少々古いCMの動画ですが、ぜひこの動画を見て下さい。二本の松葉杖とスケートボードで行うアクロバティックなパフォーマンス。軽やかでなめらかな動き、まるでそこだけ無重力になっている様な錯覚に陥ってしまう、それがビル・シャノン氏が生み出す世界です。

出典 YouTube

まるで松葉杖がパフォーマンス様の小道具の様に見えてきてしまいますが、シャノン氏はこの松葉杖がないと長時間歩く事はできません。実はシャノン氏は、幼い時のレッグ・カルベ・ペルテス病の後遺症で、5歳の時に変形性股関節症と診断されました。変形性股関節症とは、関節の痛みや機能障がい等の症状が起き、足で自分の体重を支えることも困難になってしまう事もある非炎症性で進行性の病気です。残念ながら現在の医療では症状の進行を遅らせる治療しか出来ない為、完治するのは難しいと言われています。

子供の頃は、まわりの子供達が羨ましかった

1970年に、米テネシー州で生まれたシャノン氏。物心ついた時には、すでに松葉杖での暮らしでした。同じ年頃の子供達が、走り回ったり野球を楽しんだりするのを見て羨ましいと感じるものの、松葉杖では一緒に遊ぶ事は出来ません。けれど、この頃に最初は移動手段として使い始めたスケートボードが、シャノン氏の運命の変化を後押ししてゆくことになるのです。

世の中のダンスブームの中、成長したシャノン氏もやはりダンスに魅了され、1992年にNYに渡り舞台芸術を学びました。そしてNYで本場のダンスやスケボーなどのクラブカルチャーを吸収してゆくうちに「自分は人と同じには出来ない」と思っていた事が自分は、自分にしか出来ない表現をする事ができるんだ!」という気持に変化してゆきます。

それまでは不自由な部分だと思っていた事こそが「自分の個性である」という強い気持ちが生まれたシャノン氏は、その個性を武器に独自のストリートダンスのスタイルを確立してゆきます。それまでは生活の不便さを補填する為に使っていた松葉杖やスケートボードが、今度はシャノン氏の大きな個性となったのです。その独特なパフォーマンスが注目を集めるまでに時間はかかりませんでした。

世界中での公演・シルク・ドゥ・ソレイユの振付も!

動画を見ていただくとわかりますが、シャノン氏の滑らかで軽やか、そして躍動感あふれるその動きは、唯一無二の魅力です。その独自の世界は、NYだけでなく、海外でも話題になり、世界各国でパフォーマンスを機会を得るよう様になりました。そして講演の依頼や、CMへの出演、2001年にはシルク・ドゥ・ソレイユの公演「ヴァレカイ」での松葉杖ダンスの振り付けを任されるまでになります。また、シルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマーとしても参加しました。これは、当時の動画です。少し長めの動画ですが、その素晴らしいパフォーマンスは必見です。

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現在は、片足のないブレイクダンサー・B-Boy Hourth(Jean Sok)さんや、シルク・ド・ソレイユでDergin Tokmakさんなど、プロとして活躍する松葉杖ダンサーがいます。今から20年以上前に、パフォーマーとして、本来の松葉杖の概念を覆したビル・シャノン氏の存在は、今の彼らの活躍の大きな土台となっていると言えるのではないでしょうか。

障がいがあっても無くても、僕らは何だってできるんだ

以前、来日した際にNHKの番組で「パフォーマンスとは?」との質問に答え、シャノン氏は「それは私の生き方。ものの見方。そしてコミュニケーションである」と答えています。障がいのあるパフォーマーは、その部分ばかり注目を集めてしまいがちです。しかしシャノン氏はこう言います。

「特別扱いをされている間はダメなんだ。障がいがあってもなくても、僕らは何だってできるという事を知ってほしいんだ

例えば、このPVに出演したシャノン氏は、自身の障がいについては全くメディアなどで触れていません。音楽のファンでこの動画を見た人たちの多くは、ダンサーが小道具として松葉杖を使っていると思っていました。そして「このダンサーは誰?」と調べて初めて、シャノン氏の障がいの事を知るのです。

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ストリートダンスやスケートボードが流行っていたその時代に生きた事で、それらに魅了され、そしてそのパフォーマンススタイルが確立していったというシャノン氏。そう、自分がやりたい事、好きな事、引き込まれていった事、それらを自分のできる方法で極めていったからこそ、今のシャノン氏がいるのです。とはいえ、松葉杖を使っての表現を見出し、それを自分の体で思い通りに表現するまでには、かなりの努力が必要だったに違いありません。現在も、治療と薬で痛みを抑えながら続けているパフォーマンスだそうですが、表現への思いはますます強くなっているのだそうです。

シャノン氏は言いました。「障がいがあっても無くても、僕らは何だってできるんだ」と。それは、私たちの心にグッとくる言葉です。何かやりたい事がある時、好きな事がある時、自分の中の言い訳を探して諦める事はないでしょうか?「〜だから無理」とか「〜だから、出来ない」などと、自分で出来ない理由にを作り出してはいないでしょうか。自分の本当の可能性を見つける事、その可能性を実らせる事は、あくまでも自分次第なのだという事を、シャノン氏のパフォーマンスは教えてくれている気がします。

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