現在開催中のリオオリンピックの男子体操に、出場した白井健三。今年3月に書いたこの記事を読み直し、改めてその哲学の神髄を実感した。「普段どおりでは勝てない。試合ではとてつもない力を発揮するものだ。」と思い込むことで、負けることを怖がらず、新しい技に果敢にチャレンジ。ゆかで負けたことを素直に認めることで、結果的にこれまで以上の力を発揮したようだ。卓球の3人娘にしても、ドイツ戦での負けを素直に認め、シンガポール戦を戦った。「負けるのは嫌いではない、ただ勝つことの方が好きなだけ」という白井の言葉を、リフレインしながら観戦していると「負けてもいいけど、勝たせたい」という思いが募っていく。負けても誰も恨まず、やっかみもせず、自分自身に反省を促すこの言葉を胸に、これからも人生を乗り切りたい。

▮松岡修三が白井健三に本気でインタビュー

2016/2/22テレビ朝日の報道ステーションにて、テニスの松岡修三が体操の白井健三にインタビューした。新しい技に選手の名前がついた、という話は聞いたことがありますが、体操にはあまり縁がなかったので、それが誰のことだかよく知りませんでした。それにしてもこの男、19歳にしてこのような考え方をできるとは。ただただ驚くばかりです。

Twitterにて「ありのままこ」さん、なかなか鋭い見方をしています。

▮そもそも、シライ3って、どんな技?

男子体操のゆか演技では、「リ・ジョンソン(後方抱え込み2回宙返り3回ひねり)」というG難度の技があります。リ・ジョンソンは、足を抱え込むのですが、白井はこれを伸身(足を伸ばす)で飛ぶんです。「シライ3」とは「伸身後方2回宙返り3回ひねり」(H難度)のこと。すっごいですねー。

出典 YouTube

▮ビジネスにも通ずる白井の信条

通常、勝負をかけた大事な試合や、人前でのスピーチは、緊張して上がってしまうもの。しかし、白井は試合で緊張しているようにはみえません。そもそも緊張しないようなんですね。私自身が感じたその要因を、インタビューの中から三つほど選んでみました。

★毎日同じ練習をするのだから出来て当たり前

白井は、2014年の体操世界選手権の「ゆか」での連覇を逃した。理由はいろいろあるだろうけど、今回のインタビューで印象に残ったのは、「他の選手と同じことをしていては、勝てないことを学んだ」ということ。

2014年の選手権に向けて白井は、前年度に披露した高難度のリ・ジョンソン(後方抱え込み2回宙返り3回ひねり)を練習メニューに加えていた。しかし試合では、他の選手も高難度の大技で挑んでくることはわかりきっていること。加えて、白井は「毎日、練習しているんだから、リ・ジョンソンはできて当たり前。出来て当たり前のことで勝負しても、モチベーションは上がらないでしょう。」という。

「だから、誰もできない高度な技を披露しなければならない。」と続けます。

そこで、リ・ジョンソン「伸身後方2回宙返り3回ひねり」(後のシライ3)という大技を編み出し、そしてこれをいかに成功させるかに集中したわけです。

★試合は最大の能力を発揮する絶好の場

試合というものは、緊張から解放させるため「普段どおりの力を出せ」と一般的には言われています。しかし「試合というは、普段出せない力を発揮する場」という白井の言葉は、妙に説得力があります。

先日の青梅マラソン(正式にはロードレース)で、無事完走しましたが、普段の練習はせいぜい5kmか10kmを走る程度。そもそも走るのは苦手なことから「もうこのくらいでいいかな」と、適当なところで練習を終えてしまいます。

しかし、実際のレースでは、会場の雰囲気や応援とともに、周りのランナーの「やる気」パワーが大きく影響することから、テンションがあがり思わぬ力が湧き出てくるようです。私自身、緊張する場面では、普段以上にでてくる潜在的能力に期待しています。開き直りとでもいうのでしょうか。

ビジネスにおいても、緊張する場面では、普段どおりにやればいいと考えるよりも、最大の能力が発揮される場と信じ込む方がいい。そうすると「どこで、その能力をアピールするか」といった全体を俯瞰する余裕が生まれる。全体が見えるようになると、些細なことにこころを奪われることが無くなってくるんですね。自分自身の意識も変わってくることでしょう。

