面識のない生徒が数学の質問に来ました

先日、2年生の生徒が私の所に来ました
いつも担当してくれている数学の先生がいなくて、「仕方なく」私の所に質問に来たんですけど、その生徒は、学校では使ってない「参考書」を私に見せてくれました。付箋が至る所に付けてあって、「む?」と思いましたが、とりあえず彼の話を聞きました

「本気で国公立を狙っています。数学の力を付けるために、添削指導を受けていたんですが、いつもの先生が不在ですので、先生教えていただけないでしょうか?」

もちろん、任せなさい。

ちなみに「いつもの先生」とは、私のガジェットブログで何度も登場しているApple師匠の若い数学の先生(野球部)でして、彼は私との授業研究会の中でいわゆる「部長スタイル」の授業(すなわち、対話型アクティブラーニング)を習得しつつある、驚異の24歳ですので、個人添削するにも同じ考え方でやってくれてますから、いきなりこういう知らない生徒が来ても、それに対して私の解説がスッと入る場合が多いので良い感じなんですよね。

ベクトルの「計算方法」の質問をされた

質問の内容は、ベクトルでした。当然ですが、まだここは2年生では習ってないので「自習で予習」していることになります。参考書ですので、有名なモノを思い浮かべていただければわかりますが、上の方に「例題」があって、下の方に「解説」がある、いわゆる普通の参考書です。ウチの学校は進学校ではないので、教科書が簡単なモノなんですね。教科書にもレベルというモノがあり、扱う問題が違うんです。それを埋めるのが「参考書」と呼ばれるモノで皆さんも持っていたと思いますが、あの「分厚い例題集」です。

それを私に見せて彼はこう言いました

「先生、ここの面積を求める公式の式変形なんですが、ここからこうなるのがわからないんです」

ふむ、なるほど

そこはただの式変形だけだったので、パッと説明しました。いわゆる、「大きさ大きさコサイン」が内積になるというところで引っかかっていたみたいです。まあ、そこは納得しまして、次の質問に行きました

「先生、ここの持っていき方が理解できないんですが」

ふむ、なるほど

ここも簡単な説明でクリアできるので、2つとも、「質問」としては、ハッキリ言って面白くないモノでした。「計算の方法」の質問だったので、面白くもなんともないんです。

そこで、私は2つの質問をしました

とりあえず、段階をふんでプラスアルファの質問してみた

「この問題は、カテゴリわけをするとしたら、何の問題と言える?」

これは、例題だけ解いている生徒には決して答えられない、かなりレベルの高い質問です。たぶん、無理だろうと思って聞いたんですが、答えられなくても、「こういう風に、問題をグループ分けすることで、つながりが分かりやすくなり、深い理解につながる」ということを教えたくて、この質問をぶつけました

彼は、しばらく考えて、私にこう言いました

「先生、これは「3点が1直線上にあることをベクトルを使って示す」というカテゴリの問題だと思います」

うーむ、正解。「同一直線上にある点」という問題なんですね

君は素晴らしいな。何者だ(笑)

まさか答えられると思っていなかったので、ちょっとビックリしましたが、まあ、わかっていればそれで良いので、あまりここに時間をかけずに、次の質問に行きました

優秀な生徒が「え?」となる質問

私「この問題は、短い方のベクトルを、どのくらい伸ばすと長い方と一致するかを求めて、その係数が存在するので、3点が同一直線上にあることを示す。同様の考え方を用いて、ベクトルの平行は、片方のベクトルをk倍することでもう一方と一致すれば、2つのベクトルは平行であることが示せる、これはわかるか?」

彼「はい、わかります」

私「よろしい。では、質問。ベクトルには、「成分表示」というものがある。これは「原点から出発したベクトルがどこで終わるか」を座標で示すモノだ。すなわち、2つのベクトルが全く一致するということは、始点が原点じゃないモノも当然あるので、「動かさないと一致するとは言えず、ただk倍しただけで一致するというのはおかしい」ことになる」

彼「なるほど。確かにそうですね」

私「じゃあ、そもそも、ベクトルって何だ?

















「え?」


















彼の時が止まる

目が泳ぐ

自分で参考書を取り組み、一人で授業よりも何ページも前の部分をやり、「数学はできる」と自負し、私のことはよく知らなかったであろうが、自信満々で「こんなのも知らないですか」的な感じで私に接してきたんだと思う

そんな、「優秀」な彼が、今、私の前に崩れ落ちた

計算はできる。私の説明も理解する。意地悪な質問もちゃんとクリアする

でも、彼には概念がない

そう、参考書「だけ」をやると、概念が欠落する場合が多いのだ。すなわち「公式、定理、パターン」にはめてやる問題はもの凄くできるようになるが、「これってそもそも何なの?」という問題に対応できない。

パッと見て、パッと当てはめる練習を繰り返ししているので、パッと見て対応できない問題はこの手の生徒は捨てる傾向がある。「ちょっとひねる」と途端にできなくなるのだ。しかし、「見て分かる」生徒がこの手には多いので、自信があり、プライドが高い場合が多い。

