ノスタルジックなモノクロームの映画の中で、美しいメロディーを奏でるピアノの演奏を聴きながら、雰囲気の良い洒落たバーのカウンターで ダンディーなスーツを着こなしたハンサムな紳士が 紫色の煙を漂わせながら、飛びっきり華やかなドレスに身を包んだ美女と愛を語り合っているような、そんなカッコいいシーンに憧れて大学時代から吸い続けた煙草の煙は、今となってはもう嫌悪の対象を通り越して もはや憎しみの対象にまで豹変してしまった。

あの時からもうどれだけの年月が過ぎ去ったのだろう?

それまでは、仲間達にも「もしこの俺が死んだら、仏前に供える線香の代わりにタバコに火をつけて供えてくれ 」と思いきりカッコつけて煙草好きをアピールする程の愛煙家だったのだが、今となっては、もしそんなことをしたら、仏前に煙草を供えたそいつに必ず化けて出て呪ってやると思う程、煙草の匂いと煙に嫌悪感を抱くようになった。

大好きだった嗜好品が、ある時突然 何の理由も無く いきなり嫌いになった訳ではなく、ある時期を境に体調が変わって吸いたくても吸えなくなってしまったのだ。
それまでは、1日だいたい2~3箱、アルコールを飲んだ日の合計は、4~5箱を超える時も有る、いわゆるヘビースモーカーで、吸っていた銘柄もニコチンもタールも含有量が多いほうの煙草だった。

だがしかし、いつの頃からか、煙草を吸っているとだんだん気分が悪くなったり、目の前が真っ白くぼやけてめまいがするようになってきたのだ。
当初は、あまり気にせずに吸い続けていたが、そのうち煙草を吸うと気が遠くなって倒れそうになってきた。とうとう体の不調を心配して医者に相談したが、「そんな状態なら、さっさと禁煙すればいいでしょ。」と鼻で笑われてしまった。もちろん体調の事も、まともに取り合ってくれずに診断結果も特に異状無しとされてしまった。

そんなこんなで、いまだに原因不明のまま、自分で煙草を吸えないばかりか、他人の吸っている煙にも極めて敏感な体質になり、喫煙所や喫煙ルームなどの近くにいる時も、ちょっとでも煙草の匂いがすると、めまいが起きて頭痛がして気分が悪くなってしまう。

今はもう、一切煙草を吸いたいと思うこともないし、吸っている人を羨ましいとも思わないが、体調が変わって好きだった嗜好品が嫌いになってしまうと、当然その嗜好品を利用している者に対しても嫌悪感を抱くようになってくる。
しかも、自分が望まない嫌な匂いを、毎日何の防御もできずに無理矢理、ほぼ強制的に嗅がされていると、その嫌悪感は憎悪感へと昇華されてくるものである。

職場でももちろんだが、安住の場であるはずの自分の家の中にいる時でさえ、窓を開けていなくても、換気扇の隙間や窓の隙間などから、いつの間にか下層階の住人の煙草の匂いがふてぶてしく侵入して我が家の室内空間に居座り続けてしまう。

朝起きると毎日そんな状態で、いつも急いで窓を開け放ち、換気扇を『 強 』にして忌々しいその匂いを追い出すのだが、やっと室内の空気が入れ替わり、綺麗になったと思った矢先に新たに下層階の住人の腐ったゴミと混ざったようなシケモクの不快な臭いが侵入してくる時もある。

以前、付き合っていた女性と『 深呼吸ごっこ ( 二人でキスをしたままお互いの吐息を深呼吸する )』みたいなことをやっていたことがある(2度とそんな気持ちの悪い行為は絶対にしないが)。付き合っている時はそんな馬鹿な行為をしても気にならないが、今は思い出しただけで吐き気がして来る。
まして他人の、胡散臭いジジイや不潔なオッサンの吐き出す、汚れた吐息が無理矢理自分の肺の中に侵入してくることほど不快な気分になることは他にないし、
その汚れきった他人の吐息を、自分の肺胞の細胞一つ一つに付着させて、体内を駆け巡る血中に浸透させられなければならないなんて、想像を絶する迷惑行為である。

現代社会は、煙草の煙に対してなんとか少しづつ嫌煙権が浸透してきて、喫煙者のマナーにも厳しくなってきているので、大いに頼もしいことだが、まだまだこの喫煙に対しては個人の自由だと勘違いして、喫煙の正当性を主張している輩がいるが、そういう人間が毎回煙草を吸うたびに他人の健康を害し、非喫煙者が快適に生活する権利をも著しく侵害していることを喫煙する人間は決して忘れてはならない。

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