「ホスピタリティ」「カスタマーサービス」この二つは接客業においては欠かせない2大要素。日本では「お客様は神様」という思考が一般的ですが、筆者の住むイギリスでは「客を客とも思わない店側」というのが目立ちます。

長年住んでいると「それがイギリス」だと慣れざるを得ないのですが、つい最近全く逆の光景を目にしてとっても印象深かった筆者。「お客様は神様」を見事に曲解した横柄な客が目の前で店主に言った言葉の数々は、筆者と相方の顎を外したほどでした。

ヘアカット。これは長年海外暮らしの女性にとっては現地で避けられないことの一つ。今でこそお気に入りの美容院へ通っていますが、なかなかそんな美容院が見つかりませんでした。

と、いうのもアジア人の髪質を理解できるイギリス人は少なく、技術そのものも全く違うのでいくら注文をつけたところで、納得いくヘアスタイルにしてもらうというのが難しかったのです。

そもそも、イギリスで普通の美容院に勤める美容師は、髪が少なく猫毛のような柔らかい髪質が多いイギリス人向けに技術を習得しているために、日本人美容師がお客さんの髪にレイヤーやシャギーを入れたり髪を軽くしたりというような技術が皆無なのです。

筆者がいくら説明しても「オッケー」と言う割にはその技術が全く反映されていないというようなことが何度もありました。そのヘアサロンは街で一番の技術を誇っているサロンだったのですが、注文通りのヘアスタイルにしてもらえないのでヘアサロンを何度も変わるという経験をした筆者。

どの美容院に行っても結局は同じでした。スタイリストのレベルによって料金が違うという美容院はイギリスでは一般的。しかも美容学校を卒業したばかりのスタイリストさえも料金が高いのです。その割には納得いかないヘアスタイルになるというのはなんだか悔しい。というわけでイギリス系の美容院に行くことを諦めた筆者。

いくらシャンプー台の椅子がマッサージチェアーでも、いくらワインやその他ソフトドリンクを無料で提供してもらっても、本人が納得いくヘアスタイルにならないのならそこに通う意味はないですよね。

どれだけこちらがお金を払う「客」という立場であっても、気に入らないなら他の場所に行くしかない。普通ならそう思うのではないでしょうか。ちなみに筆者、今ではタイ人が経営するサロンに行っていますが、日本の雑誌やヘアカタログなんかもあったりして注文通りのヘアスタイルにしてくれるので助かっています。

ある理髪店での出来事

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相方が用事のついでに近所の理髪店に行くと言うので一緒に入った筆者。男性のヘアカットなんてたかだか10分ほどと思い中で待つことにしたのですが、先に接客されていた男性の店主への態度があまりにも上から目線で驚きました。

正直、いわゆる散髪屋に来る客はあれこれうるさく注文しない人というイメージがありました。イギリスにはオシャレな男性が行く理容室があり、女性と同様スタッフはスタイリストと呼ばれ、キャリアによって料金が違うというシステム。

本当にオシャレな、そして注文が多い男性たちはそういうヘアサロンへ行く人がほとんどなので、たかだか千円ほどの散髪屋に足を運ぶからには「切ってさっぱりできればいい」という人が行く所と思っていた相方と筆者。

店主にダメ出しを続ける客

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ところがこの男性、「ここをもっとこう…」「そうじゃなくて~」とやたら小うるさい客でした。ある程度の注文をつけるというのはわかります。でも、明らかに「散髪屋であれこれつける注文ではないだろ」というような内容で、細かすぎるというか、聞いていて「ならあんた、自分でやれば」と思わず言いたくなるような態度だったのです。

しかも、最期の段階で店主の手からバリカンを奪い「俺がお手本見せるよ。こうするんだよ。」と本当に自分でやり出した男性客。「ほら、こういうやり方したら上手く行くんだよ。わかるかなぁ、俺の言ってること。」と始終上から目線で店主に言及。

そして「いつも俺が言ってる所の方がさぁ、上手いよ。一度アンタもそこに行って散髪の仕方見てみなよ。」と店主に言ったのです。どうやらその男性客は、たまたまこの散髪店に来た客で、いつもは「お気に入り」の店がある様子。とはいえ、いくら一回こっきりの散髪店だからといって店主にその態度はさすがにタブーだろう、と呆れて聞いていた相方と筆者。

キャリア17年の店主に向かってタブー発言をした客

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横柄な上から目線の客に、店主は最後まで「そうですか」「はいはい」と低姿勢でした。最期にトドメとして「うーん、俺、この髪型好きかどうかわかんないや」と不満を漏らした客。

その男性が去ってから、相方が「すごいよね。あそこまでいう客」と言うと「さすがに17年も商売してるからね、他の所へ行って技術を見習った方がいいと言われるのは侮辱だよね。」と苦笑い。

店主はあくまでも冷静でしたが、このやり取りを目の前で見ていた筆者はこういう客もいるのだなと呆れてしまいました。お金を払っているから何を言ってもいいと思っているのでしょうか。学生でもなく、大人の客として店側のホスピタリティをこんな風に歪曲した態度で示すことは人としてとても恥ずかしいことだと、その男性客から学んだ気がしました。

サービスの内容や質が問われる接客業

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接客業に携わった経験のある筆者から言わせてもらえれば、お客さんに対して失礼な態度で接する店員はもはや問題外。店員は店の顔なので店員のサービス一つにより、その店の印象が大きく変わってくるのです。そしてサービスの内容や質も客にとっては大切なもの。

ところが、そんな店側の態度を逆手に取りあぐらを掻いて客という立場を誇張し、上から目線でもの言ったり失礼な態度を取る客は店にとって迷惑な存在でしかないでしょう。散髪店でタブー発言をした客に「そんなに文句つけるなら最初からいつも行っている散髪店に行けばいいじゃないか」と横から口を挟みたくなるほどでした。

結果として、自分の気に入らない髪型にされたとしてもあそこまで言う客も珍しいのではないかと。傍から聞いていた筆者としては「あんたの説明の仕方が悪いんじゃないの⁉」と言いたくなったほど。次に相方がしてもらった時には注文通り綺麗さっぱりに仕上げてもらっていましたから。

結局、店側も客も50/50の立場では?

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「お客様は神様」という思考が浸透してしまっている日本では、店側の低姿勢が著しいほど、それを心地よいサービスと受け取る人もいます。でも結局のところ、サービスはする側と受ける側が半々で接することによってフェアな接客業が生まれるのではと思う筆者。

こういう人対人のやり取りは、決してお金では解決できないもの。このおバカな散髪店の客を前にして「愚かなヒューマニティとはこういうことなのだ」と実感し、こんな客にだけはなりたくないと強く思った筆者でした。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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