秋風は16歳の少女だ。


学園祭を終え、もうすぐ交際相手湯川の学園祭を迎える。


思えば夏休みからいろいろな事があったと秋風は思った。


17歳の天才少年エスの作った英語の楽曲を


学園祭なのでエスの学友が演奏する。


8月中旬のヤマハの大会はエスの地元の友達が歌ったが


今度はエスが曲を贈った湯川が歌う。



エスが親友湯川に捧げた初恋が実る歌だった。


歌詞に出てくる she は自分だと秋風はなんとなくわかっていたが


自分の事を客観的に捉える所があり、すべてにおいてもう一人の自分が冷静に


もう一人の自分を見ている。


二つの人格が存在するシルバーウルフの少女だった。


それゆえ秋風は実は何も受け入れていない少女だったのだ。


すべて!架空の話のように秋風には現実が流れている。


エスも佐々木も石原も湯川も今まであった事はなんて事ないように


10月末の学園祭を迎える。人はみな争った些細な事など忘れて


自分自身の解釈で自分自身に決着をつけて生きていると秋風は思った。


みんなが笑っている。顔色がとてもよい。


秋風は幼い時に一人で埋もれていたレンゲ草畑を思い出していた。


笑顔に埋もれるとはそういう事なのだ。


秋風の周りには音のない静かなレンゲ草の香りした。


「秋風?立って寝るなよ!危ないよ」そういう佐々木の声で目が覚める。

佐々木はギターがなかなか似合う洒落た秀才で

秋風の通う女子高校生に人気があったが人気があるだけで誰とも付き合わなかった。

途中でなんでもやめるので付き合う前にやめるのだ。

しかし佐々木は母親の話だけはやめない母親思いのひとりっ子だった。


秋風はレンゲ草の中で微睡んだように


思わず4人の少年の笑い声の中で立ったまま寝る時がよくあったので

間の話が飛んでいる事がよくあった。

ベースが下手クソで話にならないとエスに言われた石原は


医者になっても、外科医は無理だとエスに言われていたが

そんな学年5位の石原は音楽を特に好きなわけではないが


悔しさの余りに練習を重ねとてもうまくなっていた。


秀才は天才が気になるのでぶつかり合いながらも共存し

お互いを否定しつつも自分にない物を取り入れて生きている。




エスが以前に漫画に描いていた頃の様に四人は和気藹々としている。


とても幸せそうな石原の笑顔の側になぜか秋風はいる。

交際相手の湯川がエスととても幸せそうだったのだ。

破天荒ゆえ天才に軍配があがる場合が多い。




秋風はこの調子で人間の内臓もうまく切って名外科医に

なるといいなと石原の事を思ったが脳神経は無理だとなんとなくわかっていた。



人というのは成績がよいだけではどうにもならない事があるが

成績が悪ければすべてどうにもならないと秋風は思う。



そこにいるすべての青年を尊敬していたが

新しくドラムで加わった髭の生えた銀行員の息子は

どういうわけか?好きにはならなかった。


四人は県境に住んでいて放物線を描くように同じ土地に住んでいたが


髭の白井は久喜に住んでいたのだ。


県境の少年はどことなくかわい~顔をしていた。


秋風の思想は帰納法でできている。



秋風は可愛さが好きな少女だったのだ。


事あるごとにかわい~というので

少年4人はどんどん可愛く成長し母親や姉・妹を喜ばせた。



エスと秋風の交換日記は



今日は東長崎の叔母さんの家に行って夕飯を食べたなど

普通の日記になった。

しかしエスの交際相手の加奈子の記述がない。

万葉集を一句

英語のフレーズをひとつ

日常が記されていて

句読点がなかったため読みづらくそれでも


何を書いたのか?秋風は考える事が好きだった。

理解できない物を解読する事が好きで

手紙が好きだったのだ。

その解釈が人と少し離れていることにイラ立っていた。


秋風には根底に流れる状況を把握する力があったが

それを共有できて共鳴できる人間になかなか出会えなかったのだ。

いつもエスといるのはなんとなく共鳴できていることに

秋風は気づいていなかった。

ただ漠然とこの人にはここはわからないだろうなと思うのだ。


長崎は今日も雨ですが東長崎は今日も晴れています。


エスは親はいないがよく父親の妹の家に行くようになった。

秋風が日常の半分を伯父の家で過ごすので思いつぃたのだ。


「エス!わたしは自衛隊の官舎では家庭料理を食べてるんだよ!!」

秋風がいうとエスは叔母の家で食べたオムライスの話や


煮物など!手料理を食べた話を交換日記に書いて来たのだ。




「東長崎は今日も晴れだった?って東長崎ってどこよ!?」

秋風がエスに聞くと

池袋の方だというし、長崎とは!随分離れた叔母さんの家によくいくなと

秋風は思ったが



東京にはいろんなところがまだあるんだな!と秋風は思った。



「将来は東長崎と長崎にも家を買うつもり、叔母さんにその事の相談なんだ。

長崎を貿易の拠点にして、韓国にもいくんだ」とエスは言ったが



エスのダジャレの発想はあながちピントが外れていない。


テンポをつけて親に捨てられテンポをつけて

未来に躍進していくエスを見てることが秋風は好きだった。


「わかった!じゃ~わたしも港の方で働いて


