史上初の「殿堂入り」ライトノベル作品

小説にライトノベル、略してラノベというジャンルがあることは、本好きならご存じでしょう。
ラノベとは、中学生から高校生の若年層をメインターゲットに設定したエンターテインメント小説群のこと。「本が売れない時代」と言われて久しいものがありますが、実はラノベは例外の一つ。芥川賞・直木賞の受賞作のようには話題にならないだけで、発行部数1,000万部超の作品もごろごろあるのです。

そんなラノベで、注目作をあげるとするなら、渡航(わたり・わたる)の『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(小学館ガガガ文庫)を外すわけにはいかないでしょう。

宝島社発行のガイドブック「このライトノベルがすごい!」で2014年度から3年連続作品部門第1位に輝き、史上初の殿堂入り。男性キャラクター部門も3年連続1位、女性キャラクター部門2015年第1位、イラストレーター部門2年連続第1位。さらに読売新聞が実行委員を務める「SUGOI JAPAN」においても、2015年のラノベ部門第1位に輝くなど、ラノベ対象の賞総なめと言っていい快挙を達成しています。
現在11巻まで発行され、累計発行部数は600万部以上。すでにアニメ化もされ、ファンの間では「俺ガイル」という略称が定着しています。

主人公は「ぼっち」の高校生

主人公の比企谷八幡(ひきがや・はちまん)は千葉市に住む高校生。友達がいない、というよりあえてつくらない捻くれた性格の持ち主。物語はこの比企谷のモノローグによって展開していきます。
全編にギャグやパロディが散りばめられた軽快な文体で楽しく読めるのですが、扱っているテーマはけっこう重いのが特徴です。

孤独でいることも肯定されるべき、という主張

性格的に集団生活が苦手、という人は少なくないかと思います。
ですが、それも一つの個性であり、尊重されていいはずですが、実際には「よくないこと」のように扱われます。
社会で生きて行くには協調性が大切・・・という理屈はわかりますし、大事なことではあるものの、だからといって、周囲に溶け込めない人を排除したり、虐めなどの卑怯な方法で攻撃したりすることが許されるわけではありません。
そういう点を抉り出しているのが『俺ガイル』という作品で、学校という集団における人間関係の軋みや歪みをありありと描き出しているのです。

比企谷がたびたび語るのは、同級生から爪弾きにされたり、酷く傷つけられた経験について。「ぼっち」=孤独でいることを肯定してもらえない世の中の基準はおかしいという主張には、はっとさせられます。

ヒロインの一人である雪ノ下雪乃も、虐めや嫌がらせをしかけてくる同級生たちとの協調を拒否し、自ら孤独な生き方をしている女の子として登場します。
もう一人のヒロイン・由比ヶ浜結衣は、集団から排除されるのを恐れるあまり、人の顔色を窺ってばかりいる主体性のなさで苦悩していた、というキャラクターを与えられています。
この三人が、奉仕部という部活動で出会い、お互いに影響を受けながら少しずつ変わっていくさまを軸に、物語は進んでいきます。

大人が読んでもおもしろい! 待たれる続刊

ラノベファンだけに訴えかける作品ではありません。
大人が読んでもおもしろく、また考えさせられる、読み応えのある小説であることは間違いありません。
2011年3月に発売された『俺ガイル』はラノベファンの圧倒的な支持を受けつつ巻を重ね、現時点では11巻まで刊行済み。
比企谷やヒロインたちの成長とともに色恋やアイデンティティの所在といった問題も絡んできて、軽妙な文体は保たれながらも内容のシリアス度が増してきました。
そして11巻では、三人の関係性が根本的に問い直され、新たなフェーズを迎えるところでエンディング。
いったいこれからどう話が広がっていくのか、どきどきしてきます。
あざなえる縄のごとく複雑化した展開が、愛読者たちは気になってしかたがないはず。
11巻が刊行されてから、すでに半年以上が経過しました。渡先生、早く12巻を!

これからどうなる?!

ちなみに今後の『俺ガイル』のストーリーを読者やアニメ視聴者たちはどう予想しているのでしょうか。
※以下のリンク先には原作のネタバレになる記述が含まれているのでご注意ください。

通常のラブコメであれば、主人公がヒロインのどちらかとくっついて終わるが、『俺ガイル』はそうはならないと予想。
個々の登場人物の人間性まで深く掘り下げて分析し、結論を導き出していて、「もうこれでいいじゃん」というくらいに説得力があります。

こちらのブログは、分析というより願望として、主人公はヒロインのどちらも選ばないのではと考察。
「まちがっている」というタイトルである以上、“ラブコメとしては“間違ったエンディングになる可能性は確かに高いような気がしますね。

いくつかの考えられるパターンを整理しつつ、ヒロインの一方が主人公とくっついてほしい、という願望でまとめていらっしゃいます。

主人公の一人称で語られる、つまり単視点の物語であるため、もともとヒロインたちの考えがわかりにくい構造になっているのに加えて、クライマックスシーンが抽象的な会話に終始し、なおさら先が見えにくくなっています。これは、「簡単に予想なんかさせないぞ」という作者の意図もあるのでしょうね。
いずれにしても、最新刊を楽しみに待ちたいと思います。

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