記事提供:TOCANA

これは、2010年に起きた事件で、海外で話題になったものの、日本ではほとんど語られることがなかった、第二次世界大戦の悲劇から生まれたとても素敵な話である。

2010年、パリの古いアパートを離れてから70年間、無人の部屋に家賃を払い続け一度も訪れることがなかった、借り主の女性が息を引き取った。

戦前からずっと手付かずのまま時を止めたその部屋は、まさにタイムカプセル。古き良きパリの香りと共に出てきた品々は調査団を驚愕させることになった…。

■戦火から逃れるも、思い出は捨てられず

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オペラ座やギャラリー・ラファイエット、プランタンなどで有名なパリ9区は、とりわけかつての街並みが残された地域として知られている。そんな9区にたたずむアパートの一室で、日本ならまず起こりえない、衝撃的な出来事が起きたのだ。

借り主はかつて女優として活躍し、社交界の名士でもあったマルト・デ・フロリアンさん。サントトリニテ教会付近のこのアパートを1942年に離れてから91歳で他界するまでの約70年間、この思い出が詰まった部屋にずっと家賃を払い続けていたのだ。

その間、誰一人足を踏み入れることもなかったという。

そして、フロリアンさんの死後遺族がこの部屋の存在を発見。専門の調査団が部屋を開けると、当時のパリジェンヌの暮らしがそのまま残されていたのだ!

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第二次世界大戦勃発後、ナチスの侵攻によってフランスがドイツに降伏すると、街ではドイツ兵が市民を監視し、あちらこちらにハーケンクロイツの旗がかけられるようになった。

食うや食わざるやの時代、配給制となったパリの食料事情も厳しくなり、猫のスープからカラス料理まで登場したという。

そんな戦火から逃れるためにフロリアンさんはパリを捨て南仏へと移住したが、思い出のたくさん詰まったパリの部屋だけはどうしても手放すことができず、70年もの間、亡くなるまで家賃を払い続けたそうだ。

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静止した時間を破り部屋を開けてみると、ほこり臭さはあったものの、ヘアブラシから手紙、香水、鏡、化粧品、アンティーク家具といった日用品から、ダチョウのはく製やミッキーマウスの人形など、

当時パリの社交界で花を咲かていた女優フロリアンさんのパリジェンヌとしての生活がそのまま残されていた。

しかし、いちばん調査団を驚かしたのは壁に掛けられた女性を描いた「一枚の肖像画」だった。

■驚きの鑑定結果、隠された部屋の秘密

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ピンクのイブニングドレスを着た妖艶な女性の肖像画は、同行していた鑑定士が一目で「これはとんでもない発見に違いない、あのボルディーニの未発表作だ!」というほど美術的に価値あるものだったのだ。

ジョヴァンニ・ボルディーニは、イタリアの印象派画家で、ベル・エポック時代のフランス・パリ社交界の肖像画家として時代を代表する画家である。

しかしこの作品は一度も展覧会に出品された記録もなく、ボルディーニの作品かどうか正式な鑑定に困難が予想された。

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しかし、ボルディーニ自身からフロリアンさん宛てに送られたラブレターが発見されたことで、当時ボルディーニとフロリアンさんは恋愛関係にあり、

さらにはこの肖像画のモデルがフロリアンさん自身だとわかったことから、この絵は間違いなくボルディーニの未発表作品であることが判明した。

しかも、フロリアンさんが魅了したのはボルディーニだけでなく、リボンのかかったラブレターの中には当時のフランス首相ジョルジュ・クレマンソーからの手紙などもあったというから驚きだ。

最終的な鑑定結果より、この絵は、1894年にフロリアンさんが24歳の時に描かれたものだと判明した。

この147cm×114cmという大きな肖像画はオークションにかけられることになり、初値からうなぎのぼりに上がり、なんと210万ユーロ(日本円にして約2.6億円)という記録的な高値で落札された。これはボルディーニの作品の中で最も高い作品となった。

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ちなみに、フロリアンさんが一度も帰ることがなかった部屋に70年間家賃を払い続けた理由は、この若き画家との秘密の恋部屋だったからである。今では遺族があとを継いで家賃を払い続けているそうだ。

第二次世界大戦という悲劇によって生まれたなんともロマンチックな話である。この部屋が公開されるかは未定だが、二人だけの秘密の部屋ということでそっとしておいてあげたい気もする。

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