東長崎に家を買うよ!」秋風は笑った。


「僕についてくれば自分で買わないで済むよ」とエスは言ったが

秋風は高校は卒業して進学したいと思っていたので


ついて行く気はなくエスは交際相手の加奈子と行くだろうと思っていた。


秋風が黙っていると



「秋風?!もし僕を見失ったら東長崎か?長崎を探してみな」とエスがいうので


「わかった!黄色の電車が止まる駅か?貿易港を探すよ!」と秋風は応える。


エスはその正解ぶりに納得して頷いた。


言葉には含蓄が必ずありエスの言葉はすべて曖昧だったが

秋風はそのすべてに正解を述べた。


「ハイこれ!!」交際相手の湯川から秋風に

学園祭の招待状が渡された。

TO AKIKAZE とシールが貼られていたが

TOの部分は印刷されていた。



茶色に黄色と赤のイチョウが印刷されている。



その色がエスの部屋の汚いカーテンと一致したので

秋風は噴出した。


「これデザインしたの?エスでしょう?」秋風が言うと


湯川は「よくわかったね!」と大笑いした。

エスは生徒会長で湯川は副会長だった。

「だってこれエスの部屋の汚いカーテンの色だよ」秋風も笑う。


「あのカーテンは目に付くよね」と湯川も笑ったが


「あんなに目につくカーテンはこの世にはないよ」と秋風は答えた。

「最初はもっと綺麗な茶色だったのにもっと黒い感じでと言って

エスは汚いカーテンの色に拘ったんだ」と湯川は笑った。

不思議なのだが秋風のエスの思い出の中には常にそのカーテンがあったのだ。


秋風はエスの学園祭に着ていく服を自分の部屋に隣接した倉庫に入って探したが、


いい物がなかったので


ピンクのブラウスと白いスカートを買った。


随分高いなと秋風は思った。


倉庫にはこれから売る数百万はする毛皮が沢山かかっている。


それゆえ、自分で買うブラウスは3900円でも高く感じた。







湯川の出番は2日目の最後から2番目だったが

大トリの三年生をおそらく圧倒するエスの演奏で

ある事であろうと秋風は思った。


茶色と黄色とオレンジ おそらくエスが好きな色なんだと秋風は思った。

だからいくら言ってもカーテンを変えなかったのだ。


東京の下町では


くだらない大人の男女がくだらない恋愛をしていた。

秋風はその姿を見下していた。


女に溺れる人間のオスはどんなに優秀でも醜いと秋風は思った。


女好きを利用されてお金をタレ流している男のバカ面はとても滑稽だ。


でもそこにもひとつ商売があり、酒とたばこと化粧と香水で


みんな誤魔化している。人間とは愚かで汚い生き物だ。


この四人の少年はこういうバカ面の大人にはならないだろうなと

秋風は思った。





自分の気持ちに逆らわずに生きて行けばいいのだ。




その数年後・・

エスはアメリカから帰って来た。



「今どこにいると思う?」とエスは聞いた。



「東京湾!!つまり港区」秋風はなぜか?疑問もなくそう即答した。


エスは当たり前のように港区のマンションの15階にいた。


「ここに暮らせば?」とエスは言ったが

秋風は行かなかった。



「自分の力でまずアメリカにいくよ」!」秋風はエスに言った。



長崎は今日も雨でしたが東長崎は今日も晴れてます。


僕がいなくなったら、長崎か?東長崎を探してみてとエスは言った。


エスは港にいると秋風は思った。エスは関東にいると秋風は思った。


なぜなら東長崎は長崎でも佐世保でもなく東京だったからだ!


東京の港=港区=東京湾=フェリーふ頭=品川ふ頭 と


秋風は思ったのだ。


エスは三井物産の英検一級のロサンゼルス支社長秘書と離婚したばかりだった。

「学歴はなく英検一級で25歳」とエスは言った。




エスに第1子誕生 その子の親権は母親が取りその祖父母がその赤ん坊を引き取り

育てた。エスの最初の妻はエスとの間にできた子供を捨てて

新しい男とその後家庭を築いたが間もなく離婚した。

「養育費を月に15万とマンションを買ってあげた」とエスは言った。

「月15万でマンション一軒はエスの全ての1000分の一程に過ぎない」と

秋風は応えた。エスは17歳の時の様に秋風に白い歯を見せて笑った。

エスが家庭を捨てるごとにエスの天才らしさは消えて価値がなくなって行った。


エスは23歳秋風は22歳だった。


16歳から随分長い月日が流れていた。


離婚したエスを老人を扱う老婆のように秋風は見た。


「まだまだそこには行けないよ!エス!!まだまだ無理だ!


わたしにはやる事がある」まだまだ

あの世には行けない老婆の様に秋風はエスに告げる。


「家を買おう!東長崎に!」エスは言った。



「長崎だか!佐世保だか!どこだか!

聞いてる人がわからない!土地にはわたしは家は買わないよ!エス」


22歳になった秋風は言った。

「じゃ~!!まじで出島に!まず!行こうよ」とエスは言った。


「う~ん!それならいいかもな」秋風は老婆の様に笑った。


秋風の中のエスは夢のままで全てが実は架空の夢の中のお話だったのかも知れないと

秋風は思った。










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