人と物が溢れる日本。手に入らないものはないと言っていいほど便利な国。日本だけではなく先進国のほとんどでそんな暮らしをしている人が大勢います。筆者の人生だけを例に挙げてみても、テクノロジーは大きく進歩しました。

筆者がイギリスに住み始めた頃にはパソコンは一般的ではなく、日本の家族に手紙を書いて送っていました。それが今はパソコン、スマホは当たり前の時代。無かった時代をもう想像することもできません。そして当時に戻ることもできないと断言できるでしょう。

私達が暮らす周りには常に誰かがいます。そして社会を作っています。隣近所の人と会話をしない生活でも、同じエリアには人が住み生活しています。それは都会でも田舎でも同じこと。

でも、自分が生活しているエリアに、自分たち夫婦以外いなかったらどう思いますか?そんな生活を想像できますか?いるのは動物と年老いた結婚相手だけ。たった二人きりの生活。同じ土地で、たった2人で45年もまさにひっそりと暮らしている夫婦の人生を垣間見たら、切な過ぎて涙を流さずにはいられません。


スペインのラ・エストレーラという小さな村

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スペイン東部、ヴァレンシア地方の近くにある小さな村、ラ・エストレーラ。隣の町までは25キロもあるという山間にひっそりと佇むこの村には、25匹の猫と5羽の鶏、3匹の犬そして1組の老夫婦だけが住んでいます。

村を襲った悲劇

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過去には200もの世帯があったこの村は、今では廃墟同然。79歳のマーティンさんと82歳のシンフォローサさんを除き、全ての住民がこの村を去って行きました。1883年、この村は大嵐に襲われ人口の半分が死亡するという悲劇に見舞われました。

多くの家屋は全壊。それ以降、生き残った住民たちも次々と村を離れて行ったために衰退の一途を辿るようになってしまったのです。

更に、1936年から3年続いた内戦の為にわずかに残っていた住民さえもこの村を出て行ってしまいました。マーティンさんは静かに語ります。「昔は15万人以上の人が住んでいました。牧師や教師、医者や警官など様々な専門職の人達もいました。でもみな、1,2年のうちにここを去ってしまったんです。」

内戦後に出会って恋に落ちた二人

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最初は牛を運んできた農場で、次には村にたった2軒しかない食堂で出会い、マーティンさんとシンフォローサさんは恋に落ちました。そして結婚。内戦後、次々と村を去っていく人を見送りながら二人はこの村で生活して行くことを決心したのです。

すっかり廃れてしまったこの村で、二人は電気も水道もなく、電話もテレビもない環境で生活しています。あるのはラジオだけ。時折、マーティンさんの古い車で、25キロ離れた隣町に行くことがある他は、チェリーの木の手入れや動物の世話をしながら究極のシンプルライフを送っています。

昔は公共の施設だった場所で二人きりの食事

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45年という長い間、マーティンさんとシンフォローサさんをこの土地に留まらせたのは「娘さんの死」が関係しているのではないでしょうか。夫婦には1人娘がいたのですが、たった12歳という若さでこの世を去ってしまったのです。

娘さんの死は、血の塊(血栓)や異物が血管や循環器系を塞いでしまう塞栓症でした。娘さんの場合はそれが脳内に起こり、大量の輸血を試みるもそれを上回る出血量で助からなかったのです。「病院に連れて行った時には、娘はまだ生きとったんだ。今、生きていたら48歳になるよ。」

二人の時間は36年前に止まったまま…

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最愛の1人娘さんを亡くして以来、夫婦の間ではきっと時間は止まったままなのでしょう。36年前の出来事も機能のことのように明確に話すマーティンさん。誰もがこの村を去って行っても、亡き娘さんが眠るこの土地を去ることはきっと辛いのだろうと察します。

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ほんの時折、隣町からマーティンさんとシンフォローサさんを尋ねる人がいるそう。二人の生活を垣間見た人達はみな、マーティンさんとシンフォローサさんがたった二人きりでこの村で生活していることを褒めると言います。きっと他の人にはできない生活だからでしょう。

「妻はここで生まれ育ったんだ。どこにも行きたくないみたいだし、わしは妻を1人置いては行けないからね。」そういうマーティンさん。既に二人は45年間暮らしたこの村で、娘さんへの想いと共に人生を終える覚悟をしているのでしょう。

あまりにも切なく美しい二人の暮らし

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澄んだ空と空気、数匹の動物以外何もないこの村で、この老夫婦は毎日をどんな思いで過ごしているのでしょうか。45年もたった二人で生活して来たマーティンさんとシンフォローサさんには、きっと他人にはわからない彼らなりの小さな幸せがここにはあるのかも知れません。

テクノロジーはおろか、電気も水道もない、誰もいない土地で究極のシンプルライフを過ごす夫婦。過去に抱えた様々な思いが二人の人生を切なく、そして美しく終焉へと導いて行くことでしょう。

世界にはこんな風に、まさに「何もないところ」でひっそりと生活している人達が存在するのです。物に溢れかえった生活をつい当たり前だと思いがちな私達には、まさに目から鱗のマーティンさんとシンフォローサさんの究極のシンプルライフ。

これからもこの村でひっそりと暮らして行くであろう老夫婦が最後を迎えるその日まで、そこで過ごした人生を幸せだったと感じて欲しいと願う筆者です。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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