2013年4月より日本で上演されたミュージカル『レ・ミゼラブル』。主演のジャン・バルジャン役には長身のイケメン俳優キム・ジュンヒョン(36)が大抜擢された。
 1987年の日本での初演以来、この大役に韓国人俳優がキャスティングされたのは初めてのこと。出演者が発表されると、ひときわ注目を集めた。

 キム・ジュンヒョンは05年に劇団四季に入団。“金田俊秀”の名で活動し、『ジーザス・クライスト=スーパースター』に主演するなど、実力と人気を兼ね備えた俳優として知られている。もちろん日本語も完璧にマスターし、彼が韓国人と知って驚くファンもいたほど。

 10年に四季を退団してからは韓国に帰国。『ジキル&ハイド』『アイーダ』等の舞台に立ち、力強い歌声と情熱的な演技で観客を圧倒した。
 当時、「もう二度と日本には戻らないだろうと思っていた」というキム・ジュンヒョン。そんな彼を再び日本の舞台に立たせた理由は何だったのか? そして今、どんな活動をしているのだろうか? 
 韓国に戻って多忙な日々を送っている彼に、『レミゼ』出演時の心境と、今後の日本での活動について聞いてみた。

出典写真提供:EA&C

■2013年版『レミゼ』のオーディションで予想外の展開に……

 キム・ジュンヒョンは現在、韓国でミュージカル『マリー・アントワネット』(2月8日までソウル・シャルロッテシアター)に出演している。待ち合わせの場所に現れた彼は「お久しぶりです」と、人懐こい笑顔を見せてくれた。
 通訳は必要ない。この日の会話はすべて日本語で行われた。時には軽い冗談を口にするなど、場を和ませる配慮も忘れない。穏やかな雰囲気になったところで、まずは『レ・ミゼラブル』の話から聞いてみた。

「ご存知と思いますが、僕はバルジャンを追うジャベール役でオーディションを受けました。ところが演出家からバルジャンの楽譜を渡されたんです。ビックリして、僕にバルジャン役は合いませんと言いました」

 俳優なら誰もがやりたいと思う役。演出家から「大丈夫。あなたにはできる」と説得されても、すぐには受け入れられなかったとか。

「年齢も若く、人生経験もない。歌は歌えても、バルジャンの心を表現できるかどうか。俳優として大事なことなので、とても悩みました。寝ずに役を研究するなどして、1週間後にようやく決意したんです」

 こうして2013年4月、演出を一新した新演出版『レ・ミゼラブル』が帝国劇場で幕を開けた。

■好評だったバルジャンの魅力とは?

 キム・ジュンヒョン演じるジャン・バルジャンは初日から高い評価を得た。バルジャンが抱える苦悩と葛藤、コゼットへの愛……、そのすべてを見事に歌で表現し、観客に伝えた。

「こだわったのは、バルジャンの若い頃から死を迎える直前までの“違い”をどう見せるか。また、死ぬ直前でコゼットに対する愛情をどのように表現するか。それによって、観客に感動してもらえるかどうかが決まると思いました」

 一方、男性の観客からは「ジャン・バルジャンがカッコ良すぎる」という、やっかみ半分の声も聞かれた。

「韓国から来た俳優仲間に“セクシーなバルジャンだ”と言われました(笑)。自分ではどこがセクシーなのか分かりませんでしたが」

 たしかに「親子のバルジャンとコゼットの間に、何かあるんじゃないか」と共演者が冗談でいうほど、キム・ジュンヒョンのバルジャンは颯爽としていた。このセクシーなバルジャンは、彼を初めて知る観客も魅了した。

「病院に運ばれたファンテーヌを抱く手も、コゼットに対する仕草も、『どうしてそんなにセクシーなの?』と、観客からも聞かれました。その理由が分かっていたら、もっと意識してやっていたと思うんですよ。あ、これは冗談ですから書かないでください(笑)」

 結果として、個性的なバルジャンを演じられてよかったのではないかと、彼は笑顔で振り返る。表情が変わったのは、話が足のケガと休演に及んだときだった。

■まさかのケガと休演

 当時、キム・ジュンヒョンが出演していたのは日本での『レミゼ』だけではなかった。韓国で出演していた『アイーダ』の追加公演が決まり、同時期に日韓の作品に出演することになってしまったのだ。

 韓国の人気俳優の場合、こうしたケースは少なくない。関係者によると、情に厚い韓国人は熱心にオファーされると最後は断り切れなくなるという。そのため、無理をしてでも仕事を引き受けてしまうのだ。
 キム・ジュンヒョンも『レミゼ』でジャン・バルジャンを演じた翌日から、韓国に戻って『アイーダ』に出演。そのまま千秋楽を迎えていた。

 東宝から突然「キム・ジュンヒョンの足の怪我により、2日間の休演」が発表されたのは数日後のこと。舞台裏でいったい何が起こっていたのか?

「韓国での『アイーダ』の千秋楽で右足のふくらはぎの筋肉が断裂し、歩けなくなりました。2日間も休演にしてしまい、その後はギブスをして舞台に立ったのですが、1ヵ月後には左ひざの靭帯まで切れたんです。それからは両足をケガした状態で舞台に立っていました」

 薬を飲んでギブスをし、本番前はテーピングをして舞台に立つことになった。

「東京公演の間はずっと痛みがひどく、地方公演も病院で治療していました。今も走ると少し痛いです。大変でしたが、見にきてくださる観客のために、なんとしてでも舞台に立ちたいと思いました」

 千秋楽まで痛みをこらえながら、劇中でマリウス役の俳優を抱き上げていたのだ。

■キム・ジュンヒョンにとって『レミゼ』とは?

 ミュージカルの金字塔ともいわれる作品に主演しても、浮かれている余裕はなかった。スポットライトを浴びる舞台上と違い、私生活は実に地味なもの。

「バルジャンを演じていたときはほとんどお酒も飲まず、劇場とホテルを往復するだけでした。たくさん人と話すと喉に影響するので、外食も少なかったです」

 苦労も多かった『レ・ミゼラブル』は、俳優キム・ジュンヒョンにとって、どんな作品だったのだろうか。

「俳優としての演技の幅を広げてくれました。舞台上で年を重ねていくバルジャンを演じるにあたり、見た目や声の変化よりも、“心の変化”を大事にして表現しました。若いときから年を取ったときまでの、心臓のリズムの違いだけを考えて演じました。そうやって自分の方法で演じきったことがよかったと思います。もっと上手く歌えたのではないかとか、あのシーンではこうすればよかったとか考えることもありますが、心残りよりプラスになることのほうが多かったですね」

 日本の多くの観客に感動を与え、キム・ジュンヒョンは韓国へと戻った。

(児玉愛子)

韓国ミュージカル『マリー・アントワネット』

2015年2月8日(日)まで韓国・シャルロッテシアター(ソウル)にて上演中!

出典写真提供:EA&C

<キム・ジュンヒョン 単独コンサート概要>

日時:2015年2月11日(水・祝) 2公演(15:00開演/18:30開演)
会場:よみうり大手町ホール(東京都)
出演:キム・ジュンヒョン(ゲスト:秋夢乃)
料金:全席指定8,500円(税込)
問い合わせ:チケットぴあ 0570-02-9111

<キム・ジュンヒョン その他の出演情報>

日時:2015年2月22日(日)14:00開演
会場:トッパンホール(東京都)
出演:チョン・ドンソク、キム・ジュンヒョン(ゲスト)
料金:全席指定9,000円(税込)
問い合わせ:チケットぴあ 0570-02-9111

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