今回はケプラー296系の2個の惑星のうちの、ケプラー296eというハビタブル惑星候補についてやや詳しく見ていきたいと思います。

ケプラー296とは

 ケプラー296(KOI-1422)系は付近を周回する惑星を5個持っている系です。この中でもケプラー296e(惑星e)と296f(惑星f)に海洋を保有する見込みがあるとされています。
物理的性質は、大きさが太陽半径の37%ほどしかなく、その分エネルギーが小さいので当然温度も太陽より低くなります。中心星のケプラー296の有効温度は3517Kで、M型星に属しています。ハビタブルゾーンが中心星に近い場所にあり、惑星もその付近に形成されるのは理解できます。

 さて、海洋を保有している可能性が高い惑星はどちらでしょうか?以下で議論してみましょう。

「ハビタブルゾーンにある惑星は全て、海を持っている」は大きな間違い

筆者の私は研究者としても活動しているのですが、
「*ハビタブルゾーンにある惑星は全て、海を持っている」という考えは間違いなのです。実は研究者同士でもこの間違った考え方をされている方が多く、筆者も個人的に研究を進めていて*が違うと訴える立場にあるのです。

ケプラー296f(KOI-1422.04)

 ケプラー296f(KOI-1422.04)はこの系の中では4番目に発見された惑星です。
 ここで、KOI(Kepler Objects of Interest)とケプラーの惑星の記号の見方を説明します。NASAが観測から発見した直後の惑星はKOIからケプラーに承認作業が行われるわけですが、KOIナンバーの小数点以下が発見された順番を示しています。「04」は4番目に発見されたことを表しています。惑星の配置は「惑星f」なので星から一番遠い方に軌道があります。
 
 この惑星の物理的なデータとしては、低温星を63日で周回する、地球の1.2倍の半径を持つ小型の惑星です。中心星から0.22AUだけ離れた軌道を維持しています。
 筆者の研究の中での計算では残念ながら「海を持たない」と判定されました。すると、系の中でも「温暖な気候」にあるハビタブルゾーン内に惑星が見つかっても、計算上期待は薄いでしょう。残りは将来の観測で確認するしか方法はありません。

ケプラー296e(KOI-1422.05)

 ケプラー296eは5番目に発見された惑星です。この惑星は地球半径とほぼ同じ、ケプラー296から0.14AUだけ離れた軌道を34日で周回する惑星です。

 地球と同等の質量を持つため地球の87%の重力の強さで、大気や水を保持しているかもしれません。密度は地球よりも少し小さく、地球の80%を誇っています。
 
 中心星から受けるフラックスは太陽から地球が受けるフラックスの84%の強さで、平衡温度という惑星全体の温度も地球よりも数度低い244Kで、完全にハビタブルゾーン内に入っており、筆者の計算から海洋質量は地球の51%ほどで、その保有率は地球の約50%の海が期待できそうです。惑星が表面で海を持つには「温かい」も重要なキーワードなのでこれを考慮しないわけにはいきません。

 液体➡固体に変化する物質の現象を相転移と呼びますが、液体の水が「必ず」氷になる(相転移を起こす)地点は中心星から0.48AUだけ離れた場所にあると推定しています。だから、この系は「冷えやすい」と考えられます。海を持つか氷になるかは「紙一重」の状況にあると考えています。
 
 地球の海を基準にしていますので、地球の半分の海が期待できれば当然生物も期待できるかもしれませんね。

おわりに

いかがでしたか?
前回のケプラー186fに続き、計算から調べる限り「海を持つ惑星」が結構存在していそうです。但しこの宇宙に「満たされている」のは最古の物質:水であり、系外地球ではないと考えられます。最終的には観測で確認することですが、現時点でハビタブル惑星を観測するのは不可能なので、計算から推定するだけでもその面白さは十分に伝わるのではないでしょうか。

 次回をお楽しみに!

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天文学者(系外惑星)・理論系外惑星物理者/個人研究事業 町田系外惑星天文学研究所(IEAM)・所長(理学修士)。大学院時代の2年間、国立天文台太陽系外惑星探査プロジェクト室に所属。大学院修了後もフリーで研究活動を継続中。得意分野は天文学、特に太陽系外惑星天文学におけるハビタブル惑星及び海洋惑星の研究(研究テーマ:惑星海洋保有関数論)を「惑星と水」をキーワードにして進めている。
参考サイト(個人研究事業 町田系外惑星天文学研究所):http://ieam4358.f5.si/

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