「住」のお仕事は、時々、自分の人生でさえバクチですか?と思えるような人に出会います。

「歩合給」

私が勤めていた会社では、営業マンさんのお給料は、だいたいは基本給+歩合金でした。

だから成績優秀な営業マンさんでしたら、プラスされる歩合金が多くなります。

そんななかで、完全歩合給で働く営業マンさんも時々というか、まれにというかいてはります。

これは会社の名前を借りただけの、殆どその人個人の個人商店のようなもので、契約成立時の取り分が多い分、もし、その月に一件も契約がとれなければ収入は「0」となってしまいます。

それでも、やりたいという人がたまにいます。
ですが、それは私が見てきた限りですが、なんだか後から思うとですが、自分の人生でさえバクチと考えているように思える人たち だったように思います。


「契約日」

「完全歩合給で働きます」と入社してきた営業マンさんの中でも、この人の結末はあまりにも結果が早すぎて、そして自分の人生が、生き方が、あまりにもバクチすぎていませんか?と言いたくなるような、そんな忘れられない出来事でした。

その人が入って三日目、マンションの売買契約日でした。

この契約は社長が担当していて、本来その人がまとめたものでは無かったのですが、社長が「景気づけやから」と、その人に譲ったのです。

つまり、その人は営業活動を何もせずに、この契約で得る売り上げ折半の権利を手にしたことになります。

勿論、これから頑張ってもらう為の ご祝儀のようなものですから、「おいしい話」ですね…と、みんな内心では思ったのかも知れませんが、誰も何も言いませんでした。

が、しかし、その人はその日一日、会社に現れませんでした。契約の時間が迫る中、慌てた社長がその人の代わりに契約をすることになりました。

そして、その人とは、結局その日一日連絡が取れなかったのです




「なにしてたんや!」

そして、その人と連絡が取れたのは翌日の午後1時過ぎでした。本人からの電話連絡が入ったのです。

その人からの電話を取った私から、受話器を受け取った社長が、「なにしたんや!今すぐ来い」と怒鳴って…。

そして、その人は、それから1時間後に会社に現れました。


その人の弁明はこうです。

契約日の前日、明日は大事な契約日だということで早く寝ようと思った。

だけど風邪気味だったのと、ベッドに入ってもなかなか眠れなかったことで風邪薬を飲んだ後に、お酒を飲んでしまった。

そして気がついたら翌々日の午後だった、と言うのです。


確かに、市販の風邪薬の中には眠気を誘うような強いものもあるとは思います。

その風邪薬にプラスしてお酒を飲めば、丸一日目が覚めなくなることも考えられなくはないのですが、それにしても風邪薬とお酒を一緒に飲むのは、とても危険なことではないのかと思ったのです。



それにこのとき、私はちょっとその人に対してなにか不自然なものを感じていました。

それは、自分が大事な契約の約束をすっぽかしたのだから「すみません」と、その人は謝るのですが、

その姿が、なぜかは分かりませんが、なにか他に隠しているような感じとでもいうのか、とにかく私の目から見て、必要上にオドオドしているように感じられてしまったことと…。

それ以上に、また別のなにか違う違和感をその人から感じたのは、その人の目がなんというのでしょうか、言葉で表現するのはむずかしいのですが、

その人の大きく見開かれた目が、今にも飛びだしてきそうな感じとでもいうのでしょうか、なにか普通ではない違うものを、微妙な嫌悪感のようなものを感じていたからです。


だから、社長とその人の話を横で聞きながら、その人のなにか普通ではないものを感じさせる目を見ながら…、〝それって…、もしかして?〟という言葉が私の頭を過ぎりました。

