ここがかつて地雷に埋め尽くされていた土地だったとは・・・今はだれにも想像できないでしょう。かつて無差別兵器で埋め尽くされていた荒野は、豊かで美し農地に生まれ変わりました。その立役者になったのが、株式会社日建の開発した、地雷除去機です。世界に誇る技術と、社長及び社員の平和への熱い思いが結合して生まれた機械。その地道な、でも壮大なストーリーをご紹介しましょう。

”助けて”のひとことで。

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 この国を平和に・・・

山梨県にある建設機器メーカー「日建」。1994年、社長の雨宮清氏は、商用でカンボジアへ出向きます。そこで出会ったのは、地雷で手脚を失った人々。愕然とする氏。その中の年老いた女性が、こういったのです。「あなた日本人でしょう。この国を助けて下さい。」突然の懇願でした。氏の胸中がどのようなものだったか、想像に難くありません。その言葉を胸に、雨宮氏は帰国便の機内で誓います。”地雷を除去する機械をつくる!”と・・・

「国際貢献」「社会貢献」などという言葉は、使ったことも意識したこともありません。金儲けとも、ボランティアとも考えていなかった。とにかく「そこにある現実」をどうにかしようという一心だったのです。

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悪魔を払う機械。

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世界中にはびこっているのです。

悪魔の兵器と呼ばれる地雷。それを取り除くべく、日建が世界で初めて開発したのが、油圧ショベル型の対人地雷除去機です。実はスタートは、全くの手探り状態でした。
カンボジアから帰国後、雨宮氏はすぐに社内プロジェクトチームを結成。ですが、氏自身、地雷どころか爆弾や火薬に関しては素人。プロジェクトメンバーは、早朝や深夜に集まり、ミーテイングを重ねていきます。
そんなある日、雨宮氏の頭にふとあるもにが浮かびます。それは、幼いころ目にした耕運機や脱穀機。あの独特な動きは、地雷の埋まった土を掘り返すのにも向いているのではないか。これはいけるかも・・・雨宮氏の中に、除去機のアイデアが生まれていく瞬間でした。

除去の先へ。

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悪魔に代わって・・・

開発作業と並行し、翌1995年からは、カンボジアでの調査を開始。雨宮氏は、地雷原付近の住民たちと寝食をともにしながら研究を重ねていきます。やがて、大事な二つのことに気付くのです。ひとつは、地雷を除去する前に、まず草木を伐採して地雷を探査しやすい状態にすること。というのも、植物が豊かに生い茂り、潅木(かんぼく)などの下に地雷が潜んでいることが多いカンボジア。農夫が地面を耕そうにも、鍬(くわ)を入れた瞬間に地雷に触れて爆発してしまうのです。もうひとつは、土地を掘り起こして農地を作ること。除去し終えた後の広大な土地を有効活用し、人々が豊かな暮らしを手にすることは、地雷除去そのものよりも大切なことかもしれないからです。地雷を除去して終わりではない・・・雨宮氏の機械開発への思いは更に強まります。

山を越えて。

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試行錯誤あるのみでした。

やがてベースとなる機械が出来上がります。市販されている日立建機の油圧ショベルのアームの先端に、高速回転する金属の刃(ロータリーカッタ)を取り付けたものがそれ。まず、地雷原に生い茂る草や木を伐採するのです。雨宮氏の脳裏に浮かんだこのロータリーカッター、実はこれからいくつもの難問を乗り越えていくことに。
ひとつは地雷の埋まっている”深さ”。草木が生い茂るカンボジアでは、地雷はジャングル化してしまった木の根の下に埋まった状態。取り除くために、根を抜かなくてはなりません。もうひとつは”温度”。800~1,000度にもなる地雷の爆発温度。一般的なカッターブレードではたちまち破壊されてしまいます。パワー、回転、旋回スピード、耐久性、耐摩耗性・・・様々な要素をひとつまたひとつ改善していきます。ただ強くすればいいのではない。微妙なさじ加減のカッターブレードの開発を!

