ケプラー22bがナメック星だったら…夢があっていいと思います。ドラゴンボールファンの一人が発案し、「ケプラー22bをナメック星に改名する?」という話のようです。しかし個人的には「冷や水を浴びせる」ような意見にはなってしまいますが、筆者自身はNASAが改名する可能性はかなり低いと見ています。
 何故でしょうか?筆者自身が系外惑星天文学の専門家の立場から、いくつか天文学的な理由をつけて以下で真面目に議論してみたいと思います。

惑星の名称の改名に向けた一連の動き

 この署名は「ドラゴンボール」シリーズの米・アイオワ州に在住するファンが発案し、ナメック星はケプラー22bのイメージに似ていることから署名活動を行っているようです。
 署名はシンプルで、わずか2日で55000人以上が賛同しています。集まった署名は最終的に国際天文学連合(IAU: International Astronomical Unit)へ提出される予定のようです。

ケプラー22bとナメック星

 先ず、ナメック星は皆さんご存知の通り、「ドラゴンボール」シリーズに出てくる代表的な架空の系外ハビタブル惑星です。ナメック星人・デンデによると、「ナメック星は太陽が3個あり、夜が来ない」という話です。このように太陽が3個ある系を「3重連星系」と呼びます。
 また、ナメック星は130日で公転しているそうです。つまり、短周期惑星の種類に属しますので公転速度が速く、主星(星A)、伴星(星B)、伴星2(星C)のいずれかの周囲を周回しているというイメージが出てくるはずです。ハビタブル惑星であるナメック星の環境を物理学的に考慮するにはハビタブルゾーンを考える必要があり、ナメック星系の詳細は全く不明ですが、悟空とフリーザの戦いの中で「海や湖」が出てくるシーンがあるので、ナメック星が間違いなく温暖な気候にあるハビタブルゾーンに入っていることが言えます。
 
 ハビタブルゾーンは星の物理的な性質(星の半径、質量、温度、光度、光や熱のエネルギー)で位置や範囲が決まります。特に星の温度はハビタブルゾーンを決め、太陽の有効温度:5780Kよりも高ければ遠くにハビタブルゾーンができ、逆に近ければ星のすぐ周囲を取り囲みます。

 一方ケプラー22bは太陽が1個の星の周囲を289日で公転しています。公開された当初は「地球と似ている」という情報でしたが、最近では少し見直しされ「ハビタブルゾーン外」にあると考えられています。公開当時のハビタブル惑星候補に入るかどうか、正直微妙な情勢です。
 
 このような両者の相違点から、天文学的な見解からケプラー22bとナメック星を安易に結びつけることは困難だと考えられ、イメージになっている惑星の色から言うと、ドラえもんでも自然が豊富なのび太顔の巨人が出てくるハビタブル惑星が登場する話が存在しますので、その惑星に結びつけても悪くないはずです。

おわりに

 今回はSFチックな話になりましたが、系外惑星天文学は科学という学術分野の一つとしての系外惑星を観測を通じて多くの研究者が研究を進めています。ナメック星は特に「ドラゴンボールZ」の架空の惑星であり、また、ケプラー22bは観測から惑星の存在には確証がありましたが、この記事の見出しイメージのような惑星の姿を研究者が直接見たわけではありません。この辺りはSFとの違いをNASAがしっかりと説明すべきです。
 系外惑星天文学についてまだ、一般の方に十分に伝わり切れていない部分もあると研究者として反省する必要があると思います。一番誤解されて欲しくないことは、「系外惑星天文学はSFではない」ことです。現実の太陽以外の恒星を周回する惑星を取り扱う天文学です。
 しかし、系外惑星天文学やアストロバイオロジーを念頭にして、我々研究者の究極の目標は「系外ハビタブル惑星」の探査であることは変わりはないので、「いかにしてSFの世界が現実になるか」という考えを持つと、そのギャップが面白くなると思います。

 SFの世界のような惑星が太陽系外でいつか見つかるようになると、生きているだけでもワクワク、ドキドキして面白そうですね。

 次回をお楽しみに!

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天文学者(系外惑星)・理論系外惑星物理者/個人研究事業 町田系外惑星天文学研究所(IEAM)・所長(理学修士)。大学院時代の2年間、国立天文台太陽系外惑星探査プロジェクト室に所属。大学院修了後もフリーで研究活動を継続中。得意分野は天文学、特に太陽系外惑星天文学におけるハビタブル惑星及び海洋惑星の研究(研究テーマ:惑星海洋保有関数論)を「惑星と水」をキーワードにして進めている。
参考サイト(個人研究事業 町田系外惑星天文学研究所):http://ieam4358.f5.si/

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