●5月31日日曜日 晴れ

 当日は雨という予報にも関わらず、関西は朝から強い日差しが照りつけていた。
 主催メンバーや、デモに協力してくれる人々が集合場所の京都 円山公園のしだれ桜前に12:30前に集まり、デモ開始にむけて風船をふくらませたり、横断幕に書いた文字を太くしたりと準備をしていた。アドバイザーの3人も拡声器を運んだり、風船を膨らましたり一緒に準備をしてくれていた。
 そして、アドバイザーの男性2人はスカートを履いてきていた。「怒りたい女子会」デモに積極的に参加する意志を表したのだろう。

 風船にはダスキンから借りてきたボンベでヘリウムガスを入れた。70センチ程のボンベはタクシーで運んだという。たくさんの風船が風に揺れている様子がめずらしいのか、子どもが近寄ってきたり、外国人観光客らしき親子が風船の前で写真撮影したりしていた。横断幕は「モヤモヤを怒りに」「モヤモヤを声に出そう」文字をペンで太くし、しだれ桜を囲む柵にガムテープでつける。通りすがりの人がチラチラ見ていった。

●一緒に怒るのはどんな人?

 デモ開始30分前ぐらいから、朝日新聞の記者や、当日デモ参加の人、撮影などを担当してくれる人々がどんどん集まってきた。ワークショップであった人も、そうでない人も、女性も男性も、幅広い年代の人がいた。身体に障害のある人や、外国籍の人の人もいた。
 私は「怒りたい女子会」デモに集まった人に、どんな経緯で参加することになったか、どんな考えで参加するのかインタビューをしてみた。

当日用のビラにはシュプレーヒコールが記載。デモ行進中、これを見ながら一緒に言う。

【YWCA関係の方々】
 YWCA:キリスト教を基盤に女性の人権問題や平和活動に取り組む国際NGO
http://www.ywca.or.jp/home.html

・神戸YWCAに所属している女性。
子どもの手が離れてから大学院に入り、現在大学で非常勤講師をしたり、毎日新聞兵庫版に寄稿したりしているという。デモを知ったきっかけは、戦争反対の社会運動をしている「怒りたい女子会」の主催メンバーと知り合いだったこと。
憲法第24条の「両性の本質的平等」が「改正」され、憲法が守るのが個人でなく家族になってしまう。その結果、介護や家事がまた女性の役割になるのではないかと不安視している。「怒りたい女子会」デモに参加したのは他の女性、特に若い女性が何に怒っているかが気になったからとのこと。

・京都YWCAに所属している女性
「怒りたい女子会」の趣旨に賛同して参加。「結婚結婚うるさいわ」「子育て介護はただちゃうで」というシュプレーヒコールに共感。YWCAに参加する女性は主婦も多く、「ご飯の用意せなあかんから帰らな」など、家事で思うように活動できないことがたびたび会話に上がるという。

・京都YWCAのサポーターの女性
 女性差別に反対し続けるのがライフワーク。今回の「怒りたい女子会」のデモは力が入ってないのが良いと思って参加した。暴力的でない男性とも、一緒に頑張りたい。

【ワークショップでデモを知った方】
 40代の女性で最近家事代行業を起業した。「怒りたい女子会」はSNSで知り、参加。
 ワークショップでは、自分がモヤモヤした体験を話すと、他の参加者が共感して似たような体験を話してくれたおかげで、自分の身に起こったことが何だったのかわかった。
 日常的な女性同士の話だと、グルメや家庭・会社の愚痴でなかなか深い話はできない。
 特に共感したシュプレーヒコールは「結婚以外の生きてくすべを」。「結婚するしかないかな」と結婚を「生活する手段」として、何の疑問も持たず言う友人がいてショックを受けた、とのこと。

【一緒に怒る男性たち】
・当日カメラ撮影をしてくれた男性
 京都96条の会http://kyoto.96jo.net/ という護憲の団体の取材で、怒りたい女子会の主催メンバーと知り合った。
 女性が主催のデモは珍しいので興味を持った。共感したシュプレーヒコールは「政治は男のものじゃない」。国会議員はクオーター制にすればいいと思うので。でも、自分はフェミニストではないし、フェミニズムにも興味はない。

・学生
 主催メンバーが知り合いだった。ネーミングセンスが面白いと思った。
 社会活動をカジュアルにするのは面白い。
 「結婚、結婚うるさいわ」というシュプレーヒコールに共感。女性ほどではないが、男性にだって結婚圧力はあるから。

・学生
 スカートを履いてのデモ。冬物の厚手のスカートだったがそれでもスースーしたという。
 主催者メンバーが知り合いだった。
 勉強していくにつれ、政治や学問が男性中心であることなど、男女平等が見せかけだということに気がついた。
 シュプレーヒコールの中では「料理作るなら皿洗え」に共感。同居人の女性に自分が嫌いな食器洗いを押しつけがちだったという。

