「皆さんを別世界へお連れしましょう。一日一ドル以下で暮らす貧しい人々との、45年間に及ぶ愛の物語をお話しします。」

デリーから南西に約800km、ラジャスタン州のティロニア村に、「裸足の大学」はある。貧困層の人々を対象に、地域の伝統的な技術・知識の伝授をし、貧困からの脱却、さらには彼らの社会的地位向上を促す教育機関である。

博士号や修士号を持った者の入学は認めておらず、契約書や修了証も存在しない。人々は挑戦するために、この学び舎に足を運ぶ。創設者であるバンカー・ロイ氏は、TED Conferenceにおいて、その驚異的な教育イノベーションについて語った。

設立から40年を超えた今、私たちは「裸足の大学」から何を学ぶべきか。改めて考えてみたい。

教育者が学習者となり、学習者が教育者となる

「裸足の大学」は、一種の教育機関として貧困地域から研修生を受け入れ、半年間で太陽光発電の技術を習得させる。研修生の多くは中高年の女性で、英語力や識字能力のない者も少なくない。まさに手取り足取りの指導である。

研修生たちは、与えられた問題に対して、その解決を目指し、ワークションプ形式を多く取り入れた、インタラクティブな授業を展開する。「誰もが学習者であり、同時に教育者でもある」というロイ氏の狙いに沿ったものだ。

そして、半年間の訓練を経験した彼女たちは見事技術を身につけ、自らの地域に戻る。その後、その社会における「教育者」としての立場から、裸足の大学で習得した技術を、地域の伝統に馴染ませながら教授する。困難地域の当事者たちが、自らの手で発展を支えられるよう、十分なエンパワメントの仕組みが整えられる。磨き上げられたアイデアは、国境を超えて世界に広がってゆく。

解決策は内に求める

教育支援や国際開発のフィールドにおいて、ある特定の地域や組織の問題に対して、外部の人間が独自の方法論を持ち込んで失敗する事例は少なくない。そうした課題意識に基づいて、ロイ氏はプレゼンテーションの中で、次のようなメッセージを提示している。

“Look for solutions within.”
(内にある解決策を探しなさい。)

プロジェクト、組織運営、タスクマネジメント、友人関係、恋愛。我々の周りには、課題が山積みだ。はじめから解決策を外に求めるのではなく、身近な部分からアプローチすべきであると、彼は主張する。

世界に無いアイデアを

プレゼンテーションの最後に、ロイ氏はマハトマ・ガンディーの言葉を引用した。

“First they ignore you, then they laugh at you, then they fight you, and then you win.”(はじめに彼らはあなたを無視し、次に笑い、そして戦いを挑んでくる。そしてあなたは勝利を手にするのだ。)

世界に存在しなかった発想は、時には批判され、逆境にさらされるかもしれない。無視され、笑われ、辛い思いをするかもしれない。一度話題にのぼりもてはやされても、失敗すると、掌を返したように途端に世間の個人攻撃が始まることもある。しかし、そのアイデアは、同時に世界を大きく変える可能性を持っていることも確かである。

インドの小さな村で産声をあげ、今もなおとどまることなく進化を続ける「裸足の大学」に、私たちはイノベーションの本質を見いだすことができる。

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Relentless optimist / サードウェーブに乗り切れずアジアを無計画に彷徨った社会学徒。

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