俳優としての彼は、その数々の受賞歴やハリウッド映画での海外メディアの高評価など、もうその実力は周知の事実だが、年末年始にかけての3本のドラマも彼の独特の個性が光る良い作品だった。

「赤めだか」「坊ちゃん」そして再放送ではあったが「フリーター家を買うSP」。この3作品は、全く違うタイプの主人公でありながら、どれもが彼でなくてはと思わせる秀作だった。

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見い出された才能が光った「硫黄島からの手紙」

以前、「硫黄島からの手紙」を見た時は、その気負いのない自然体の演技の中から生まれる優れたリアリティに驚かされた。

彼は、妻子持ちで平凡な日々を送る、どこにでもいたであろう青年の役で、戦地で仲間の死や劣悪な状況に遭遇し、いつしか死ぬ事よりも生きる事を選んでいく。その微妙な心理や、悲惨な状況に対する驚きや怒り、悲しみなどが本当にストレートに見る者の心に響いてくる。彼のシンプルに見える演技は、だからこそ深い哀惜の念を感じさせ、心揺さぶられる。

監督クリント・イーストウッドから「類まれなる才能」と称され、彼のために脚本にも少し手が加えられたというエピソードも納得できる。

青春ドラマのように仕上がった「赤めだか」


「赤めだか」は落語家立川談志との師弟愛を立川談春がつづったエッセーのドラマ化で、ビートたけしとの共演が新鮮で、彼は生き生きとその役柄を演じていた。

重い師弟愛を描くのではなく、まっすぐな青春ドラマのように仕上がったのは、優れた脚本もさることながら、ビートたけしと二宮和也のブレない姿勢と存在感に負うところも大きかったと思う。

アワード3冠に輝く「フリーター家を買う」

「フリーター家を買う」は、以前作品賞、俳優賞、主題歌賞の3冠に輝く人気ドラマで、スペシャル版は誰もが見たかったドラマの「その後」に仕上がっている。

改めて見てみると、彼の洞察力から創り出される今どきのフリーター感が良く出ていて、視聴者の感想に多かった「まるで自分を見ているようだ」「自分と同じで、怖いくらい」というコメントもわかる気がした。

戦時下の硫黄島の青年も、現代のフリーターの青年も、それぞれのみずみずしい感性が見る者の心に残る。

二宮的「坊ちゃん」が新鮮で懐かしくもあった


漱石の名作「坊ちゃん」こそ難しいのではないかと思っていたが、これもみごとに「まっすぐで良い御気性」の二宮的一本気の主人公「坊ちゃん」を見せてくれた。

お正月番組という事で、脚本、共演陣も優れていたが、彼の演じた坊ちゃんは、熱血で一本筋の通った青年の姿が原作と重なり、痛快で爽やかだった。

全体を通して、ユーモラスな漱石の文体の味わいが良く出ていたと思う。

自然体のリアリティはどうやって作られるのか


彼の優れた役作りのリアリティは、いったいどこから生まれるのだろうと思っていた時期に、彼がTVか雑誌のインタビューに答えて
「演じる時は、一度流れを相手に預けてみて、それから自分が引き受けるんです。」
という事を言っているのを聞き、なるほどと思った。

彼は決して独りよがりの演技はしない。監督のように全体を俯瞰しながら個を演じる、独特の優れたバランス感覚を持っている。

高評価だった「赤めだか」と「坊ちゃん」

今回のドラマ3作は、勿論脚本、スタッフ、共演者に恵まれていたとは言え、やはり彼の感性は光っていた。

視聴率の低さが言われていたが、多様化するTV番組の中で、一発勝負のスペシャル番組に高視聴率はなかなか期待できない。それよりも「赤めだか」「坊ちゃん」ともに高評価であったのなら、再放送で多くの視聴者にもう一度見せていただく事はできないのだろうか。

ともかく、俳優二宮和也には、ますます目が離せなくなった。



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