新人保育者の早期離職に関する実態調査
森 本 美 佐・林  悠 子・東 村 知 子
奈良文化女子短期大学
A Survey on Newcomer Child-Care Workers' Early Retirement
Misa Morimoto, Yuko Hayashi, Tomoko Higashimura
Narabunka Women’s college
 近年、保育への社会的ニーズの変化に伴い、保育の質の向上が望まれている。質の向上には、養成段階から各施設での研修段階にわたっての学習と経験の積み重ねが不可欠である。しかし、保育者の早期離職問題が顕在化しており、この問題に取り組まない限り、本当の意味での質の向上は望めない

出典 http://www.narabunka.ac.jp

理想と現実

夫婦共働き、長時間労働、核家族化により保育のニーズが高まっているにもかかわらず、受け入れる側の保育士不足により、待機児童の解消がままならない状態。
保育士の離職理由は様々だが、根本的な原因は、職場の人間関係にあるようだ。
対子ども、対保護者、対同僚保育士、対地域。
様々な人間模様の中で、臨機応変に対応していくコミュニケーション力が問われる。

人気職業ランキングの上位に位置する保育士。
筆者も、20年間保育士として子どもたちと関わってきた。
保育士は素晴らしい職業だ。
私たち保育士が関わっている乳幼児期は、人間形成の基礎となるとても大切な時間。
それぞれの家庭によって保育時間は異なるものの、長時間保育の子どもでは朝7時過ぎ~夜7時ごろまで、1日のほとんどを保育園で過ごすのだ。
親といるより保育士といる時間の方が長い場合もある。
日々の保育の中で、一緒に笑い、喜ぶ。
時に、涙を流し、間違いを叱り正す。
一日一日の子どもたちの成長に一喜一憂するのだ。
子どもたちが何に興味があり、何を喜ぶのか。
どんな工夫をすれば、ワクワクした活動へと展開していくのか。
子どもたちの満足そうな笑顔が、保育士の何よりの喜びとなる。
この何とも言えない充実感を味わうことなく現場を離れてしまうことほど、もったいないことはない。

しかし、その充実感の裏側には、『やめたい』と思ってしまうような苦労を感じる保育士がいるという現実も理解できる。
正直、理想と現実は程遠いと言えるのかもしれない。
実際、保育士不足のため現場はかなりキツい状態で保育を回している。
『保育士になりたい!』と夢を叶えてみたものの、事務に追われ、雑務に追われ、時間に追われて過ごすうちに、キラキラした子どもの笑顔さえ、見えなくなってしまうのかもしれない。

ただ、ここで考えてほしい。
そんな状況の中、離職せず自分の理想とする保育を続けている保育士だっているのだ。
その違いは何だろう?
それは、感情コントロール力の違いにあるのではないかと、筆者は考えている。
理想と現実の違いがあることを、事実として受け入れ、今の状態で自分に何ができるのか、自分の感情をどう保つのかを自分自身で決めることができる力こそ、これからの厳しい保育情勢の中、子どもたちと情緒豊かな保育生活を送っていくための秘訣だと思うのだ。

保育士養成校の学生にアンガーマネジメントの必要性有!

感情コントロール力とは、一体どういうことなのか?
筆者がおススメするのは、アンガーマネジメント力を上げること。

アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで始まった、アンガー(イライラ・怒りの感情)とマネジメント(上手に付き合う)ための心理教育だ。
アメリカでは、実に様々な人たちがよりよい生活や仕事、人間関係を手に入れる為に、アンガーマネジメントの技術を取得している。
具体的には、
人間関係でトラブルにならないように
子育てで不必要にイライラしないために
職場でイライラせず、効率的に仕事をするために
保育園、学校で子どもたちの情操教育の一環として
スポーツ選手が試合中、熱くなり過ぎず、最高のパフォーマンスを発揮するために
政治家が、怒りで失態を犯したり醜態をさらさないために  など。

保育士がアンガーマネジメントを習得し、感情コントロールが可能になれば、子どもの健やかな育ちは保障され、保護者との信頼関係も築け、職場の雰囲気も良く、保育園全体の質が上がることは間違いない。
何より、保育士自身が生き生きとした毎日を過ごせるようになるのだ。

では、いつそれを学ぶのか?
もちろん、いつからでもOKだ。
必要性に気づいたときからスタートすれば良い。

ただ、ここで筆者は、学生の内からアンガーマネジメントを学ぶことの重要性について言いたい。
現場に出る前に、このアンガーマネジメントを学び、自身の感情コントロール力のスキルアップをしておくことで、保育士の離職率は確実に減ると考えている。
なぜなら、アンガーマネジメントはトレーニングだからだ。
練習を続けていくことによって、できるようになる。
日々の積み重ねによってテクニックが使えるようになる、スポーツと同じなのだ。

