日本史の教科書を読んでも日本の成り立ちはわからない

手元に山川出版社の詳説日本史Bという教科書がある。

Wikipediaによれば、国内の約70%のシェアを誇るというこの本。高校生の頃、これを読み、授業を聞き、いつもいつも気になって仕方がないことがあった。

教科書のどこをどう読んでも、日本という国がどんな過程で今の形式で成立したのか、なぜ皇室は皇室として存在するのか、世界史の学習においては当たり前のように習うはずの国を理解する上での一番基本的なことがどこにも書いていないのだ。

当然、外国人に聞かれたところで説明もできない。

古代史の不自然な構成

違和感を感じる最大の原因は、その構成にある。

よくよく教科書を読むと気づくことだが、旧石器時代、縄文時代、弥生時代、古墳時代と淡々と説明が進む間に、唐突に「邪馬台国と卑弥呼」の話、「大和朝廷」の話が飛び出した後、第33代の推古天皇から突然詳しすぎる解説がスタートするのである。

それ以前の天皇は雄略天皇が軽く触れられるぐらい。

これでは、なぜ「天皇」を中心とする統治体制が出現したのか、古墳を作り上げるほどの権力者は誰だったのか・・・そもそも突然出てきてすぐにすっとばされる「邪馬台国」ってなんなのか全くわからない。

もちろん授業でも巧妙に飛ばされる。

古事記と日本書紀の重要性

そんなきつねに包まれたような感じで学習を進めていくと、天平文化のところである興味深い記述に遭遇する。

天武天皇の時代にスタートし、奈良時代に完成した我が国で最初の国史編纂事業の話である。いわゆる「古事記」と「日本書紀」だ。

みなさんはどんなイメージをお持ちだろうか。

内容の一部を知っていればいい方で、たいていは名前を聞いたことがあるというレベルではないだろうか。中にはおとぎ話化してしまっているエピソードも少なくない。

ただ・・・である。

これらは、日本の神話として片付ければいい書物ではない。

時の権力者の命令で我が国で初めて編纂された国史なのである。

今で言えば、最近公刊されて話題になった「昭和天皇実録」と同じ扱いの書物である。

古事記を読んでみる

そんな政府の編纂した歴史書である古事記だが、読めばたしかに神話とかファンタジックな記述が多くて、これを史実と考えるのは無理であることは確かだ。

ただ、記載を字面通りに読んで全否定しては何も進まない。

ある一定の史実に誇張や脚色が味付けとして加わっていると考えるの方がより自然だろう。

実際のところフィクションとして書くにはあまりにも詳しくてドロドロしすぎた話や、どう考えても当時の政府にとって不都合になりそうな話、やたらとまわりくどいわりに詳しくてリアリティーのある話が満載なのだ。

しかも、遺跡の発掘が進めば進むほど記載に合うような調査結果が出てくるという。

古事記を読んで本当の日本のあけぼのに想いを馳せる

このような古事記であるが、なぜか教科書ではスルーされ、採用されているのは中国の歴史書の記述ばかりである。

中国の歴史書は、対象となる王朝が倒された後の次の王朝の関係者がまとめたものであり、当然政治的な意図が混じるし、速報性も正確性も圧倒的かといわれればそうではない。

同じ国家体制にあるものが祖先の歴史を時間をかけてまとめた形になる「古事記」や「日本書紀」がより正確性にかけるあやしいものという評価にはならないと思う。

邪馬台国の記述を大真面目に取り上げる一方で、政府が編纂した国史の内容をスルーする意味がわからない。

古事記や日本書紀を読むことで、日本史の教科書に生じた奇妙な空白を埋め、この国の成り立ちに想いを馳せてみてはいかがだろうか。

この本がオススメ

前半部で歴史教育の問題点の指摘。後半部でそれを踏まえた日本古代史のまとめが書かれている本。単純に「日本ってこういう国だったのか」と新鮮な気分になり、もやもやがすっきりする。

古事記を読みやすく現代語訳した本とそれをもとにした著者の講演の内容をまとめた本。

これも非常に面白い。さわりだけ知りたい人は「古事記完全講義」だけでもいいかもしれない。分厚い本だが、語り口が面白くてそれほど負担なく読み通すことが可能。

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