昨夜確かに、思いっきり とどめを刺してやったはずなのに、その恐怖心と嫌悪感を紛らすために、あの後 気を落ち着かせようとバーボンを浴びるほど飲んで、殆ど気を失うように酔いつぶれて寝てしまっている間に、ちゃっかりと あの雌はいつの間にか、俺の寝ているベッドの傍で、恥じらいを知らない発情したエイリアンのように、淫らに大きく広げた股をバタつかせて悶え苦しみながら 口から泡を吹いて まだ息をしていた。

確実に仕留めることで、その世界では名を知られていたこの俺も、腕が鈍って とうとう焼きが廻っちまったというのだろうか?
それともまさか 手加減する程、あの雌の虫けらに対して未練でも有ったということなのか?
いやいや、まさかそんなはずはない。
それどころか、あんなに薄汚れて性格の悪い奴に、情けなど掛ける必要も無いし、憐れみを掛けるほどの尊い命のはずも無いだろうに。


こうなったら、一刻も早く もう一度、確実にあの憎々しい雌の息の根を止める為に、何とか始末してやらなければならない。

かといって、ふてぶてしく汚れ切った穢い どどめ色の奴の体に、素手で触りたくもないし、まさか鈍器で思いっきり 奴の頭部を殴りつけて、ぐちゃぐちゃに潰して奴の汚い体液で白い絨毯を汚す訳にもいかず、はてどうしたものかと思っていると、一瞬にして閃いたのが、目の前に置いてあったコロコロで奴の体を絡め取って、それで完全に始末してやろうということに決定した。


その名の通り、油分を身に纏っている奴の体が、はたして上手く くっついてくれるのか、試したことが無いので分からないが、一か八か 迷っている暇など無い。

即座にコロコロを手に取り、バタバタともだえ苦しみながら ブザマなガニ股で脚を広げて床に倒れ込んでいる奴の体目掛けて、一気にコロコロを押し当てる。
一瞬にして、奴の体はコロコロの粘着シートに引っ付いた。
だが、まだ懸命に悶えながら、最大限淫らに広げた股から突き出ている6本の脚が、完全に粘着シートに密着していない。

かろうじて奴の背中の羽が、その粘着力の弱いコロコロの、ほんの僅かな粘着シートの一部分に、奇跡的にくっついている一瞬に、もう二度と俺の前に姿を現さないように処分してやらねばと、不安定にあの雌が引っ付いたままのコロコロを持ったまま、急いでベランダのドアを乱暴に開け放ち、ベランダの手擦りに思いっきりコロコロのハンドル部分をぶつけてやった。


すると奴の汚れきった茶色がかったどどめ色の体は、一瞬にして宙に浮かんで、一気に遥か彼方の地面めがけて落下して行った。
まもなく地面に激突するのを見届けて、やれやれ これで完全にあの雌と縁を切ることが出来たかと安心するのもつかの間、いやまて、まだ後始末が残っている。
奴の屍骸からもぎ取られて残ってしまった何本かの脚の残骸がひっ付いたままの、コロコロの粘着シートを処分するのを忘れるわけにはいかない。

親指と人差し指の爪の先で、奴の死体が付いていた跡の部分と6本の淫らな脚の残骸に触れないように 細心の注意を払いながら、粘着シートの一部分をちぎり捨てて、やっと胸を撫で下ろして安堵の時間を取り戻すことが出来た。


これだから本当にゴキブリは嫌なのだ。
しかも、雌のゴキブリを一匹見つけたら、他にも数十匹から100匹近くも居ると言われている、あの憎っくきチャバネゴキブリの雌だったから、奴の子孫が母親の仇を取りに復讐に来るんじゃないかとますます心配だし、
昨夜散々、奴の体めがけて、殺虫スプレーをかけまくって、殺虫成分でまんべんなくコーティングしてやったのに、朝まで生き長らえて、スヤスヤと何も知らずに無邪気に寝ている俺の隣で 図々しくも泡を吹いて悶えまくっていたとは、油断も隙も有ったもんじゃない。

さっきベランダから突き落としてやった雌のゴキブリは、もう二度と俺の前には表れないだろうが、奴らリアルゴキブリ野郎供との、血で血を洗うような死闘は、これからも延々と繰り広げられ、この先も続いてしまうから、非情のスナイパーと呼ばれたこの俺も、奴らの体に殺虫スプレーを確実に命中させるように、これからも腕を磨いておくことを固く誓う、どんよりと暗く 鈍色に曇った空を眺める金曜日の朝飯前のひと時であった。

( 安心して下さい、これは事実を元に脚色を加えたフィクションです。
危険ですので、良い子は絶対に真似しないでね。)

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