学生のうちに感情コントロールの練習をしておくことで、どんな場面に遭遇しても自分の本来の目的を見失わず、テクニックをうまく使いながら、困難を乗り越える力を発揮することができるのだ。

アンガーマネジメントを学ぶことにって、自分自身の怒りを理解し、コントロールできるようになることで、ネガティブをポジティブへ変換させることができるようになる。
自分が変わることで、自分を癒し、他人を癒し、穏やかな生活を手に入れることができる。
怒りの連鎖が、幸せの連鎖にチェンジし、子どもたちの感情コンロトール力向上へとつながっていくのだ。

今後、保育士養成校は、保育の理論やスキルだけでなく、実際に現場で生き生きと保育を続けていける保育士養成のために、アンガーマネジメントをプログラムの中に組み込んでいく必要があるのではないだろうか?


アンガーマネジメントの相乗効果

保育現場でのアンガーマネジメントは、子どもたちにも大きく影響する。
昨今、『褒めて育てる』育児が注目を集め、『叱れない親』『叱れない保育士』が増えている。
が、褒めているだけでは子どもは育たないと筆者は思う。
子どもはヤンチャをするものだ。
ヤンチャして、怒られて、『良い』『悪い』を学んでいくものだ。
『良い』行動に対しては、その行動をしっかり褒める。
『悪い』行動に対しては、その行動について叱る。
子育てにおいて、『褒める』も『叱る』も同じくらい大切なのではないだろうか。

しかし、ここで注意しなければならないのは、『褒め方』『叱り方』の方法だ。

アンガーマネジメントにより、感情コントロールができるようになると、機嫌によって『怒ったり』『怒らなかったり』することが減ってくる。
同じ出来事に対して、『怒ったり』『怒らなかったり』すると、子どもは〝その行動”の善悪の判断基準が、大人の機嫌になってしまう。
つまり、『先生の機嫌が悪いから怒られた』『先生の機嫌がいいから怒られない』となる。

これでは、『叱る』ことの意味はない。

アンガーマネジメントは『怒る=叱る=伝える(教える)』
上手に叱るということは、子どもたちに『叱っている目的』『叱っている理由』が具体的に伝わっているかどうかがポイントになるのだ。

子どもたちのイラッとする行動に、無駄な怒りのエネルギーを注ぐことなく、上手に叱ることができれば、子どもたちの自己肯定感を潰すことなく、次の行動を起こすモチベーションにつなげたり、目指すためのゴールを伝えることができる。

また、保護者からのクレームを受けたとしても、それらを事実として受け止め、そこからの一歩を気持ちを新たに踏み出す力につなげることができるのだ。
その姿勢は、保護者に伝わり、そこから信頼関係も深まっていくかもしれない。

保育の現場で、自分の個性を活かした保育を楽しむために、夢を叶えた充実感を味わい続けるためにも、保育養成校でのアンガーマネジメントプログラムは必要不可欠だ。

保育園児のアンガーマネジメント「なかよしのひんと」

大人も子どもも、もっと自分を好きになろう

『子どもの笑顔』は宝物
 保育の現場に笑顔いっぱいの花を咲かせよう
 

ある保育園で、参観日後の保護者講演会の依頼を受けたのだが、講演会を前に5歳児クラスの子どもたちに、アンガーマネジメント『なかよしのヒント』について話をしたときの様子を紹介したブログ。
子どもたちにアンガーマネジメントを教えられるインストラクターの資格養成講座は全国で開催されている。
筆者も、アンガーマネジメントキッズマスタートレーナーとして岡山を起点に、養成講座を定期的に開催している。
今の保育を見直したい!保護者との関係を改善したい!保育の質を上げたいと思うなら、アンガーマネジメントキッズインストラクター養成講座の受講をお勧めする。

この記事を書いたユーザー

野村恵里 このユーザーの他の記事を見る

平成26年3月、岡山市公立保育園を退職。
「大人も子どもも、もっと自分を好きになろう」をテーマに、同4月、colorful communicationsとして起業。公立保育園勤務20年の経験、2児の母、発達障害児の母という子どもにとって身近な立場から乳幼児学童期教育現場でのアンガーマネジメント講演会活動や色彩心理カラーカウンセリング講演会などを実施。
また、講演会講師として保・幼・小・公民館・教育委員会・その他子育て団体からの依頼をいただき、親しみやすい講師としてコミュニ ケーション研修を開催中。

得意ジャンル
  • 育児

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス