけ濃密なものとなっていると言わざるを得ません。

出典 YouTube

【第1幕】東方からの侵略に備えた兵力要請のためドイツ国王ハインリヒがブラバント公国にやってくると、公国に不和が広がっていた。その訳を国王が尋ねると、ブラバント公の跡取りゴットフリート王子を姉のエルザが殺した、とテルラムント伯が告発する。エルザは無実を訴え、夢に見た騎士が現れて自分を救ってくれるはずだと語る。神明裁判でエルザの代わりに戦う騎士を募ると、白鳥の引く小舟にのった騎士がやってくる。エルザのために遣わされたという美しい騎士は、勝利したら彼女の夫となり国を治めるが、ひとつ約束を守ってほしい、と言う。それは、決して名前や素性を尋ねないこと。エルザは約束を守ると誓う。騎士とテルラムントが戦い、騎士が勝利する。

【第2幕】追放されたテルラムントと彼の妻である魔女オルトルートは、騎士は素性を問われると力を失うと見抜き、復讐に燃える。オルトルートはエルザに、素性を明かさない騎士は突然姿を消すのではないか、と吹き込む。夜が明け、婚礼のため大聖堂へ向かうエルザに、オルトルートは、裁判で騎士が勝ったのは魔法を使ったからだと叫ぶ。騎士はテルラムントに素性を問われるが、エルザ以外に答える必要はないとあしらう。エルザの心は激しく揺れている。

【第3幕】結婚式後、初めて2人だけの甘い時を迎えているが、エルザは愛する人を名前で呼べない辛さを訴え、とうとう騎士に名前を尋ねてしまう。騎士は国王の前で素性を語り出す。彼は、パルジファルの息子で聖杯の騎士、名はローエングリン。素性を知られたからには去らねばならないという。白鳥の引く小舟にローエングリンが乗り、白鳥の首の鎖をはずすと、ゴットフリート王子が現れる。王子は殺されたのではなく、オルトルートの魔法で白鳥にされていたのだ。ローエングリンが去った後、残されたエルザは悲しみのあまり、くずれおちる。

出典 http://www.nntt.jac.go.jp

 公式HPから引用させていただきまして、あらすじとしてはこれ以上ないものだと思いますが、せっかくですので要約いたします。様々に絡みあった人物関係や各々の感情含め、物語のエッセンスを取りこぼしてはおりますが、端的に言うのであれば以下のようになるでしょう。
 ヒロインであるエルザの危機を救ったローエングリンは身分を明かすことができません。それにも関わらず不信感を煽られ禁忌の問いを発してしまったエルザ。素性が知れてしまった以上、聖杯の地に帰らなければならぬローエングリンは国を去っていきます。

重厚な作品を紡ぐ

 ワーグナーというのは、もうそれだけで多くのファンを持つような存在ですが、この公演ではワーグナー第一人者として活躍する新国立劇場オペラ芸術監督:飯守泰次郎氏の指揮をはじめとして、ワーグナー作品をより鮮やかに描くべく豪華なキャストが集まっております。

ハインリヒ国王:アンドレアス・バウアー
ローエングリン:クラウス・フロリアン・フォークト
エルザ・フォン・ブラバント:マヌエラ・ウール
フリードリヒ・フォン・テルラムント:ユルゲン・リン
オルトルート:ペトラ・ラング

王の伝令:萩原潤
ブラバントの貴族Ⅰ:望月哲也
ブラバントの貴族Ⅱ:秋谷直之
ブラバントの貴族Ⅲ:小森輝彦
ブラバントの貴族Ⅳ:妻屋秀和

 じつのところ、タイトルロールを演じるクラウス・フロリアン・フォークト氏は、ハンブルク・フィルの第一ホルン奏者として活躍しながらリューベック音楽大学で声楽を学んだという異色の経歴を持っており、『ローエングリン』2012年公演でも高い評価を得ています。さらに、今回の公演においては、アンドレアス・バウアー氏(ハインリヒ国王)、マヌエラ・ウール氏(エルザ・フォン・ブラバント)、ペトラ・ラング氏(オルトルー)が新国立劇場に初登場するなど、これまでにない『ローエングリン』を観ることができるのではないでしょうか。
 また、演出のマティアス・フォン・シュテークマン氏や衣装のロザリエ氏をはじめとするスタッフたちによって、独特な雰囲気を持つ物語の世界観がつくられているのでしょう。

 此度のようなキャストが次いつ集まることになるのか、それよりもまず次いつ再演されることになるのかも予想できることではありませんし、この作品を観ることができたのはたいへん幸運なことだと感じておりまして、ワーグナーに詳しくはない筆者もそれなりに楽しむことができました。
 そんな『ローエングリン』も本日(4日)が千秋楽となっておりますが、またあの鳴り止むことのない拍手のなかで凝縮された時間を終えていくだろうと思わずにはいられません。

※1:掲載写真はすべて筆者撮影。
※2:キャストは公式HPを参考にさせていただいております。

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