現在は、桃色遊戯実践動画や女体の神秘を直截的に表現した画像を、パソコンや携帯端末にて無料で閲覧できる素晴らしい時代なわけで、ありがたいなあ、と米国の方角へ最敬礼、ジョブズやゲイツになんと感謝の言葉を捧げたらよいのかわからぬ程なのですが、その反面、あの日の学生時代、まだ一般家庭にまではインターネットが普及してなかった当時、激しい性的衝動を鎮めるために不可欠だったもの、エロ本、深夜のちょっとエロい番組、それらがもたらして呉れた興奮は二度と味わえない気もするんです。

通学路に落ちていたエロ本は、何故あんなにエロかったのでしょうか…。

エロ本の行方

神社から近い、水を抜いた農業用水路クリーク沿いの叢にて、発見しました。雨ざらしになった表面は波打ち、ざらつく砂埃で茶色く汚れています。端っこが少し張り付いているページを、ぺりぺり音を立てながら、丁寧に且つ大胆にめくっていきます。

「なんや、この乳。めっちゃ垂れ下がっとる。乳輪でかすぎ。牛、やん。うし。げえっ。気色わりい」

隣りで手元を覗きこむ友人は大きな声を張り上げました。僕は中学生で、放課後に友人との帰り道に偶然発見したエロ本、正確には本から切り離されたらしきカラーの数ページ、縄で縛られた全裸女性が苦悶の表情を晒している写真を食い入る様に見つめていました。鼻息荒く胸は高鳴り、僕は一刻も早く、それを通学鞄の中へ仕舞いたくて堪りませんでしたが、友人がいる手前、気恥ずかしさもあるし、周囲に言いふらされる格好のネタを提供する羽目にもなってしまうだろうし、板挟みに葛藤し、僕と友人の間にはお互いを牽制するような雰囲気が漂っていました。

「そんなん、汚いって。捨てろって」

こちらを心底蔑むような友人の冷え切った口調に、僕は断腸の思いで、そのエロ本の残骸を放り投げたのです。友人にはエロ本なんて全然興味ないぜ、とクールに振る舞いました。ただ落ちた場所はしっかり目に焼き付けておきました。

一旦、帰宅した私は制服から着替えますが、高まった動悸は治まることを知らず、頭の中はエロ本に占有されたまま、居ても立っても居られず、取り敢えず誰かと鉢合わせしないように少し時間を置いてから、リュックを背負い自転車に跨り、いざ再び神社へ馳せ参じたのです。

(…あれっ?)

しかし、幾ら目を凝らしても、もう其処にはエロ本は影も形もありませんでした。通学路だからでしょうか。きっと他の部活帰りの生徒が既に持って帰ってしまったのだ、僕は悔やんでも悔やみきれず、近くに別のエロ本が落ちてないか、血走った目で辺りを窺うものの、なんら収穫はありませんでした。あの時、拾っておけば…僕は深い後悔に襲われ、悶々としてその夜はなかなか寝付けませんでした。

数日後。放課後に友人の家に遊びに行った僕は、友人がトイレに立った時、エロいものを隠し持ってないか探ろうと、机のひきだしをそっとあけました。

(あーっ!まさか。…犯人は)

先日のエロ本でした。垂れ下がった乳に大き目な乳輪、間違いありません。全てを悟った僕は裏切られた怒りに燃えていました。戻った友人に詰問します。

「お前、この前のエロ本、机に隠しとろうが!」

「ひ、他人のプライバシーば、勝手に、のぞくなやん!」

お互いに喧嘩慣れしていないため、どうしたらよいかわからなかったものの、何となく胸の辺りをつかみ合い、怒号を発しながら、カーペットの部屋を二人で絡まり転げ回ったのです。熱い、青春の、一ページでした。

直情的な兄、小狡い弟

その夜。両親は旅行に出掛けており不在で、家に残されたのは、長男たる僕と一歳下の弟、それに飼っている犬一匹でした。新聞のラテ欄の最下段、深夜番組の放送枠に目を落とせば、偶然にも、その日はクラスの男子が噂するエロい番組の放送日でした。

当時、家にテレビは一台のみで、それは一階の居間に設置されていて、僕と弟は二階の子供部屋の二段ベッドで寝起きしていました。ただ、この弟が曲者で、僕とは反目しあう険悪な関係がずっと続いていました。

「○○君が兄貴のこと、バスケの授業でどさくさに紛れて女子の身体ばべたべた触りよった、マジできもい、って言ってた」

「兄貴の後に風呂に入ったらお湯の表面に白いのが浮いてた」

いらぬ進言をしやがるのです。全く身に覚えがないとは言い切れないのがもどかしく口惜しいのです。的確に痛いところを突いてくるのです。

その夜「おやすみ」と言って電気を消し、二段ベッドの上へもぐりこんだものの、僕の目は興奮でギンギンに冴えわたり、じっと放送時間が来るのを待っていました。やっと時間になり息を止め、忍び足でおそるおそるベッドの梯子を降りると、どうやら弟は寝ているようでほっと胸を撫で下ろします。足音を立てぬよう細心の注意を払い、一階の居間へ向かいます。

明かりが漏れぬよう毛布を被りテレビを覆って、自分の鼓動が聞こえる緊張感の中、そっと電源ボタンを押しました。そして、遂に待望の番組が始まった瞬間でした。

「カタッ」

突然鳴った音に、びくっと震え、心臓が一瞬止まってしまいます。次の瞬間に、僕は分かってしまいました。それがテレビの下に置かれたビデオデッキが録画を開始した作動音、だってことに。

そう、弟も考えていることは同じだったのです。深夜のエロい番組を視聴する為、僕は眠いのを我慢して起きていたわけですけれども、利口な弟は合理的に録画で済ませ、誰もいない時を見計らってこっそり観るつもりだったのです。方法は違えど、思いは一つである事実に何だか落胆してしまった僕は、番組を観る気が全くしなくなり、堂々と二階の二段ベッドへ引き返しました。

足音に起きたらしい弟が「真夜中になんしよっと。泥棒かもってこわかったやん」なぞ言うのを聞き流し「かまとと野郎が!」と胸の内で罵ったのです。

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男は久留米という砂漠の中の一粒の砂であり、クルマ、金、女に縁がないライター志望の孤独で吝嗇な三十路だった…http://ameblo.jp/kt660cc http://tabelog.com/rvwr/002224433/

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