エスは17歳の天才少年だ。秋風という16歳の少女を育てて


自分の生い立ちを隠してヒーローになる計画に終止符を打った。エスは6歳からひとりで工場街で育った。17歳になり天才少年の名にも終止符を打とうとしている。


エスは育てた秋風に出て行かれ暫く学校へ行かずに曲を作っていた。


曲が出来た時には違ったエスがいたがエスは自分ではそれに気づいていなかった。

エスは再び秋風と歩き始めた。


気がつけばそれぞれの心の叫び握りしめて


戻れない引き返せないそんな旅に出ていた

愛しさと苦しさと切なさと無償の愛を


優しさと悲しさと出会いと別れの途中に


遠ざかる時を憂いて立ち止まってみても

溢れる若い命に歩き始める


貴女の思い遂げるために

貴女の夢を守るために

貴女の叫び届けるために

貴女の愛に答えるために


尽くした日々は水に流して

重ねられた恩は高く積み上げて


誰よりも優しく誰よりも強く

そんな心でありたい

遠い日 歩いた路の花の色褪せても

いつまでも褪せない夢を愛と正義で

気がつけばそれぞれの心の叫び

握りしめて戻らない引き返さない

そんな旅を続ける


秋風と働く工場街の店の空き時間に曲は姿を変えて

その時折時折に別の形で歌われて行った。

その日のエスの気分で曲は少しづつ姿を変えた。

工場街の社長や大人たちは17歳の少年の演奏する曲に深く感銘を受けてその店には客が途絶える事がなかった。

大人が聴き入るからか?エスの演奏にはワビや錆が生きて行き

エスはまた別の世界のヒーローになって行った。

進学校のヒーローだったエスは本当のヒーローになりつつあった。



秋風は悲しい生い立ちを隠してヒーローになる15歳までのエスの歌を歌っていたが

もう隠す必要もなくヒーローに自分でなろうとするエスに少し淋しさを覚えた。


「もう隠してないからわたしが歌う必要もないんだよね」秋風はエスに言った。

「もう僕は隠さないよ」エスはとても優しく笑った。

秋風はエスの親友の湯川という少年17歳と結婚する予定だった。

しかし湯川は秋風を育てて変わったエスをとても気にしていた。


山口瞳の本を秋風と読もうと思い一緒に買う。

山口瞳は競馬・将棋のコラムニストだが結婚の真実についても書いている。

エスに合わせて湯川も変わろうとしているので秋風は身動きが取れなくなった。

「だから!!競馬や将棋ができることが大人じゃないんだってば!!」

秋風は競馬と将棋にイライラした。

秋風は湯川にイライラをぶつけたが湯川も戸惑うばかりだ。

「でも秋風のお父さんは競馬と将棋が得意だろ!!」

湯川は大人になるということがどういうことなのか?わからずに戸惑っている。

おまけにエスがなにか吹き込んでいるが秋風にはそれがなんなのか?わからなかった。

「だから競馬と将棋ができても大人にはならないしよくわかんないよ!!もう」

秋風も不安になった。後を追う背がなくなったのだ。

それまではエスの代わりに親に捨てられてそれを隠してヒーローになる歌を歌いあげるという目標があったのだ。

秋風は目標を失った。

「だから競馬と将棋をしても大人にはならないんだ」そればかりを繰り返して山口瞳の「結婚します」という本を秋風は悲しく見ている。

「湯川くんはじゃ~もういいから山口瞳がいうようにお見合いで結婚しなよ!!」

秋風は言った。湯川くんが薦めた本が気に入らなかったのだ。

「秋風?!僕はもうどうしていいのか?わかんないよ。エスと秋風の間には僕は入れない!!」湯川は言った。

「あんな親に捨てられた人間はわたしは嫌いなんだよ!なぜかわわかんないけど大嫌いなんだよ!!」秋風はイライラして体が震えた。

「それに!わたしは自分の父親もエスも大嫌いなんだよ!なのに湯川くんがそんなくだらない本を一緒にバイブルにしようってなんだよ!それ!!わたしが欲しいのはそんなんじゃねぇ~んだ」

秋風はイライラして泣いている。秋風は湯川が選んだ本が気に入らなかったのだ。

「秋風?エスは変わったんだよ!!僕はあいつにあんな優しいこころがあったなんて知らなかったし!!秋風に歌を教えていて優しいこころになったんじゃないのか?秋風はそれに答えてあげないといけないんじゃないのかな?」


湯川は綺麗な瞳に涙を溜めてそう言った。

「いやだよ!親に捨てられた人間なんて嫌いなんだ!湯川くん?なぜだかわかる?必ず同じことをするんだよ!見ててみろ!今にエスは子供を捨てるから!!」

秋風はその言葉に確信を持って湯川を真剣に見た。

「もう僕にはどうしていいのか?わかんなぃよ!」それは湯川の本心だった。


「秋風を育ててくれたお父さんを尊敬することがそんなに悪いことなのか?」湯川は聞いた。

「大体うちの父親が競馬と将棋が好きってどうせエスに聞いたんだろ!!エスと父親が大嫌いだから湯川くんと結婚したいんだよ!!」

秋風の本心だった。

「僕には秋風がお父さんとエスを嫌いなわけがよくわかんないよ。僕はエスと秋風の間にはもう入れないし居場所もない」と湯川は言った。


「湯川くん?あの歌はね・・・わたしに歌ったものではない」秋風は言った。

湯川はなにもわからなくなった。「じゃ~一体誰に歌った歌だっていうんだよ?」湯川は聞いた。

「ん???胸がこ~~んなにでっかいホルスタンみたいな女だ」秋風は笑った。

湯川もやっと笑った。堪えきれずに湯川はゲラゲラ笑った。

「わかったよ!!秋風!僕にもう一度チャンスをくれる?秋風が納得する言葉を吐くよ」湯川くんは言った。

秋風はほっとした。「実はね!!石原くんと佐々木も秋風はエスじゃないよ!と確信を持って僕に言うんだ!!それも本当なのかも知れないよね!」湯川は笑った。


秋風もほっとして笑った。

17歳の天才少年エスはその後子供を捨てるどころか!5人の妻に合計7名の子供を儲けた。

一生懸命育てたがこれだけ生まれたら捨てたも同然だよなと秋風は思った。

エスはやっぱりどこか勘違いしたままだなと秋風は思った。

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