2013年に日本で上演された『レ・ミゼラブル』で、韓国人俳優として初めてジャン・バルジャン役を演じたキム・ジュンヒョン(36)。
 劇団四季を退団し、韓国に活動の拠点を移してからは「日本での活動は考えられなかった」というが、どんな心境の変化があって再び日本の舞台に立ったのだろう?
 韓国に戻って多忙な日々を送っている彼に、その理由と、今後の日本での活動について聞いてみた。

■韓国での活動

 日本での『レ・ミゼラブル』を終えて韓国に戻ってからも、休む暇はない。『Jack the Ripper』に『ゴースト』、上演中の『マリー・アントワネット』まで次から次へと作品に出演し、難しい役をこなしている。作品選びも慎重だ。

「作品はまず内容を見て、次に歌で決めますね。役も曲も“やりたいもの”と“やれないもの”があると思うんです。それを冷静に判断しています」

出典写真提供:EA&C

 中には意外なきっかけで出演を決めた作品もある。『モーツァルト・オペラ・ロック』だ。
「サリエリ役がとてもよかった」というと、「でも、僕の出番は2幕からじゃないですか(笑)」と、すぐさま突っ込まれた。

「この作品で演じたサリエリ役は、ファンからも『似合っている』といわれ、僕も楽しく演じていました。でもオーディションを受ける予定はなかったんです。1幕に出番がないし、曲も自分に合わないと思っていたので。ところがモーツァルト役を演じたキム・ホヨンが『自分がモーツァルトになるから、一緒にやろうよ』と声をかけてくれたんです。彼自身、まだ出演が決まっていなかったのに(笑)。それでオーディションを受けることにしましたが、曲が難しく、歌詞を変えて歌ってみたり、自分なりに努力しました」

■キム・ジュンヒョンが語る『マリー・アントワネット』の魅力

 現在は、日本でも上演された『マリー・アントワネット』に出演している。日本版とはストーリーも演出も違っているが、韓国版も魅力タップリと自信をのぞかせた。

「この作品は史実にフィクションを織り交ぜています。単にマリー・アントワネットを良い人物に描いた作品でもありません。政治的な要素も入っているし、何よりも女性としての彼女の心の変化が見えます。曲も素晴らしく、ストーリーにとても合っていると思います」

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 見どころはたくさんあるが、“裁判シーン”は現代にも通じる部分があるという。

「今の政治を皮肉っていたり、世論の動きでモノの見方が変わっていく、現代の状況を反映しています。今の時代と重ね合わせると、共感できる部分があるのではないでしょうか」

■なぜ、悪役に?

 キム・ジュンヒョン演じるオルレアン公は、日本では高嶋政宏(49)が演じた役だ。この悪役に魅力を感じて出演を決めたとか。

「悪役にも、そうなった正当な理由があるので面白いと思いました。単に悪い人間を表現するのではなく、正当性があるから魅力的だと。その正当性が出ないと観客に共感してもらえないし、感動もしてもらえないと思うんです。そういう部分を意識して見てもらえると、より悪人に見えるかもしれません」

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 悪役に対するファンの反応は意外なものだった。

「日本のファンから『なんで、そんなに悪役が似合うんですか?』『本当に悪い人なんじゃないですか?』って(笑)。ただ、今回は味方の振りをしながらもマリー・アントワネットとマルグリットを動かす役です。二人の女性がもっとかわいそうに見えるよう、悪に徹して、最後に拍手をもらえたら僕はそれで満足。先月よりは今月、今月よりは来月のほうが、さらに悪い男に見えるかもしれませんね(笑)」

■2月には東京でソロコンサートを開催

 2月8日で『マリー・アントワネット』のソウル公演が千秋楽を迎えると、2月11日(水・祝)には日本でソロコンサート「The Greatest Vocalist」(東京・よみうり大手町ホール)が控えている。

「内容はまだ決まっていませんが、日本と韓国で歌ってきたナンバーを準備しています。日本だったら四季の作品や『レミゼ』、韓国では『ジキル&ハイド』や現在出演している『マリー・アントワネット』のナンバーなどを歌い、トークも織り交ぜたコンサートになるんじゃないでしょうか」

