エスは17歳の天才少年だ。


育てた少女秋風16歳と夏休みを迎えた。

ヤマハの大会が終わるとエスは毎日朝の4時に秋風の家に行った。

国道17号で繋がっている。

秋風にとっては一日の始まりだったがエスにとっては一日の終わりだった。


秋風には明け方エスが現れる事が日常の節目となり


朝の4時にエスがくることを前提に生きていて生活にメリハリがついた。


エスがくるので!これをしようとあれをしようと絵を描いたりしている。


「よし!これをエスに見せよう!」独り言を言っては

秋風は懸命に絵具を塗った。

秋風の心の中からは完全に家族が消えていた。

母親が時折エスを警察に訴えると言ってるが

秋風にはそれが呪文に聞こえた。



秋風の長期休みは育てた伯父が待っているので

自衛隊の官舎で暮らす。

官舎には相変わらず秋風用の学習机と新しいスタンドが準備されていて


ごはんも三食きちんと用意されている。


官舎が木更津から移ったばかりで付き合っていた湯川が住む町の


駅の対岸にあったために、秋風は防衛庁の娘として

湯川に会いに行く。


勉強も捗り、湯川とも会えて秋風はその落ち着いた暮らしを気に入っていたが


親がふたりいたためにもうひとりの自分が存在していて


秋風には二重人格のところがあった。


その事に気づいたのは、佐々木という少年だ。


「秋風は間違いなく!多重人格」佐々木は言った。

天才少年エス17歳には親がなく


それゆえ純愛の才能がなかったが純愛の例として秋風がロミオとジュリエットをあげたので

エスは朝の4時に毎日原付バイクで秋風の家に行った。


秋風は暫くそのことに気づかなった。


ある日エスがロミオとジュリエットを歌ったので

気づいたのだ!


「なんだ!!エスはロミオとジュリエットになってたんだ」

秋風は笑った。

秋風が伯父さんに湯川を紹介したことをエスに述べると

「秋風のお父さんは秋風をあんなに可愛がってるのに

可哀そうだね」とエスは言った。

可愛がっているように見えた事を秋風は意外に思った。


「でもこういのってのはなんか?あったからこうなってるじゃないのかね?

つまりわたしはもうここにはいないから自衛隊の官舎にいくので」と秋風は言った。

「うちの父親はエスと違って孤児になった悲しみで

いっぱいなんだ!!エスと違って!!」秋風は言った。

「ふ~ん!そうなんだ!僕なんかさ!


ずっと優しい専業主婦の母親と東大卒の父親がいるって


嘘ついてたから!悲しんでる人って誰も思わないし

それに頭のいい人間のふりもうまいんだよ」とエスは笑った。


「つまり玉子にはエスの家のことはじゃ~言わない方がいいいよね?」秋風は聞いた。

玉子はエスの地元の少女でエスに憧れてる。

秋風の通う女子高校の同級生だ。

しかしエスには東大卒の父親がいることは嘘ではなく


ダムの水の調整をしてて長野にいて帰ってこないのだ!


「自分がそうだと思い込めばそれが自分の人生だから」とエスは言った。


「それは犯罪だよ!エス!!詐欺罪!!」秋風は言った。


「でもエスは今のところ学歴は嘘を言ってないけどね」秋風がいうと


「バカだな!犯罪にはならないように嘘をつけばいいんだよ!

母親がいるっていっても犯罪ではないだろ?」とエスが言った。


「それに僕は自分では母親がいないとは言わないさ!


すごくいいお母さんなんでしょ?専業主婦?って聞かれるから


答えないだけ!!」とエスは言った。


「どんだけお坊ちゃんを演技してたんだよ!


それにエスとわたしが「ロミオとジュリエット」ってわたしからは

よく見ろ!ブタのケツ

くらいの物だね」秋風は笑った。


「リットン調査団が日光東照宮ばりの話だね」とエスも笑った。

でも事実は違うからおかしくなるのだ。


自分の父親もエスもと秋風は思った。


今の秋風にはエスは父親で、自分のことを心配してくれることをとても嬉しく思った。

「さて!!秋風を湯川くんと結婚させたいと思っていたけど


実はそろそろ?そうもいかなくなって来てるから


僕を父親だと思うのはやめてくれ」エスは言った。

「わかった!わたしもエスを見習って


架空の父親を描こう!!すごく仲がいいみたいな?」秋風は笑った。


「簡単な話だ!いい父親に仕立てあげればいいだけの話で

そこに嘘を入れないことね」とエスは言った。


秋風はエスには本当にいい母親がいるように錯覚した。


秋風の頭は混乱してきた。

「エス!?わたしにはロミオとジュリエットみたいな


簡単な話が向くと思う」と秋風は笑った。


秋風は考えた。

「エス?でも今ここにエスとわたしがいることが事実で


夏休みは防衛庁の官舎にいくことも事実で


今この家にいることは事実から消せるかも?」秋風は言った。


「人は消したいものを語らない生き物だ!!例えば犯罪者が


自分はやってないというように」とエスは言った。


「陸軍士官学校にまったく価値がなくなったみたいに

事実には意味がなくなる場合があるもんね!


つまり何にも意味がなく!歴史が残るだけ」秋風は言った。


「だね!!歴史が残るだけ!!」エスも笑った。


「僕の名前が歴史の教科書に載ったとかね


それが事実でそこに生い立ちはないんだ」エスは笑った。

「エス?わたし明日から自衛隊の官舎だから

ここにはいないよ!!湯川くんとデートなんです!!

わたしは官舎育ちの賢いお嬢さんで湯川くんが夢中!?」

秋風はそんな自分の弧を描いた。

「秋風?隅田川のことは歴史から外せるからな」エスは笑った。

隅田川=見なくなった自分の家!!と秋風は解釈した。

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