・学生
 著者がSNSで参加を呼び掛けた。また、主催メンバーの後輩でもある。
 政治的なことが話しにくい。女性もだけど若者もそういう傾向にあると思う。わかってない、女子供、というふうに黙らされてしまうように感じる。みんなが政治について口を閉ざしたら、元気に問題なく働ける人以外は排除されてしまう。
 今までは積極的にデモに参加する気にならなかった。どうやったら政治的になれるのか分からない。関西でデモが活発なのは京都や大阪の北部。自分が住んでいる大阪南部ではない。

・学生
 憲法集会で主催者のデモのPRを見て知った。
 制度や権利の中では男女平等になっているが実生活の中ではちがうと思う。女性が役割を固定されてしまうと、男性だって固定されてしまう。女性が自分らしく生きれば、男性だって生きやすいはず。
 「男も女も弱音を吐こう」というシュプレーヒコールに共感。男だって弱音を吐けばいいし、泣きたい時に泣けばいい。

あなたはどのシュプレーヒコールに共感しましたか?
コメントもらえるとうれしいです。

 40名ほど集まった参加者は主催メンバーの知り合いの人が多く、他の社会問題にも関心が高い人たちだった。平和に関する横断幕やプラカードを持ってきた人もいたが、個人で主張するようだ。それぞれ問題意識は持ちつつも、社会に対する女性の怒りには共感するといった人たちが集まった。女性のモヤモヤが埋もれてしまうという私の心配は杞憂だった。

 しかし、公園に集まった中には、参加したいけど参加できない人たちもいた。
【赤ちゃんの乗ったバギーを押した若い母親と、その母親】
 SNSで「怒りたい女子会」を知り趣旨に賛同して公園に来たというが、どうしてもカメラが気になる様子で周りをそわそわと見ていた。「これ、写ってますか」と深刻そうな顔で質問された(集合中は撮影していないのでその旨を伝えた)。デモ行進の時にはいなかった。

怒りたい女子会デモ動画

出典 YouTube

●怒る私たちと京都の街

 14:00からシュプレーヒコールを言う練習や主催メンバーの言葉が始まり、14:30から共に明るくアップテンポな洋楽に合わせてデモ行進が始まった。主催メンバーが予め届け出ていた東山警察署の警官が列の最初と最後についた。

 私はビラを配りながら沿道の反応を見ることにした。円山公園から四条通に出た辺りは観光客が多く、歩道はたくさんの人がゆっくりと歩いていた。デモを見て笑う人、デモの写真を撮る人(外国人観光客など)や、デモをはやし立てる修学旅行生風の男の子もいた。ふざけてシュプレーヒコールを復唱する男の子グループは3組ほどいて「興味あるなら見て」とビラを渡すと2組は照れくさそうに受け取った。

 河原町あたりまでくると修学旅行生や外国人観光客風の人より、若者や中高年の男女が目立った。中高年の男女はビラを受け取ってくれることが多く、走り寄って「何のビラ?」ともらいに来る男性もいた。女性もおおむね笑顔で受け取ってくれた。

 男女のカップルや1人で歩いている若い女性は顔をそむけることが多かった。女性2人連れだと受け取ってくれることもあり、断るにしても顔をそむけるようなことまでしなかった。

私以外の参加者は以下のような様子を見たという。

・若い女性による「今男女平等やん」「うるさいだけや」という否定的な意見。

・中高年の男女から「がんばってね」と応援される。

男女のカップルからは様々な反応があった。

・気まずそうな雰囲気、ときどきコールが内面に刺さるのか真顔に。
 自分達の関係に波風立てたくないのだろう。

・カップルの男性の方がデモをからかい、女性に叱られる。

・女性に渡そうとしたら男性が取り上げて目の前で破った。

●デモが終わって何が始まる?

 「怒りたい女子会」デモは1時間後、京都市役所の前で終わり、参加者や主催者が別のデモや勉強会などの告知をして解散となった。その後は参加できる人だけで集まり、鴨川の河原で打ち上げをしながら感想を言い合った。その中で様々な沿道の人の様子が浮かび上がった。また、デモの参加者も沿道の様子をよく見ており、反応が気になるということが分かった。

 リズムに合わせて、日頃思っているけどなかなか口にできない悔しい思いを言葉にできて良かった。同じ問題意識を持つ人や共感してくれる人が、近くに大勢いると思うと心強かった。そういったことは、デモに賛同する人を集めたり、ビラや音楽を流す機材を用意したりなど、事前の地味な仕事によって成り立っているのだろう。

 主張と直接関係ないけれど、デモを見た人が笑ったり子どもが集合場所に近づいたり、という時点である意味このデモは成功なのではないかと思った。本気で怒っているけど、外部から笑われることを許容する寛容さや、子どもが近づいてくるような色彩の豊かさやスキは暴力や排他主義とは正反対のものだから。

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関西在住のおもしろがり。
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