 これまで多くの大作に出演しているので、それは楽しみ。ただし、どの作品も本人にとって良い思い出ばかりではないらしい。

「体力的には『ジキル&ハイド』がキツかったですね。二つの役を演じているのと一緒で、特にハイドを表現するときは喉を壊すぐらい声を出しました。本番が終わったら声が出なくなるほどで、注射を打ったり薬を飲みながら、8ヵ月間、演じきりました」

 それでも思い入れのある作品。もちろん『ジキル&ハイド』からも、アノ名曲を歌う予定だ。

■俳優として転機となった作品は……

 大変だった役はほかにもあるという。なんと、多くのファンを感動させた『ジーザス・クライスト=スーパースター』のジーザスだった。2月のコンサートでも歌う予定になっている。

「ジーザスは二度とやりたくないです。韓国で上演されてもやりません(笑)。背中に傷を入れるのですが、それで皮膚が炎症を起こしました。僕は一年ぐらいジーザス役をやっていたので、背中の痛みで夜も眠れないほどでした。観客は感動するかもしれませんが、ムチ打ちされたり、十字架にかけられたりして、演じる側には精神的にも良くない作品でした(笑)」

 一方、愛着のある役も即答だった。四季の『エビータ』で演じたチェ・ゲバラ。ジーザスの話をしているときとは表情も一転。この役がいかに好きかが伝わってきた。

「1ヵ月で歌詞を覚えて役作りをしないといけなかったのですが、芝居が専門だった僕には歌の勉強になりました。『エビータ』の中で、1曲ずつチェ・ゲバラという役を表現しながら歌って、観客にも理解してもらう。そういう部分が大変だったけど勉強になりました。『エビータ』があったから、いろいろな役を演じられるようになったと思います」

 ミュージカル俳優キム・ジュンヒョンの原点となった作品といえるかもしれない。

■韓国を訪れる日本人ファンの存在がきっかけで……

 俳優としての基礎を叩きこまれた四季を退団し、韓国で活動を始めた頃、彼には一つ決意していることがあった。

「実はもう二度と日本には戻らないと決めていました。韓国での活動に集中したかったから。もし日本に戻れば、日韓どちらの活動も中途半端になるのではないかと心配していたんです」

 それなのに、日本で『レ・ミゼラブル』に出演し、2月にソロコンサートを開催するのは、彼なりの理由があった。

「自分は日本に戻らないつもりだったのに、どんな作品に出演しても韓国まで来て、出待ちしてくれるファンがいてくれた。どれほど嬉しかったことか。それがなかったら、日本での『レミゼ』出演もなかったと思います」

 2014年11月1日にソウルで『マリー・アントワネット』が幕を開けてから今日にいたるまで、日本から続々とファンが訪れているという。
 こうしたファンについて彼は「本当にありがたい」「嬉しい」という言葉を何度も噛みしめるように繰り返した。その様子に、こちらまで目頭が熱くなる。

 そんなファンにぜひ感謝の気持ちを伝えたい。 日本でのソロコンサートはそうした思いから実現したという。

「韓国までミュージカルを観に来てくださるだけでもありがたいのに、寒い中、出待ちをしてくださるファンを見ると、もっと熱心にやらなきゃいけない。上手く演じなきゃいけない、と思います。日本のファンのためにも、機会があればまた日本の舞台に立ちたいです。ぜひこれからも応援してください」

 彼が再び日本で活動できるよう後押ししてくれたのはほかでもない、日本のファンの深い愛情だったのだ。

(児玉愛子)

韓国ミュージカル『マリー・アントワネット』

2015年2月8日(日)まで韓国・シャルロッテシアター(ソウル)にて上演中!

出典写真提供:EA&C

<キム・ジュンヒョン 単独コンサート概要>

日時:2015年2月11日(水・祝) 2公演(15:00開演/18:30開演)
会場:よみうり大手町ホール(東京都)
出演:キム・ジュンヒョン(ゲスト:秋夢乃)
料金:全席指定8,500円(税込)
問い合わせ:チケットぴあ 0570-02-9111

<キム・ジュンヒョン その他の出演情報概要>

日時:2015年2月22日(日)14:00開演
会場:トッパンホール(東京都)
出演:チョン・ドンソク、キム・ジュンヒョン(ゲスト)
料金:全席指定9,000円(税込)
問い合わせ:チケットぴあ 0570-02-9111

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