★負けから多くのことを学ぶ でもやはり勝つのが好き

白井健三は「自分は負けず嫌いではなく、勝ち好きなんです。」と語っていましたが、この「勝ち好き」という表現が、とても印象的でした。

「報道ステーション」松岡修造コーナー白井健三編にて、白井は自分の性格を分析する。 
勝ち好き。負けず嫌いという言葉があるけど、満足できる内容なら負けてもいい。負けから教わることがある。負けが悪いものだと思わない。勝ちたい欲は人一倍強い。

負けず嫌いとは、負けることが嫌いなこと。優勝するものと考えていた2014年の体操世界選手権。ここで負けたことが白井自身を成長させたようです。負けることで多くのことを学べることを知る白井は、負けることを嫌ってはいません

▮負けることは決して悪いことではない

スキージャンプ男子の葛西紀明(43)
負けることを大事にしている」という。悔しさを感じ、勝利への執念を再確認して気力を奮い立たせる。(20160318読売新聞)

レスリング女子の伊調馨(31)は、今年の初めの海外遠征で13年ぶりに負けた。
「初心に戻ろうと思います。いい勉強をさせてもらいました。これを糧にしたい。負けた方がいいんですよ。」と極めて前向き。(20160318読売新聞)

白井を含め、三者ともに素直に「負け」を認めています。「負ける」ことによって、新たな成長を見込むことができるようです。

▮話のまとめ:白井健三らしさを感ずる言葉

●難度の高い技は、練習を積んでいるので できて当たり前
●普段どおりの力を発揮して勝っても、面白くもなんともない
●試合というものは、普段みられない特別な能力を発揮できる場
●試合での負けを恐れない。負けから学ぶことは多い。でも勝つのが好き
●試合は新しい技をアピールする場


「負けてもいいけど、勝つのが好き。」という言葉は、シンプルでいい響きですね。

▮追伸:マラソンレースで試してみた

先日、練馬区で開催された「練馬こぶしハーフマラソン」。若い頃より柔道をやってきたことから、偏平足、ガニ股の体形。走ることはとても苦手。昨年末、初めてのフルマラソンとして富士山マラソンに挑戦しました。少し目標が高すぎたのもありますが、完敗(完走できなかった)したことから、練習に対する意識が変わりました。練習の目標距離が、フルマラソンになったんです。

面白いことに、普段の練習の距離が10kmから15km、場合によっては20kmが目標距離になったんですね。こうなると「練習を積んでいるので できて当たり前」と意識がかわり、ハーフマラソンを走れるのは当たり前という気持ちになったというわけです。

「練馬こぶしハーフマラソン」は、午前8:00がスタート時間。スタート直後は身体を温めるため、ペースを落として走るようにしています。しかし、今回は周りの雰囲気にも巻き込まれたのでしょうか、私にとってみればえらいハイペース。この調子だと後半は持たないんですが、今回は全く問題なし。

沿道からの応援は、濃度の違いこそあれ21kmくまなく続きます。結局、ハイテンション、ハイペースで走り抜きました。

レースが練習の場でもあるという、非実業団で市民ランナーの星:川内優輝(埼玉県庁職員)がぶっちぎりで優勝。試合は「特別な能力を発揮できる場」ということを大いに実感した次第です。

出典Yuji Hasebe

●満開の桜の中を走る爽快感はなんともいえません

最後は、光が丘公園の桜を鑑賞しつつ走りましたが、これまでの自分の記録を大幅に更新。自分に勝ったんです。一般的に「勝つ」というのは、人との競争に勝つことを表す「相対的な考え方」で、自分に勝つというのは、自分という変わらぬ指標に対する「絶対的な考え方」であるように思います。「時には自分に負けてもいい、負けから学ぶことは、たくさんあるから」と考えると、気が楽になりますね。

といいつつも、「勝つのが好き」。レベルの違いはあるものの、やっぱり勝つというのはいいものです。

この記事を書いたユーザー

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス