「簡単なことでは決してなかったわ。娘を裏切るような気もしたし。でも、これは私自身のためなんだって思ったの。このまま憎しみを一生抱えて生きて行くのは嫌だって。」20歳の娘、メーガンを交通事故で亡くした母レ二ーはそう語った。

最愛の娘が飲酒運転の犠牲に

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ホリデーのために、娘メーガンが大学から帰って来ていた金曜の夜のことだった。夜の11時半メーガンから、今親友のリサと一緒にいる、明日家に戻ると電話があった。レ二-は「わかったわ、じゃ明日ね。愛してるわ。」そう娘に伝えた。

「愛してるわ、ママ。」メーガンもレ二ーに返した。そしてそれが、彼女の最後の言葉となったのである。

翌朝、兄の妻を玄関先に迎えたレ二ーは、彼女の様子からただ事でない何かが起こったのだと直感した。「事故があって。」義理の姉は落ち付いて話した。「メーガンが…亡くなったの。」その瞬間レ二ーは叫び、足元から崩れ落ちた。

メーガンとリサは即死だった

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自宅へ車で向かう途中、ジープに衝突された。24歳の大学生の飲酒運転だった。車は道路をスピンして木に激突したため、二人とも即死だったという。事故を起こした男性からは、法律で定められていた量の2倍以上のアルコール量が検出された。

翌日は母の日だった。本来なら、4人の子供達と食事のテーブルを囲んでいる時間だった。しかしそれは葬儀の日となってしまった。

免許を取って1年と2ヶ月しか経っていないという24歳のエリックは、過失致死で起訴されたが、無罪を主張したのを法廷で聞いたレ二ーは、怒りで震えあがった。「メーガンとリサを殺しておいて無罪を主張するなんて。」エリックが心ある者には思えなかった。

「娘を殺した犯人には、重い処罰で判決を下してほしい。」そう願った。有罪と判決が出た時には安堵した。裁判の後でレ二ーはエリックからの手紙を受け取った。「どんなに許されないことをしたかわかっている。早く謝罪をしたかったが、裁判中は手紙も許されないと言われていた。」

エリックからの後悔の文面を読んで、少しだけレ二ーは気分が和らいだという。そして数か月間、ずっと考えていた。「エリックを許そう」と。

供述書を読む機会も与えられた

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供述書の中で、エリックの母は「事故以来、自殺をほのめかすようになった。」と述べていた。それを読んでレ二ーはエリックが根っからの悪党ではないことを知った。「2人の人間を死に追いやったことで、どんなに彼の人生に影響しているかということがわかったんです。」

エリックは、思いやりのある両親に育てられた、頭のいい青年だった。「あの日、たまたま馬鹿なことをしてしまっただけ。誰も傷つけようとは思ってなかった。」レ二ーはそう理解しようとした。そして、彼を許そうと決心したのだ。

レ二ーはエリックの顔を見て言った。「エリック、あなたを許します。」エリックは困惑とショックの表情を浮かべた。加害者の彼もまた、罪を犯した瞬間に自分の人生を失ったのだ。

エリックは言った。「本当に、本当に、あの二人が生き還るなら僕は自分の命を代わりに差し出します。」レ二ーは自分が聞きたかった言葉を耳にすることができたが、まだ、彼には罪を償ってほしかった。

懲役22年の判決が下された

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待ち望んでいた判決だったはずなのに、レ二ーの心は悲しみでいっぱいになった。刑務所暮らしを始めたエリックは、すぐにレ二ーに手紙を書き始めた。「一生、罪を償っていきたい。」と書かれてあったという。

事故から4年後、レ二ーは娘を連れてエリックと面会のため刑務所を訪れた。エリックは自分の罪を許してもらえたことを深く感謝し、涙を流した。そして後日、レ二ーとリサの両親はエリックの起訴に成功した。

エリックと抱き合ったレ二ー。「私がしたことに理解できない人もいると思うわ。でも、私は復讐よりも正しい判決が欲しかっただけ。」何をどうしても、亡くなったメーガンとリサが戻ってくるわけではない。しかし、エリックの人生を助けることができる。

「他の人の助けになるように、あなたの経験を生かしてほしい。」レ二ーはエリックにそう伝えた。5年前、飲酒運転の怖さを語るイベントにエリックを参加させることが許可された。手錠をはめて受刑者の服装をしたエリックの体験スピーチは、迫力があった。

「今では娘を殺した相手というより友達よ。」

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それ以降、毎回飲酒運転撲滅のトークイベントにはエリックと参加するようになったレ二ー。「彼や彼の家族ととても親しくなったわ。今は、純粋にエリックがこれからの人生をやり直せたらって思ってるの。幸せになってほしいわ。」

「娘を殺した憎い犯人という気持ちは消えてしまった。今は友達だと思っている。」そう語ったレ二ーの、これまでの苦しい葛藤にも関わらず「許す」と決断した懐の大きさは尊敬に値する。

誰かを憎みながら生きて行くのは相当なエネルギーがいる。憎んで、恨んで、自分の一生を終ることが幸せかというと決してそうではないと誰もが思うだろう。しかし、大切な家族を奪われた者には恨みや憎しみでしか、生きていけない場合もあると筆者は思う。その方が許すことよりも簡単だからだ。

レ二ーのエリックに対する許しは、正直素晴らしいと思う。筆者がレ二ーの立場なら、愛する息子の命を奪った犯人を許すことなどできないだろう。この記事を読んだあなたは、どう感じただろうか。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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