・・・風景描写をする青年がアメリカの地方都市に居住しているとテレビで紹介されたことがあります。建物が林立する街の景色をを走る電車の中から眺め、目に映った全てを記憶して自宅に戻り、翌日鉛筆で巻紙式のロールペーパーにスケッチするというものです。建物の配列や樹木、交差する車両、煙突や特徴のある警察署などまで詳細を極め、一点の誤りもなく数メートルの用紙に活写するというものです。高低様々な建物、その窓の形状、細部に至る写生は後に写真照合されてその精緻さは証明されているということです。不可思議ですが、もしかしたら、人間誰にでもある秘められた能力なのかも知れません。 

数学者の藤原正彦さんが日本にも紹介しているインドの天才数学者、ラマヌジャンの事例は世界的に有名でご存知の方も多いと思います。南インドの貧しい家庭で育ち、高校卒業程度の教育を終えて、地方役所の事務員をしながら独学で高等数学を(理解)し、さらに自己発展して高等数学の新領域に踏み入り、新しい定理や公式、無限級数などといった複雑な数式を、三十二才で他界するまでの短い生涯に、三千以上も作ってみせ、欧米の数学界を驚倒させたという、今も語り草になっている人物です。

遠い昔から天才は百年に一度、千年に一度、必ず世に現れて偉業をなしているという説があります。ピラミッドの建築は高度な数学力が不可欠で、それを設計し石材を切り出し、
運搬し積み上げて構築した技量は天才の存在を髣髴とさせるものです。現代人の科学力をもっても容易にはリプロデュース出来るものではないからです。

アフリカ大陸と、背中合わせの南米の、ペルーの古代遺跡は神秘のベールに包まれています。なかんずくクスコ周辺はマチュピチュやナスカの地上絵が観光名所ですが、それ以上に神秘的なのは、実は現代の先端技術でも解明出来ないと言われているクスコの街の土台石、礎石群です。スペイン人の教会やその他の建築物の全てはその礎石群の上に建っていて、それは巨大な石組みの構造物なのです。

インカの建築物をことごとく破壊したスペイン人も、これらの礎石の堅牢優美さには魅了されて一箇所も壊すことはしなかったと言われています。その当時の先進国、スペイン人達の目にも、その石組みの非凡な技術は見て取ることが出来て、破壊することはなかったのでしょう。それは現在でも理解し難い精密な石組みで、様々な形状と大きさの(数十トンに及ぶ)巨石の接合面をヤスリを掛けたような緻密さで重ねてあるのです。溶接されたようだ、と感想を述べる観光客も少なくないそうです。

数十トンの巨石を数百個並べて数段積み上げ、それらを一ミリの誤差もなくピッタリと組み合わせているのです。ジグソーパズルのような自在な形の凹凸のある石も多くそれぞれの石の組み合わせは優美ともいえる完成度で、仮に手仕事だとすると途方もない手間ひまを掛けたことになります正四角形・長方形で積み上げる容易さを捨てて、あえて凹凸形を選び、それをピタリと組み合わせる高度な技術、どこにそこまで過剰に精密に作る必要性、必然性があったのか、現代人は理解に苦しむことになります。

標高4000米の市街地クスコから、バスでさらに一時間ほど上に登ったところにサクサイワマン遺跡という、インカ文明より遥かに古いとも言われている年代不詳の巨石長壁が大地にわだかまっています。観光名所のひとつです。巨大石組の中には百トンを越える切石もあると言います。この城壁跡のような巨石の石組み一個も一辺が5メートルを越えるものが多く、方形でありながらわざとのように窪みや凹凸をつけて組み合わせているのがクスコ市街地の礎石群を思わせ、おそらく同時代のものと思われています。溶接したかのような石組みの密着度も共通したものです。丹念に時間を掛けて注意深く調べても、石組みのどこにも隙間を見つけることは出来ません。それを剃刀の刃も通らない、と現地のツアーガイドは誇らしげに解説します。

さらに驚くことは、その石材の供出先の石切り場が深い谷を挟んだ遥か向こうの尾根に見えているということです。そこからどのようにして数十トンから百トン超の巨石をこのストンウオール(石壁)の現場に運び上げたか、それにはいまでも誰にも答えることが出来ない謎なのです。

人類の足跡には、いつもどこかに古代の天才の出現を思わせるものがあるようです。超能力ともいえる力が人類史のところどころに現れ、明らかな痕跡を残しているかに見えるのです。人類の文明も文化も、技術も科学も、刻苦勉励と試行錯誤で進歩を続けている反面、歴史の要所要所では途方もない天才の出現で、天狗飛びのような跳躍をしている痕跡を目にしない訳にはいかないようです。そんな痕跡がいたるところに残っているのです。

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まじ 東風 このユーザーの他の記事を見る

八ヶ岳南麓に隠棲。世事にまだ興味深々。

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