秋風は16歳の少女だ。

再び17歳の天才少年エスの家で冬を越そうと決めた。

押入れの寝床はもう完成してあとは冬を越すばかりになる。


人はそれぞれの接点で繋がっている。


エスの中の秋風・・湯川の知る秋風・・自分自身の中の秋風

兄の中の秋風、母の中の秋風・・父の中の秋風


先生の中の秋風・・


全部違うけど・・総合して自分なのだろうと秋風は思った。


「自分ではなくて例えば秋風だったら?湯川くんだったら?


どうするだろ?と思うと曲が舞い降りてくるんだ」と


エスは炬燵に座って言い、楽譜をおいた。

「つまり自分から逃げてるんじゃないのかね?


エスの自分は曖昧すぎると思うよ!歴史の教科書に


太字で載るとか!アメリカに行くとか!


結局捨て子になったのも誰かを好きになったのも


自分じゃないと思いたいから!頭の中がわけわかんないんじゃないの?


つまりは!親がいるとか嘘ばかりついて脚色してるうちに


本当の自分がわかんないんだと思うよ」と秋風がいうと


エスはいつになく神妙な顔をした。

「そうだよ!僕は実は今生きてることさえ忘れたいんだ!


でも生きてるとどうも腹が減ってね。秋風見てると

食べようと思うんだけど


いないと食べる気がしない」とエスは言った。

それでどんどん痩せて行ったんだな!と秋風は思った。

「わたしは生きてるというか?いつもお腹が減ってるね

死にたいと思ったことはない。だって死体になりたくないし

めんどくさいし。それに今のところわたしが死んでも死体の始末をして

くれる人がいないので」と秋風は笑った。

ふたりで近所のくるまやラーメンに入ると

ラーメン屋の店長がほっとしたように


ふたりをみている。


ゆで卵をサービスしてくれた。


もやしが驚く程、山盛りに入ってる。

「エス!これはサービスだからね。野菜は残さず食べなさい!


たまごもだよ!」秋風が笑うと


ラーメン屋の店長は幸せそうにふたりを見て笑っていた。


「そんなに痩せてどこか?悪いんじゃないの?」と秋風が聞くと

「ううん!この通り元気だ!」とエスは言ったが

お金を払う時に

「おまえよかったな!俺このままこいつたぶん死ぬな!と思ってた」というので


これはこれからエスを助けなければいけないと秋風は思い


再びエスの家に通って夕飯を一緒に食べようと思った。

今までは自分が助けてもらうばかりであったが

初めて秋風がエスを助けるのだ。


この日はエスの同級生の岡田が女を連れて行きたいので

エスの家を貸してくれと言ったらしく

5時にくるというし、でもエスはいない方がいいらしくて

ふたりきりになりたいみたいなので。

エスが押入れに隠れて見てようというが


岡田がくる5時まで2時間あった。


秋風用にオレンジ色のヨットパーカーと赤いジャージがあり


秋風は着る物の心配をする必要がなくなった。


制服は服を選ばないでいいのでとてもラクだったのだ。



炬燵に座ってエスと秋風は勉強したり


楽譜を作ったりギターを弾いたりする。


お互いがお互いを気にすることはなく


時折話をする。お腹が空くと何かを作って食べていた。


「しかし岡田の女も可哀そうだよね?!

岡田はやりたいだけだけど!頭が悪くて気づかないんだよ」と


エスがおもむろに言い

秋風は英文法の問題集を炬燵のテーブルにおいた。

「ふ~ん!あんなガリガリの色白でも

性欲があるんだね」秋風がいうと


「秋風からみて岡田くんはそう見えるの?」とエスが聞くので


「やったら!折れそう!それにあんな案山子の


裸はみたくないよ」と笑うと


「僕は痩せてもかっこいいでしょ?」とエスは本当に嬉しそうに笑い

エスは人の悪口がとても好きだったのだ!


「うん!エスは痩せてもなんか元気があるね」と秋風は笑った。


そろそろ岡田の来る5時になり


エスと秋風は炬燵を出た。


「秋風!パーカーの帽子を被れよ!炬燵を消せ!」とエスはいい


エスは白いパーカーの秋風はオレンジ色のパーカーのフードを被った。


「自分の家なのに!泥棒みたいだね!」秋風はゲラゲラ笑った。


岡田は女の子と部屋でふたりきりに自分の家ではなれないので


エスに家を貸してくれと言ったらしく


この日は出かけていないので


鍵の場所を教えて自由に使っていいよと言ったらしいのだ!


岡田の家もなぜか?都内にあり京浜東北線と山の手線で通っていた。


岡田はエスに最近できた友達で17歳で商社の子供だった。

いつも水色のYシャツを着ている。

母親が華奢で美人なのか?その遺伝子が悪い方向に岡田に出たなと秋風は思った。



「秋風靴をしまえよ!」


エスは張り切って秋風の靴を持って


押入れを開けた。どたばたとしていたが


エスの部屋は冬支度になり


押入れの中はマットと布団があって


暖かく天国だったのだ!

小さい豆電球もエスがつけたばかりだったのだ。


秋風とエスが押入れに入って暫くすると


岡田はカギをがちゃがちゃと開けてエスの家に入ってきて


階段を登った。


エスが自分の部屋だけしか入るなと言ったらしく


岡田は迷わずエスの部屋に入ってきてドアを閉めた。


秋風は早速覗き穴から部屋の様子を伺ったがまだ机しか見えてなかった。


エスは枕を抱き抱えて体操座りでクスクス笑い


張り切って覗いている


秋風の頭をこづいた。


「イテ!!」秋風は声を出さずに言った!


「本当にごめんね!こんな汚い部屋で!」と岡田の声がする


おしゃべりな秋風は


「失礼!自分の部屋じゃねぇし!しかも借りてる部屋だし!

チョー失礼!!」と突っ込みたかったが黙っている。

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