こういう生徒をきちんとした点数で評価すべく、センター試験も、2次試験も「概念」を問う問題を出題するのだ

数学には「概念」と「公式に当てはめて計算する(要するに、解法)」と2つの授業がある。しかし、概念の説明は正直、面白くないモノが多い。解法の説明は、それを聞くことで、○が付くようになり、即効性があるので、生徒は解法の説明を好む。概念が出題されることは学年が低い場合の模試ではまれであるので(大問の最終問題→(3)に出る場合が多いが、(3)もパターンにハメるモノが結構ある)

よって、教員側も「概念」をすっ飛ばして「とりあえずこれを覚えろ」というスタイルが多いのだ。これでは力は付かない。難しい大学を目指せば目指すほど、数学を知ろうとすればするほど、「概念の形成」は非常に重要なモノであるのだ

私は対話型アクティブラーニングで概念の形成を行っている。授業で解法も当然やるが、対話の中で概念を形成させていくのだ。今、この瞬間も、彼の頭はアクティブである。個別添削指導だが、決して一方的な説明ではなく、アクティブラーニングである。

対話による概念の形成

「スイマセン、全くわかりません」

彼が素直に自分の勉強不足を認めた。珍しいが、こういうタイプもいるんだ。こういう生徒は伸びる。一番伸びないのはこういうときに「教えてくれない先生が悪い」とか、「原因を他に求める」生徒だ。ちゃんと謙虚な姿勢で「教えてください」と言えること。これが、伸びる一番の要素だと思う。理解力なんてあまり関係ない。大事なのは「姿勢」だ

私は、彼に言った

私「ベクトルというのは、「方向を持った量」だ」

彼「え?」

私「方向はわかるな?東とか東北とか、方向だ」

彼「わかります。方向ですね」

私「そうだ。ベクトルというのは、方向を情報として持っている」

私「そして、「量」とは、すなわち、「長さ」だ。ベクトルではこれを「大きさ」と呼ぶ」

彼「大きさはわかります」

私「そうか、じゃあ、話は早い。わかるか?ベクトルが与えられたとき、この2つの情報が与えられることになる。」

私「例えば、「東北方向に3m」とかだ。これで矢印をイメージする」

彼「なるほど。」

彼「え?」

そう、この瞬間に彼の頭は最高潮にアクティブになっている

彼「場所はどうなるんですか?始点とか、終点とか」

来た!

その通り。彼は自分で正解を導いたのだ。

でも、当然だが、彼は自分でそれに気付いていない

私「場所はベクトルは情報として持っていない。方向と量だけだ」

彼「ということは、先生・・・」

私「すなわち、場所はどこでも良いってことなんだ」

彼「だから、ベクトルの平行は、「長さをk倍して一致すればそれだけでオーケー」なんですか?」

私「その通り。ベクトルは自由に動かしていい。方向と長さが同じであれば、全てのベクトルは「同じベクトル」になってしまうのだ。場所は関係ないのだ。だから、同じベクトルが平面上にはたくさんあることになる」

彼「そんなの、始めて知りました・・・」

私「この話は、教科書に「定義」として、書いてある。ただ、この「方向を持った量」を板書した後に、「場所は関係ない」という話と「成分表示が、必ず原点を始点とする理由」まで踏み込む教員は少ないってことだな。大事なんだけどね。そこを考えるのが、本当の数学の授業であるべきだと私は思っている。君の場合は「自習」で進めているのでさらに、概念の形成は難しい状況にあると考えられるな」

彼「方向さえ同じであれば、全てのベクトルは、始点を一致させるように動かすことで、全部k倍すれば同じものになるから、だから全部平行って言えるんですね。スゴい!」

これが「対話型アクティブラーニング」である。個人バージョンであるが、こうやって生徒の頭をアクティブにする。大事なのは、教員の発問であって、生徒の能力ではない。もちろん、能力の高い生徒にはさらに突っ込んだ質問ができるだろうが、中学で数学を苦手としてきた生徒でも、概念を教えることは十分に可能なのだ。

「概念を形成する」という衝撃を受けた彼

最後に、彼と話をした

私「少しは役に立ったか?」

一応、聞いてみた。解法とは関係ない話をだいぶしてしまった

彼「もの凄い勉強になりました。これが数学なんですね」

彼は一息置いて、私に言った

彼「先生、先生の所にまた質問に来ても良いでしょうか。僕、もっと数学を知りたいんです」

うーむ、たまらん。シビれる瞬間である。またこうして、「概念の面白さ」にハマる生徒を作ってしまったかもしれない

罪なモノである「概念」。一旦ハマるとなかなか抜けられなくなるが、「なぜ?」「どうして?」「そもそもこれってなに?」という疑問から全ての研究が始まる。そのきっかけ、「考える頭、あきらめない心」を育てるのは、数学であると私は信じている。

彼が、概念の形成を元に数学の素晴らしいのびを見せ、見事に希望する進路の合格することを祈ってやまない

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株式会社KODAWARI公認レビュワー、SOLCO organic & design 公認レビュワー、MacWrapsアンバサダーです。現在13社の企業よりサンプルを提供いただき商品、サービスのレビューを行っております。Evernoteから正式に取材も受けまして、Evernote公式ブログに私のiPad活用法が掲載されておりますので、ご覧ください。https://blog.evernote.com/jp/2015/06/30/48548
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