民主主義の黄昏(たそがれ)


中国の若い作家でブロガ-の韓寒(ハンハン)がいみじくも指摘しているように民主主義はイデオロギィーというより(行政の一手段)ツールに過ぎない、大工道具の鋸や鉋、左官のコテなどと同様、使っているうちに癖で右に左に傾き・・民主主義もそんな風で、使い手の遣い勝手で、アメリカでも日本でも、変な具合に変形しているのは、もはや隠せない事実ということです。

政権の交替はあっても政治家の交代が少なくなり、同じ顔ぶれ(同族)が何十年も政治を寡占しているのは周知の通りです。中央政治も勿論ですが、地方政治ではその傾向が一層甚だしく、市長や市議会議員の無投票当選が繰り返されているところは珍しくなく、民主主義の基本である投票権を奪われている観すらあるのです。地方居住者ならたいてい知っていることです。市町村長やその議会議員が選挙を行わず何期も居座っているのは信じ難いことながら事実です。新人の立候補を阻止する(金銭で立候補辞退させる)仕組みさえあるのではないかと疑われています。従って地方政治では人材の流動性が滞り、権力の寡占が数十年に及ぶことも少なくないのです。

アメリカでも同様で、大統領の顔ぶれもクリントン家やブッシュ家の員数がいまだに重複し、上下両院議員の顔ぶれも然りで、一族のリレーが繰り返されているといわれる所以です。

日本もアメリカも民主主義の衰えは明らかで、国会議員の多くが議員バッチを親から子へ、配偶者へ、兄弟姉妹へと選挙区つきで譲渡され、未熟であっても必ず当選して、能力に関わりなく重要な国政の地位に居座っているのです。

民主主義国家の政治は寡占されていて、本来の民主主義との解離は大きいのです。そして、本当の問題は、この状況を変えることが誰にも出来ないということです、自由平等を謳う民主主義のパラドックス、といわれる所以です。

その昔、アメリカのペンシルベニア州ゲティスバークで宣言された民主主義の理念、人民の人民による人民のための・・・という文言から大きく外れたものになっているのです。民主主義の行き着く先は・・よくて、シンガポールのリークアンユーが創設した独裁体制民主主義もどき・・

中国が法治国家を目指し(現にそのように宣言している)、加えて言論の自由が許容されるなら、あるいは(韓寒の言うように)現今の民主主義国家より優れた政治体制をつくることが出来るかも知れません。

韓寒とは中国の若者のオピニオン・リーダーで、作家で3億人がフォローするブロガー、と紹介されている、新興国に特有の俊英です。今年ようやく30歳で鋭い中国政府批判も多く、言論は常に綱渡り状態、それゆえに面白く、今の中国の若者たちの思考も垣間見えるので以下に〔少しだけ〕彼のブログに述べられた主張を紹介してみたいと思います。

中国が民主化するために:

「仮に中国がそうしたいと思って、完全に民主的な、正真正銘公平な選挙をやったとしても、勝つのは共産党だよ、今の中国で共産党以上に金のあるやつなんていないから」(民主主義は金)

「そう、民主主義は先進国の高尚な制度などではなく、単純に私利私欲の衝突を調停するためのツールと思えばいいのだ、今中国では利益集団同士の衝突が激化している、去年は18万件の群集事件(デモ、ストライキ、暴動など)が起きている。その対応に治安維持費が5500億元と、軍事費なみのコストが掛かっている、それでも利害関係の衝突を押さえ込むことすら出来ていない。そこで、安くて便利なツール、民主主義の導入を推薦したい。民主主義を導入すればいろんな群集事件は、そもそも発生しない」(発生しているが)

韓寒〔ハンハン〕は民主主義を知らない国の知らない世代の若者ですが、西側民主主義を横目に揶揄しているのです。一昔前の(天安門事件の頃の)学生運動では理想とされた民主主義も、今では共産主義同様(中国でも)色褪せて見えるのです。

一昨年、中国で世界の注目を集めた事件がありました。広東省の一農村で共産党地方支部の職員を村民が集団で追出し、農民の自治組織を設立、しかし数日後、武装警官に取り囲まれたという事件です。末端行政を支配してきた村役人(共産党員)が勝手に村の土地を企業に売り飛ばし収益を得たというのが発端だったそうです。全国津々浦々に同様の問題はあり、共産党中央の頭痛の種でもあったのです。

広東省の問題解決には紆余曲折があって、その後解決したそうですが、どう解決したのかは不明です。しかしその後、共産党の末端組織に民主選挙を導入する話が持ち上がっていたそうで(嘘か真か)、それが実現すれば村役人の横暴が一気に抑制されること必定です。韓寒のいう民主主義がツールとして役立つことになるのです。


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まじ 東風 このユーザーの他の記事を見る

八ヶ岳南麓に隠棲。世事にまだ興味深々。

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