後で聞くと、社長もこのとき同じ事を思ったのだそうです。



「国選弁護人」

それから三日も経たずに、朝一番で、今度は国選弁護人を名乗る弁護士さんから電話が入りました。

用件を聞くと…。

その人が、今、警察に捕まって留置所にいること

なにかと差し入れ(衣類等)をしなければならないが、その人にはお金がなく、家族(離婚した奥さん)にも「そんな恥ずかしいことをしておいて」と拒否されたこと。

それなら、会社に未払いの歩合金があるから、その人から、そのお金を会社から貰ってきて欲しいと言われた弁護士さんが、この日の朝一番で会社に連絡してきたのでした。

ですが、その歩合金は、売買契約の日に現れなかったその人に、仕事をしなかったその人に渡すことは出来ません。

電話を代わった社長も、歩合金を渡せない理由を説明して断ったのですが、話だけでも聞いて欲しいという弁護士さんの頼みで、翌日、会社で会うことを約束したのでした。



「薬ですか・・」

翌日、約束の時間に弁護士さんは現れました。

そして、弁護士さんの話から分かったことは、

あの日、その人が売買契約の約束の時間に現れなかったのは、その前日の夕方、駅で女子高生に声をかけ誘うと、そのままラブホテルに入り、二人で薬物を使用して、その淫らな行為を録画して、翌日(契約日当日)ネットで動画配信していたのだそうです。

「ネットで動画配信・・・?自分の行為を、」と、これまでにも完全歩合でやってきた営業マンさんのことでは、イロイロと経験のある社長も、内容が内容だけに一瞬その意味が理解出来ずに絶句してしまいました。


趣味で自分が見る分にはある話なのかもしれませんが、何をわざわざ自分の行為をネットで動画配信したのか?と瞬時に疑問に思ったことが弁護士さんに通じたのでしょう。

「彼は、それで、お金を稼いでいたんですよ。それも、なかなかいいお金にかわったようで、まじめに仕事をするのがバカらしくなったんでしょうな。

それに薬物をやりだいたのが、そのきっかけになったみたいですね。

どうやら売人から、その手の動画は金になるということを聞かされたそうです。それに、そのことを知った奥さんは、薬物を止めることが出来ない彼と別れる決心をして家を出たそうです」と言いました。


「はぁ?ちょっと待ってください。つまり楽にお金を稼ぐためにも、止められへん薬物を買うためにも、自分の行為を撮影して配信して、それでお金を稼いでいた・・。

つまりはなんですか?あの日、契約のあった日に、そのネットに動画を配信するのに忙しくて、契約の約束をすっぽかしたというんですか?」と社長がちょっと興奮して弁護士さんに聞くと。


「ええ、どうやらそうらしいです。そのときも薬物をやりながらの作業だったようです」

「ハァ~、これはもう呆れてもの言えませんな。失礼ですが弁護士さん、そんな理由で迷惑かけられて、なんであいつは、歩合金があるなんて図々しいことが言えるんですか?うちに払う義務なんて無いでしょう。反対にこっちが迷惑料を貰いたいくらいや」

と社長が弁護士さんにいうと、

弁護士さんも、

「そうですね。詳しいお話を聞いて、そちらがそう思われるのも無理ありません」と言って帰っていかはりました。



弁護士さんが帰ったあとで、社長が、

「まぁ、なにをしでかしたんかを聞いてから、必要なら幾らかのお金は渡してもええと思っていたけどな。これはあかん、これは洒落にならん。俺も、人を見る目がなくなったな~」と落ち込んでいたのを覚えています。




この営業マンさん、頭が切れ、どこの会社にいっても成績一位の凄腕の営業マンだったのです。


ただ、前に一度その人が、

「この仕事はやればやるだけ お金という形で返ってくる。ついでに女も寄ってる
人生なんてバクチですよ、一か八かの勝負に出て楽しまないと損ですよ、〇〇さん」と私に言ったことを思い出していました。


これは変な話、適切な表現の仕方ではないとは思うのですが、“お金”と“女”で止めておけば、
確かにその人のいうように「人生なんてバクチですよ、一か八かの勝負に出て楽しまないと損ですよ」と言ったとしても、

仕事で成果を出していたのなら周りの人は、「また、言うてるわ~」で笑ってすませてくれたのかもしれません。

その人も、人生を楽しむために仕事を頑張っていたのかもしれません。


ですが、『薬物』は、仕事を失い。家族を失い。信頼を失い…、その人が形になると喜んでいたお金を失い。

そして何より、一番大切な自分自身の人生をも失うことになるのだと、このとき思ったのでした。



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知らないことが知りたくて、メンタル、カルマ、礼法に漢方スクール…etc.とお勉強。で、ですね、人を動かしているのは無意識、でも、この無意識を味方につけるとスゴいんだ~と気づいたら…、なぜか、「えっ?!そうくるかぁ~」と、色んな場面に遭遇しれしまう…という面白いことが起こりだすのでした。

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