喫茶店でパートとして働き始めた彼女の、「ちょっと聞いて欲しい、」から始まった話は、「うぅん?ちょっと待て、それって、セクハラじゃないの」と思った出来事。

「酔っ払いの、梅見に行こう」

その日、彼女はいつもの時間。午前10時24分にパート先の喫茶店に着いた。
店には常連の大工さんがひとり来ていて、他に客はいない。

「おはようございます。」と彼女が、喫茶店のママと大工さんに声をかけると、ママが、「智恵ちゃん(仮名)、梅見に行こうやと、梅」と、ちょっとテンション高めの声で彼女に話しかけて来た。

どうもそのときのママの声の高さや、はしゃぎぷりに、なんだか嫌な感じがすると彼女は敏感に感じていた。

そして「梅、見に行こう」とは、何の話かと思った彼女にママが、実は昨日からこの大工さん、若い人や親方と飲んでいたのだという。
今日も仕事が休みで(昨日の酔いが残っていて、仕事にならなかったのか…)大工さんは、朝からビールをいっぱい引っかけて酔っ払っているのだった。

そして、何度も、何度も「梅、見にいかんか~」と言う大工さん。
「智恵ちゃん、梅やと。梅見に行こうって」と、自分が相手をしたくないのか、しつこく彼女を会話にいれようとするママ。

《つまり、昨日から飲んで、お酒が身体に残っているってこと?でも、ここは喫茶店。挽き立てのコーヒーを出すのがメインのお店なんだし。ビールやお酒はあくまでもサブメニュー。それに、私は酔っ払い相手の仕事をする為に、ここに来ているんじゃないし。そんなホステスさんみたいな高い時給を、私は貰っている訳でも無い。》

と、思った彼女は、酔っ払いの大工さんも、しつこく会話にいれようとするママの言葉も作り笑顔で無視して、自分の仕事である。洗い場に積み上げられたカップや皿を、洗い出したのだそうです。


「許せなかった!ひと言」

と、そこに大工さんの親方がやってきた。
そして、この親方が彼女にしつこく「あんた、奥さんか?」と聞いてきた。

この親方も酔っているらしく、もう、ここは喫茶店なのか?お酒を飲ませるのを主としたスナックなのか?という、嫌な感じの空気が店の中を支配していたと彼女は言いました。

うんざりした彼女は、酔っ払いを相手にする気は無かったので、親方のしつこい問いかけには何もこたえず、次々とたまっていた洗い物をしていました。


彼女曰く、「だって、酔っ払いなんて同じことをしつこく言ったり、聞いたり、そのくせ自分が言ったことも、聞いたことも、覚えて無いなんてことなんか、当たり前の人たちでしょ。だから、相手にしないのが一番だと思って自分の仕事をしていたの。そしたら…」

そう、そしたら、酔っているわけでも無い、テンション高いママが、「そうそう、人妻」と、はしゃぎながらいい。

「そうか」と親方が返事すると、そこで終わらせれば、旦那さんがいる人なら、いくら酔っ払いでも、それ以上は誘わない。だから、ママは私のことを「人妻」といったのかな?と彼女は、その瞬間思ったのだそうですが。

なんとママは、テンション高めの笑い声をあげながら、急に「違うよ、独身」と言い。
「独身か~」と親方が言ったら…すかさず。

…次のひと言が、彼女を激怒させたのです。…

「人妻か~」「独身か~」で、納得している酔っ払いに、『違う、違う、バツ3やでぇ~』と「言葉の餌」を与えて、自分はとっとと奥に引っ込んでしまったのです。




驚いたのは彼女、…なんで?そんな嘘をつく!!…

すると「なんな、バツ3なら、遠慮することないな~」と言ったこの酔っ払いの親方は、彼女に向けて、卑猥な言葉を何度も何度もなげかけたのです

その間、ママは奥に引っ込み出てこなかったそうです。

このとき、彼女は…、心の中できっぱりと決めてしまったのです。

「酔っ払いが卑猥なことを言うのは百歩譲って、酔っ払いやから許せるかもしれない。けどね、ママは許せん。『ここは田舎やから、ちょっとしたひと言が、ヘンな噂になるからね。言葉には気をつけているのよ』といいながら、なに!それ。どういうこと。私なら、なにを言われてもいいということ!どうして、そんな嘘をつくおまけに逃げる!もう、頭にきて許せん…と思った。だから、辞める」

因みに彼女は独身。ママより若い。この、ママの雇い主として、それをするか?の行為は、若い彼女への嫉妬か?と一瞬思ってしまった私。
それに、この話を聞いて彼女の怒りはもっともだと思った私。

雇い主なら、同じ女性なら、いくら常連とはいえ、酔っ払いから卑猥なことを従業員が言われていたら庇いませんか?自分が表に出ませんか?
なぜなら、この酔っ払いがもたらすお店の利益の殆どは、彼女では無く、ママのものになるのですから。

それに、彼女は『酔っ払いの相手をする』という条件で働きに来てはいません。賃金に関しても、お酒を飲ませるお店が提示する高額の時給を貰ってはいません。

それより、なにより、この場合。してはいけないでしょうがそんなこと、というような、彼女が酔っ払いの『餌食』になるような言葉を残して、自分はさっさと逃げる。

これは、ありえへん責任者の、無責任な態度では無いですかと私は思ってしまいました。
(ですので私は、このママの無責任な行動は、パワハラもはいっているのではないのか?とも思ってしまったわけです。)


「セクハラとは…」

そして、「ねぇ、それってセクハラじゃないの?」と、私は彼女に言いました。

セクハラ?」と彼女。

「そう、セクハラ。性的いやがらせ。私、セクハラって大きな企業でたくさんの人が働いているところで、異性から受けるものだとばかり思っていたけど。今の話を聞いていて、女性同士にも関わらず、あなたの意に反して性的な言葉を言われ、それをすごく不快に感じた。結果、その不快さは、仕事を辞めるといいだすくらい嫌な思いをさせられたのだから、これはセクハラでしょう。おまけに、これは雇い主。つまりは経営者である喫茶店のママが、立場を利用して「バツ3やで」というを言って、酔っ払いから不快な言葉をあなたに向けて言わせるようにしむけた…とも取れる行為は、セクハラだけや無くて、パワハラも入っているかもしれんよ」と私の言葉に。

「パワハラは分からんけど。確かに、ママのあのひと言は、すっごく不快な気持ちになったわ。もう、お腹の底からむかついた。本気で腹が立った。だから、自分の気持ちを抑えるのに必死で、貝みたいに口を閉ざして無口になったもん」と彼女。



※セクハラとは、相手の意に反した性的な行動等を行い。それに対する対応によって仕事上での不利益を与えたり。就業環境を著しく悪化させること。
また、問題となる性的な部分が、被害者にとって極めて悪質と判断された場合は、一度の言動であってもセクシュアル・ハラスメントにあたること…等々。

一番分かりやすいのは、性的いやがらせをされた側の人間が、した側の人間の行動や言動等を「不快」だと感じたか ということだと思います。


彼女の場合は、ママの発したひと言に「お腹の底からむかついた。本気で腹が立った」=それだけ不快だと瞬時に感じたこと

そして、そのママのひと言が、酔っ払いのいやらしい言葉を誘発したことへの不満がプラスされ(こんな思いは二度したくない。)、もう、仕事を辞めると彼女に決心させたこと。

こうして話をしていくうちに、自分では気がつかなかった彼女の「不快な感情」の正体が、性的いやがらせである、セクハラであったことに気がついた のです。

そして、それは、「仕事を辞める」と決めた彼女は、なにも悪くないことを、悪いのはセクハラをしたママなのだから、人がいなくなって困るだろう…というママ側の都合を考えて、彼女が我慢することは何も無いのだということが、ここではっきりとしたということです。


「よかったわ。話して、話すまではそんなことくらいで…、私の辛抱がたらんのか?私の我が儘か?って自分が悪いのかなって気持ちがぐらついていたけど。もう私、ママに引き留められても気持ちが揺らぐことはないわ」と彼女。

そして、このとき私は初めて気がついたのです。セクハラとは、なにも異性から受けるものがすべてでは無いんだと。

セクハラは、男女のいずれにも起こりうる問題ですが、やはり圧倒的に女性が多いことから、この問題の背景には、男性の性的優越感が深く関係していると言われていたので、セクハラとは、異性から受けるものという認識(固定概念)が私にはありました。が、この出来事は、そうでは無くて、まれではありますが、同性から向けられることもあるのだということを教えてくれたのです。


「自分の身を守るために」

さて、彼女。そのことを(セクハラ)理由に仕事を辞めるのは簡単なのですが、相手は地元に密着している喫茶店のママ。後から、それこそ、あること無いこと言われてセカンドレイプのような格好になるのは避けたい。
(隣近所が知り合いの田舎ですから、人の口にそれこそ戸は立てられない。)

「それに、ママさん。自分も悪いのにそのことは全然言わなくて、いつのまにか相手が100%悪いことになって話しているのを聞いたことが何度かあるから。ここは自分を守る為にも上手に辞めたいといけないんだよ」と彼女は言いました。

「因果応報」

そして、無事に辞めることが決まった彼女。あと残りの1ヵ月を、きちんと仕事に行こうとしていたら「新しい人になれてもらう為に、智恵ちゃんは土日だけ来て」と急に何の相談も無く、ママさんから言われてしまいました。

…また、自分の都合か。…
と、彼女は思ったそうですが、自分は辞める身。文句を言ってここで事を荒立てるより。空いた時間を有効に使いましょうと気持ちを切り替えたのだそうです。

(これまでにも、なんの相談も無く、休みの日を前日に変更してくれと言われたりしていたそうですが。でも、そのときは、ママも頼む人がいなくて困っているのだろうから、助けてあげようという気持ちが強かったそうです。でも、もう、その優しい気持ちは、すでに彼女の心の中から無くなっていました。)


そして、一週間ほど過ぎると…。
「智恵ちゃん。辞めるまでの間の勤務をもとに戻してくれないかしら」と、自分勝手な都合をまたママから言われた彼女。ついでに、辞めるのをやめてくれないか?と言われたそうです。
(どうやら、新しい人は、いきなり当日欠勤が続いたらしいのです。)

それを聞いた彼女は、いい加減に、自分の都合で人の予定を振り回さないで欲しい。
ほんと腹が立つと思ったのだそうですが。もう、この人を、ママを可愛そうだから助けてあげようと思う気持ちは無くなっていたので、「帰って、スケジュール帳を見ないと何ともいえません」と言い。

一旦家に帰ってから、時間をおいて夜遅くに「すみません。先約がありますので、この日一日ならでられますが、他の日は無理です」と連絡をいれたそうです。

そうです。人のことを都合よく使おうとしたママ。自分が酔っ払いと関わりたくないからと、彼女が不快になる嘘の言葉を言って、知らん顔でその場から逃げたママ。

だから、「もう、ママとの間に信頼関係はない」と彼女は言いました。




人は誰でもお互い様。お陰様の心があれば、信頼関係があれば、ちょっと無理をしても、その人を助けてあげよと思います。

でも、自分ばかりが良い思いをしたい…や。自分の欲望だけを通したいという気持ちが形になって現れるセクハラパワハラは、相手との間に心の交流の結果である「信頼関係」を壊すことはあっても、生むことは無いのだと思います。

結果、このママさんは、今、自分を手伝ってくれる人が見つからずに困っているそうです。が、もう、彼女はどんなに時間があっても、ママを助けてあげようとは思わないと言いました。


天に唾を吐けば自分に向けて落ちてきます。因果応報、やったことは帰ってくる。
相手の意に反して、性的いやがらせであるセクハラをしたとしても、そのときは自己満足する結果になるのかもしれませんが、結局は自分に向けて困ることが形を変えてやってくる。おまけに有能な人材を失うことになるのだと思いました。

そして、人が人と(男女の関係無く。人として)仕事をしていく上で、お互いに信頼しあう関係を作り上げていくことが、とても大切なことなのだと思うのです。

そう、彼女に起こった出来事は、「あっ!そういうことなんだよね。人間関係で一番大切なものは、大事にすることは、お互いが信頼しあえるということなんだよね」…と、とても当たり前のことを、でも忘れてしまいがちなことを、「もう一度原点にもどれ」と私に気づかせてくれたのです。

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知らないことが知りたくて、メンタル、カルマ、礼法に漢方スクール…etc.とお勉強。で、ですね、人を動かしているのは無意識、でも、この無意識を味方につけるとスゴいんだ~と気づいたら…、なぜか、「えっ?!そうくるかぁ~」と、色んな場面に遭遇しれしまう…という面白いことが起こりだすのでした。

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