「パンツが見えたからと言って何を興奮することがあるのか。僕にはさっぱりわからない。あんなもの単なる布きれに過ぎない。むしろ履いていない方がいいのではないか」

さも世の中の全てを見通したような僕の冷めた意見を、その友人は真っ向から否定しました。蔑んだ視線で僕を見下すと、呆れ果てたように言い放ちます。

「ばーか。お前、全然わかってない。どうせ今まで可愛い女のパンチラ見た事無いやろ?いっぺん見てみろって。絶対、考え変わる」

やせ細ったひょろ長い体型、極度の近眼で分厚いレンズの眼鏡、金歯が光る口元、黒い学ランに身を固めた、僕とほとんど見た目の特徴が似通った、つまり完全にダサい筈の友人が何故か少しだけ格好よく映りました。

その時、僕は入学したばかりの高校生でした。僕が専ら空想妄想的なファンタジーエロ生徒なら、友人はもろに実践的エロ生徒でした。保健体育の授業で積極的に「生理!月経!」と大声で発言するなど、小学生時代から己を結構エロいと自負してきたのですが、その友人と比べると、エロに捧げる情熱、知識、経験に大きな隔たりがあるようでした。僕は、井の中の蛙に過ぎなかったのです。

パンチラ

周囲をのどかな田んぼに囲まれた土地で育った僕は、近所の神社で野球をしながら、学校でどの女子が一番可愛いか、誰が胸がでかいか、真剣に学友と論じ合う健気で純朴なエロ生徒でしたが、市街地の中心に暮らす友人は中学時代から遊ぶ場所も異なっているようでした。

「ゲーセンに行くやろ。プリクラの機械に短いスカートの女子高生が群がっとるやん?あいつらプリクラに夢中で後ろ全く気にしてないんよ。パンツ、丸見え。見放題。いやいや大丈夫、ばれんばれん」

それアウトじゃないのか、犯罪すれすれ、というか立派な犯罪行為じゃないのか、小心者な僕にはとても出来ない荒業に思えました。コイツすげえ、エロにおけるレベルの違いに大いに驚嘆しました。

休み時間になると、決まって友人は校内の食堂に向かいました。そこの外階段は一段一段に隙間が空いており、下から見上げると、階段を歩く女子生徒のスカートの中がのぞけるということを入学早々に気付いたらしいのです。友人は階段の下に身をひそめ、何気ない風を装って、さっと上へ目を走らせるのです。さすがの嗅覚、目の付け所が違います。

「アイツ、またパンツのぞきに行った」

ただ友人の悪行は直ぐにクラスの女子にバレてしまい、以後三年間、彼は白い目で見続けられる羽目に陥るのです。友人も黙っていたわけでも無く、腹いせのつもりなのか、肉付きの良いクラスメイトの女子が赤いパンチラが覗いたことをあげつらい「レッドバッファロー」というあだ名で呼び、陰ながら秘かに反抗していたようでした。

官能小説

何気に成績優秀だった友人は文才もあり、授業中に自作の小説を執筆していました。無論、内容はエロいやつです。

飛行機の中でスチュワーデスがとんでもないことになる、その描写力はなかなか欲情をそそるものがありました。

「やべえ、勃ってきた…」

そっと回覧されてくる小説を読んだクラスメイトの中には、股間を抑え、もう授業どころでは無くなった者も出てくる始末でした。

顔射

一応、僕らが所属していたクラスは進学コースで、毎日の授業は課外を含めると計9コマと、かなりみっちり詰め込まれたカリキュラムでした。

毎朝、欠かさず10点満点の小テストがあります。

縦に並んだ席順で班が六つ決まっており、班ごとにその小テストの合計点を黒板に記し、最も低い点数だった班には夕方、ペナルティーとして教室及びトイレ清掃が課せられる仕組みでした。ほぼ全員が満点をとるため、一人のちょっとしたスペルミス、漢字の書き間違いが命取りになってしまいます。

清掃になってしまうと帰宅時間が遅れてしまうわけで、つまり班全員で連帯責任を負わされる形です。小テストでミスると、班のみんなに迷惑をかけてしまうので、毎朝の小テスト前はいつも嫌な緊張感に包まれていました。

その朝、採点が終わると或る学友が顔を真っ赤にして班員に謝っていました。

「ごめん!一問ミスった!マジ、ごめん!」

エロい友人は即座に、残忍な口調で反応しました。それは余りに見事な切り返しでした。

「はーい。お前、がんしゃー」

罪と罰。ああ、なんたることでありましょうか。小テストで誤答すると“顔射”という罰が待っているらしいのです。しかし、良く咄嗟にそんなワードが飛び出すものです。あまりに鋭いエロ反射神経です。友人のエロレベルは矢張り僕とはかけ離れている、そう再認識した出来事だったのです。

ヘリコプター

友人は昨晩観たアダルトビデオが余りに衝撃的だったらしく、その日一日中、ぴくぴく小刻みに痙攣していました。

ヘ、ヘリコプターと微かに漏らしています。何のことやらさっぱりわかりません。

話を聞けば、そのビデオの中で、筋骨隆々の男優がヘリコプターと叫び、女優の上でくるくる回転していた、喘ぎ声だしながらも女優は半笑いだった、余りに馬鹿馬鹿しくて腹がよじれるほど笑い転げた、今でも思い出し笑いが止まらない、ということでした。

「でも、女って、あれ気持ちいいんかな」

高校を卒業してから十数年が過ぎ、無事に結婚した友人は、果たして配偶者に一度くらい「ヘリコプター」を試したのかどうか、それは僕の全く与り知らぬところです。

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久留米の爪切り このユーザーの他の記事を見る

男は久留米という砂漠の中の一粒の砂であり、クルマ、金、女に縁がないライター志望の孤独で吝嗇な三十路だった…http://ameblo.jp/kt660cc http://tabelog.com/rvwr/002224433/

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