ダメだしを受けて。

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この地がもうすぐ生まれ変わる。

1998年4月。第一号機のプロトタイプがついに完成。長さ20センチのカッター刃40本が地面を掘り起こし、地雷の信管に触れて爆発させるというシステムで、自慢の一台。
とうとうやってきたお披露目会当日。ですが・・・雨宮氏と開発チームメンバーは、カンボジアのCMAC(カンボジア地雷行動センター)の担当者から、ダメ出しをされるのです。

「御社の地雷除去機のプロトタイプは、高速回転する刃で地雷を爆発させないまま粉砕していき、その過程でいくつかの地雷は爆発するだろうという想定のもとに設計されている。だが、それは現実味が乏しい。火薬が残った地雷の破片が飛び散ってそのまま残ってしまう危険があるから、すべての地雷を100%爆発させて完全に取り除いたほうがいい―」

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 ここまでどれほどの難問を超えてきたことか。ここで辞めるわけにはいかない。CMACのメンバーのこの指摘に、雨宮氏及びプロジェクトチームは、更に開発への情熱を燃やすのです。

ついに、ゴーサインが。

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待ちわびた日が・・・

更なる課題をひとつひとつこなしていく日々。1999年、満を持して臨んだ耐久テスト。3ケ月に及ぶテスト運転。その間、問題が起きる度に再製作や調整しては、テストやり直すということを繰り返します。そのおかげで、ついに全てのテストにパス!カンボジア、更にアフガニスタンへも、納入が決まったのです。

夢の生まれる地へ。

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見違える地に・・・

2000年4月、カンボジア北部の地雷原、バッタンバン州。地雷除去機を興味深げに眺める地元の人々、カンボジア地雷対策センター(CMAC)のスタッフ、そしてオペレーション指導をする雨宮氏。爆音轟く中、かの悪魔がひとつまたひとつと、取り除かれていきます。ささやかな、でも大きな第一歩を踏み出した瞬間です。第一号機、二号機はカンボジア、アフガニスタンで産声をあげることに。かつてはだれも近づけなかった土地。それが、果実が豊かに実り、多くの利益を上げる農園に生まれ変わったり、学校の敷地になったりしていくのです。
 雨宮社長、そして日建の社員の苦労と努力の末に生み出された地雷除去機。開発に関わった全員の、平和への熱意こもった重機。豊かな未来をもたらすべく、今も地雷原の真っ只中で日々爆発音を響かせています。

次世代に向けて。

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希望を、夢をつなぐ。

「機械を現地の人が使いこなし、メンテナンスできなくては意味がない。そのために、現地で機械を操作するオペレーターや技術者を日本に招き、教育を行っています。人を育て信頼関係を築くこと。これは、将来の日本の国益につながるものだとも思っています。」

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地雷除去機が世界中で活躍しているのを見届けている雨宮社長。世界平和への思いはとどまることを知りません。実は当初はボランテイアのつもりで取り組んでいた、地雷除去機の開発。1号機が完成した頃、事業として本格的に取り組むことに。

「いつまでも、本業の利益を注ぎ込んでいては継続的な貢献はできません。ボランティアといいながら金儲けをしていたのでも意味がない。」

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平和への貢献と、ビジネスと両立させることが本来あるべき事業の姿だと、雨宮氏は確信していたのです。まだまだ業績好調とはいえないそうですが、除去機の開発に成功したことを財産に、今後利益を上げていって欲しいと、氏は社員たちに話しています。

「こうして人のためになることをしていれば、人は集まるし、利益も生まれます。」

「相手の立場を考えることが大きなビジネスにつながる。自分だけ儲け、相手が損をするビジネスは長続きしません。」

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儲けるのが会社の使命であるのは当然ですが。それだけでは成長していけない。自分も相手もともに利益がでるようにすることが大事であるというのが、雨宮氏経営理念のひとつなのです。
 現在、氏は地雷原で暮らす人々の現状を伝えるべく、全国各地で講演を行っています。雨宮氏に助けてほしいと懇願したかの老婦人は、氏によればもうこの世にいないかもしれないとのこと。夫人の身体の具合は、あまりよくなかったそうです。そうであっても、彼女は今頃きっと空の上から氏と日建の開発した機械が大活躍しているのを見て、目を細めていることでしょう。これからも雨宮氏と日建の社員は、山梨から世界に平和を送り届け人々に笑顔をもたらすべく、機械の開発へと取り組んでいくのです。

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香港、台湾、中国そしてタイが大好きで、アジアをこよなく愛する心の旅人。英語は仕事で、中国語は趣味。スピリチュアルや占いにもちょっとうるさいライター。自身のレーダーがとらえた情報を、考察をまじえつつ発信していきます。

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