世界でもっとも有名なスクーターだとされるベスパをご存知ですか? 映画「ローマの休日」でオードリー・ヘップバーンが跨ったり、TVシリーズの「探偵物語」で松田優作演じる工藤ちゃんの相棒として活躍したあれです。あのスクーターがベスパです。なかでも古いベスパの"まーるくて大きなお尻"は世界中にファンも多く、それを吊るしのジャケットみたいにサラッとスマートに乗りこなしちゃうダンディズムといったら!

じつはベスパってけっこうな歴史があります。最初に市販されたのは、なんと1946年のことでした。それから1950年代中期過ぎまで、映画「ローマの休日」の劇中車に見られるような"フロントフェンダー上にちょこんとヘッドライトの乗る"いわゆるフェンダーライトと呼ばれるモデルが主流だったんです。ちなみにフェンダーライトは日本国内のみの通称です。世界的には通用しませんから要注意です。

Vespa125(1954年モデル)

それでベスパの市販開始から約10年くらいの間って、フェンダーライトが毎年手直しを受けながら継続販売されていった時代だったりします。当初の2年間……つまり1946年の登場から2年間のベスパは、排気量が98ccで車名が「Vespa98」でした。3年目には排気量を125ccにまで引き上げられ、車名も「Vespa125」とされました。排気量がそのままモデル名だなんて、ちょっとイージーなネーミングですよね。

Vespa150GS(1955年モデル)

こうして10年ほどフェンダーライトが継続販売されていくのとは別に、時代のニーズもあって「Vespa150GS」というスポーツモデルが1955年にラインナップされました。その突き抜けた速さは驚異的で、わずか150ccでしかないスクーターが最高速100km/hをマークしたというのです。1955年当時のことだと考えれば、これはもう凄まじいハイスペックぶりだったといえるでしょう。

しかしセールス戦略上はハイエンドスポーツだけに頼ることはできませんし、もっと気楽でオールラウンドに使えるベーシックラインを重要と考えるのは自然な流れだったのでしょう。そうした結果、125ccという排気量で耐久性と実用性を重視した感のあるモデルを1957年に登場させてきます。それがVNA1という型式のモデルです。ベスパの登場以来踏襲されてきたフロントフェンダー上のヘッドライトはハンドルマウントに変更され、見た目こそずいぶんと印象を変えましたが「Vespa125」のモデル名を引き継いでいたんです。そして初期のベスパらしさを感じさせる"丸み"と"ボリューム感"を備えたVNA1は、VNA2、さらにVNBシリーズへとモデルチェンジされ、最終的には1966年のVNB6というモデルまで継続生産されました。

このベーシックラインを担うべく登場した新生「Vespa125」は、俗に通常モデルやスタンダードモデルだと言われています。実際スポーツモデルだった「Vespa150GS」が10インチホイールへと大径化さ れたのに対し、通常版となる「Vespa125」では小さな8インチホイールのままでした。これは「Vespa150GS」が速さを身に付けたことで、そのスピードに対する操作性や安定性を確保する必要があったからでしょう。このように、あえて大径ホイールを採用しなかったことなどがスタンダード感を強めていた要因だったように思います。また大きく丸いお尻がとくに印象的なのと、ホイール径の小ささから"可愛らしさ"もキープしていたことで、初期の流れをしっかりと受け継ぐフォルムを実現しています。こうした"どこか見覚えがある"的な見た目の安心感というのもスタンダード感を後押ししていたのかもしれませんね。

Vespa125(1961年モデル)

さて、そんなスタンダードモデルに乗るっていうことにスマートなダンディズムを感じちゃったりしませんか?
いや、カンタンなことじゃないのはご想像通りですよ。古いモデルですから、当然それなりの知識もノウハウも必要です。でも、そういう大変そうなことを全部クリアしてサラッと普通に乗りこなしちゃうのって素敵なことだと思うんです。それこそ吊るしのジャケットを気負いなく自然に着こなしてる的なイメージです。なのでイメージ優先で言っちゃうと、新生「Vespa125」のなかに1961年のたった1年だけ生産されていたレアモデルがあるんです。それがVNB2というモデルで、そんなレア車だったら、吊るしのジャケットとはいってもキラリと光ること間違いなしです。

ここでちょっぴりVNB2に関するウンチクを紹介しておきましょう。スタンダードとして捉えられている新生「Vespa125」がスタートしたVNA時代は、フロントフェンダーがプレス成形で作られた1枚モノでした。深さのあるフェンダーを作るってけっこうな技術力がいることなので、ベスパやるなって感じです。その後のVNB時代では2枚合わせのタイプに変更されているので、これは量産に対応させるための改良だったのでしょう。そしてVNB1時代では涙滴型だったライトスイッチが、VNB2になると四角いレバータイプへと改められています。さらにVNB1にはメーター前側の赤いインジケーターがあるのに、VNB2ではそれが廃止され、すっきりとシンプルなメーターまわりへと変更されていたのも特徴です。

Vespa125(1961年モデル)

今回撮影したVNB2はまだレストア中のため、あくまでざっくりと仮組みしただけで走れる状態にないものです。今後レストア作業を終えると元気に街を走ったりするのでしょう。また、フェンダーライトや150GSの撮影も含めてMuseo Vespa Giapponeが対応してくれました。Museo Vespa Giapponeとはメディアなどへの対応を行うベスパの博物館ですが、一般公開などは現状で未定ということです。話を戻しましょう。総じて気楽で可愛らしく、気負いなく使えるスタンダードモデルとして世界中にファンの多い新生「Vespa125」ですが、知識もノウハウも克服してサラリと……それこそ普段の足として乗りこなしちゃったらとってもスマートでダンディズム炸裂ってことでオススメです!

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Buono/隅本辰哉 このユーザーの他の記事を見る

二輪ジャーナリストとしてバイク&スクーター雑誌を中心として活動中。主に新旧スクーターに関する記事が専門。 とくにベスパを得意としていてベスパ関連書物などの出版もしています。なのでベスパを軸にスクーターやバイクのこと、ときには取材で出かけた食や遊びや旅のことまで書き記していきたいと考えています。

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