おもてなし

 日本には「おもてなし」という言葉があります。
 お客様に喜んでいただく、ご満足をしていただく接客の心得の一つです。大げさでない小さな贅沢気分を味わっていただく、そんな意味で使われることが多いでしょう。
  それは、モノを提供することだったり、モノではないモノを提供することだったり、様々ですが、どれも私達と常に寄り添っているものと言っていいでしょう。
 しかし、なかなか提供する側にとっては、「相手を満足させること」に常に頭を悩ませることであり、型で収まりきれない不測の事態が起こるリスクがとても多い問題多いことです。

客との温度差

 デフレ、消費税アップなど世の中、消費者にとってはプチ贅沢をするのも勇気がいる今。
 一方、企業はあの手この手で集客を狙い、様々な企画を立ちあげ、また24時間営業などを試みています。しかし、長時間営業でそれに見合った従業員数をそろえたいところが、収支の釣り合いから従業員を採用できずというところが、飲食・小売・サービス業を中心に多いです。
 安ければ客数が増える一方、どうしても目についてしまうのが、店のイメージや接客レベルの低さです。「○○は安いからこんなもんだろう」というのはよく聞きます。
 それは、企業(店)の商品と従業員に格差がなく、客が納得や賛同しているためです。極端な例ですが、一点の最低価格が数万円の高級ブランド品を扱う店で、茶髪の真っ赤なマニュキアのギャル風のため口の販売員がいたらいかがでしょう? 買いますか? 
 一般的に客側は提供する商品と接客がレベル伴わないと、違和感を感じます。フルコースを提供する高級レストランでTシャツで料理を出されるのと同じです。
 これを「客との温度差」と私は呼んでいます。

満足させる接客

 こういうと「お客様は神様です」という意味にとられてしまいそうですが、ここでの「満足」とは、例え欲しい商品が品切れだったり、また購入した商品に不具合などがあった場合の企業側の対応ひとつで、お客様の心を穏やかにさせることです。
 クレームに対して、下請けが外注先の責任をなすりつけるような対応やうるさそうな嫌々事務的な対応されたら、砂粒程度のクレームが岩くらいになってしまう場合もありうるのです。
 その代表が「挨拶」であり「ありがとうございます」であり「申し訳ございません」などのありきたりな一言です。
 そして、そこに添えるのは「心」です。無表情に「ありがとうございました」といわれると「嫌われている」のか「単なる性格」なのか「嫌々仕事をしている」のかといろいろ勘繰りたくなりますし、第一、企業の印象にもつながります。
 「従業員はその企業の顔」ということを忘れていると、利用しているこちらも味気なくせっかく代金を払って手にしたモノにも嫌な思い出しか残りません。しかし、そのモノが残らなくても、お客様の心に残るのは「気遣う」「寄り添う」気持ちです。
 満足させる接客とは、基本中の基本「笑顔」と「言葉遣い」そして、日本らしい「気遣い」です。

マニュアル通りに行かないから面白い

 接客業というのは、天候のように気まぐれです。マニュアルに書いてあり、入社時に教育されても、想像もしなかった事態に遭遇する場合もあります。
 私が経験したことをお話します。あるレストランに勤務していたとき、常連のお客様からある日「ベーコンを料金を払うから1枚追加してほしい」といわれました。今では追加のトッピング料金はメニューに記載されていることが多いですが、当時はどこをみても皆無に近いときです。
 とりあえず注文を受けキッチンに伝え、事務所に走り持ってきたのは「商品原価」の書かれている「価格表」です。そこから「ベーコン」の原価を調べ売価を計算し、追加料金をお客様に恐る恐る提示しました。今、追加料金を掲載しているいろいろなメニューをいくつか見ましたが、ほぼ妥当の価格のようでした。
 これは本当にイレギュラーな出来事です。「できません」と断ってしまえば済むことでしたが、そのお客様が毎週ご来店される常連の方だったということ、あとは上司から怒られたらそれでいいという開き直りもあったかもしれません。
 しかし、その開き直り接客で、お客様が大感激されてしまったこともあります。今となっては懐かしい思い出ですが、その頃が接客の仕方の大転換期でした。

おもてなしの極意~四季折々の世間話~

 日本には四季という言葉があり、それに合わせた季語や挨拶もあります。
 引っ込み思案、何か話したいけれど何を話したらわからないという方に、まずおススメが天候に関することです。「今日は天気イイですね」など。そこにさらに花粉症の季節でしたら「花粉すごく飛んでいそうですよね」など。もちろん言われた側は最初は「え?」という顔をするでしょう。でも、お決まり文句より親身に感じられ、客と従業員という見えない塀を低くする役目をし、また感じのいい印象を与えられます。また、常連のお客様にはもう一歩踏み込んでもいいでしょう。ただし、相手を見極めましょう。
 もう少し高度な方法では、そのお客様の好みを知ることです。そして、その好みが未知の分野で、もし興味があればこういうのが効果的でしょう。
「そのこと、よくわからないのですが、今度ちょっと訊いてもいいですか?」
 プロ野球やJリーグなどのスポーツのファンの場合は、期間中チームの勝敗を知っていれば話のネタになりますので簡単です。これも世間話のひとつです。
 これによって、お客様は自分を覚えていてくれる安心感も起こります。
 とはいえ、私もこの世間話ができない、お客様に話しかけてはいけないという塀を崩すまで長くかかりました。しかし、仕事としてお客様の特色を知り、合わせていく意味で自分も積極的になることで大きく変われることを学びました。

感動できる接客とは~和の心遣い~

 この場合は、接客する側の自己満足ではなく、客の立場から「素晴らしい」と思うことを言います。「客から褒められるためにがんばる」のは良いことですが、それを口にしてしまったら、評価は格段に下がります。また、それを見抜くお客様もいらっしゃるでしょう。しかし、ふとしたことで思わず出た「気遣いの言葉」というのに、裏はないでしょう。「とっさの気遣いの言葉」こそ、相手は感動するのでしょう。
 また「感動の接客」とは接客をしている本人の想いを本人の想像以上に、大袈裟に相手が受け取ってくれたときに起きる、実に偶発的なものが多いです。企業名に寄り掛かった怠慢的な接客に、まず初来店のお客様は見破ります。
 反対に一生懸命でさり気なく寄り添う接客をされると、思わず買ってしまうこともありませんか? 「顧客サービス満足度」というシステムがありますが、私が利用している企業のいくつかは常に上位に入っています。
 接客する側から客側の立場になって、今まで見えなかった、無意識に避けてきたものがわかってくることも多いです。他人の接客をみて「されて嬉しかった」こと、見つけるのも参考になります。
 最後に、客の立場から、外国にはあって日本にはあまり定着していない習慣があります。買物などの金銭授受ですが、日本では「お釣り」や「レシート」ををもらうとき無言で受け取ることが多いと思います。
 でも、私は必ずといっていいほど「ありがとうございます」飲食店では「ごちそうさまでした」と言います。店で買物して自分からも? と思うでしょう。でも、そのモノを受け取るまでには、商品を袋に入れたり、シールを張ったり、飲食店では料理を作ってもらったりと一手間がかかっているはずです。相手は仕事とはいえ、その一手間の心遣いへお礼の一言を伝えるのも自然な流れかもしれません。実際、その一言につまらなそうに仕事をしていたアルバイトの子が驚いて、はにかんだように笑ってくれたこともあります。
 ちょっとした日本人らしい「和の美しく優しい気遣い」。接客に取り入れてみませんか。それで、店の雰囲気も変わり、会社イメージも良くなると思いますよ。

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